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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 18】

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ーバミラのアジト 解析の間ー



「だぁぁぁぁぁぁ!!この!!暴れねぇで下さいよ!」

ジタバタ…!
【グリルは解析台の上で暴れている!】


「やめろお前!!おいらに何する気だ!いたいことしたら許さないぞ!」


「データを取るだけだっつーんですよ!大人しくしてりゃあすぐ終わんだから、ほら!」


「うわぁぁぁぁん!!助けてマサアキぃぃぃ!!」


「あぁもう!!うるっせぇ!!」


「はん…!苦戦してるみてーだなルーボ」


「……あ…!バミラさんお帰りなさい!」


「おう、つーか…なんだこの魔法が暴発したみてーな荒れた状況は」


「全部このガキが悪ぃんですよ。あっちこっちで物は壊すわ、火ぃは吹くわ、俺らのお菓子を勝手に食うわ。もう大変なんです」


「ガキ一人調教すんのに何手間取ってんだよルーボこら」


「おいらをここから出せバカやろー!」


「はん…!元気が良くて結構な事じゃねぇか、ガキ」


「そうだ喜べ、ガキが聞いてテンション上がりそうな言葉ランキング第1位の【お土産】を俺様が持ってきてやったぜ!直々にな!」


「お土産?……あ…あぁ〜…っ!」


「へっ!これなーんだ?」


ダラン…
【マサアキは力なくうなだれている!】


「マサアキ!?マサアキーっ!!」


「ほらよ」

ドサァ…!
【バミラはマサアキをグリルの側へ投げ捨てた!】


「束の間のご対面だ。この後牢屋にブチ込んじまうから、お別れなら今言っておけ」

「ま、そいつが聞ける状態かは保証できねーがな」


「うっわ、バミラさん優しい〜!」


「はん…!よせよ、照れんぜルーボ」


「マサアキ…マサアキぃ〜……」

「……頼むから目を開けてくれよ~…うぅ…」


………………ッ




「バミラさん、こいつを本部に送るんですか?」


「おう、戦ったついでみてぇなもんだけどな」

「俺様に一発当てたんだぜ?人間にしちゃ、なかなかだと思わねぇか?」

「ま、雑魚は雑魚だが」


「ほー…そりゃすげぇ」

「で…何に使われるんです?捕らえられたやつってのは?」


「はん…?」


「いや、はん?じゃなくて、送れって言われてる以上は何か使い道があるんでしょう?」


「んなの俺様が知るかよ。奴隷か人体実験の被験体かなんかだろ」


「バミラさん……本部からの連絡ちゃんと受けてるんですか?定期的に来てる筈ですけど」


「……あぁ、そういや最近ほったらかしだわ」


「ちょっ…それまじぃですって、着信無視は一番キレますよ。ビビッドさん」


「ヤッベ…ちょっと確認するわ」

スッ
【バミラは魔水晶を取り出した!】

魔水晶

「ほっ!」

ブゥゥゥン…!!
【バミラは魔水晶に魔力を込めた!】


「さ〜て、どれどれ?」


〈不在着信 26件〉


ガシャア…!!
【バミラは魔水晶を地面に叩きつけた!】


「あぁぁ!!?何やってんですかあんた!?」


「は…はん……まぁあれだよな…壊れてたんじゃ仕方ねーよなルーボ」


「一体どんだけ来てたんですか!?」



「…うぅ…おいらのせいで…マサアキがぁ……」


「ふぅ……おいガキ、もういいか?」

「どうせいくら嘆いたところでそいつの耳にお前の言葉は届いてねーよ。続けるだけ無駄だ」

「いくらガキだからって、そんくらい分かんだろ」


「そーそー、その青年使うんですって、こっちだって仕事詰まってるんだから空気読んでその辺で諦めちゃってください」


「いやだ…!」

「マサアキはいつもおいらを助けてくれるんだ!強いんだ!でも…今は疲れてるからちょっと休んでるだけなんだ」

「だったらその間…おいらがマサアキをまもる!!お前らみたいな何するか分からないバカにわたすもんか!」


「ヒュ~……♪」
「ヒュ~……♪」


「守る!!ですってこんな小さい子が、健気ですね〜。意味分かって言ってんのかな?」


「さぁな、まぁどっちにしろ」

ザッ
【バミラはグリルに接近していく!】


「残念ながらその言葉すら、そいつにゃあ届いてねぇ訳だが」


「く…来るなお前!」


「あぁ?おいおい、まさかあんだけ威勢の良いことぬかしといてビビってんのかぁ?」

「守るんだろ?やってみせろよ」


「ははっ!僕ちゃんのカッコいいとこ見てみたいなー」


ガバッ…
【グリルはマサアキに覆い被さった!】


「来るな…来るな…!」

「来るなーーーっ!!」

【グリルは体から眩い光を放った!】


「あん…?」

「おっ?」


フッ…
【グリルは気を失った!】


ゴォォォォ…!!
【突如、辺りが莫大な炎につつまれる!】


「はぁ!?なんだこりゃ!?」


「なにしたんですかこのガキんちょ!?」


【燃え盛る炎がバミラを襲う!】


「うお!?」


【バミラは炎をかわした!】

【しかし燃え盛る炎は続けてバミラを襲う!】


「っ!?ちぃ…!」

「おいルーボ!!」


「へい!」

「強化魔法!ディアロマジック!」


ポワァ…
【バミラの魔法攻撃力が上昇した!】

「こっの…!なめんなっ!!」


ブワァァァ!!
【バミラは巨大な砂嵐を巻き起こした!】


シュウ~…
【炎が急激に鎮火していく!】



「はぁ…はぁ…」

「くそ、脅かしやがって…なんだったんだ今のは」


「いや~…本当に、どうなんのかと思いましたよ~」


「…あんだけの質量の魔法久々に見たぜ。本当にあのガキが?」

「ただ単純に火を食うだけが取り柄じゃねーってのか」


ガバ…!
【ルーボはグリルを肩に担いだ!】

「よっこいしょ…!しっかし完全に気を失ってますよこいつ、魔法は無意識だったんですかね?」


「さてな、少なくとも全く制御は出来てねぇ」


「ともあれ、これでようやくゆっくりと調べる事ができますよ。てゆーか最初から気絶させればよかった」


「ガキに関しては念入りに調べろ。もしかしたら思ってるよりも貴重なサンプルかもしんねぇ」


「へい、あ…そっちの青年はどうします?」


「あ~…まぁ大したことねぇだろうが一応こいつもデータ取っとけ、後で本部に送るからな」


「へいへ~い」


カタカタ…
【ルーボは解析装置をいじっている!】


「───ほいほいっと、青年の解析は済みましたよ。バミラさん」


「おう、どうだった?」


「正直俺の関心はゼロですね~。ステータスが腕力だけちょい高く、あとは軒並み低いドミリアって辺鄙な村の出身って事しか分からんかったです」


「まぁ、そんなもんだろうな」


「あぁ、ただ…」


「ただ?」


(何回調べてもエラーが表示される項目があったんだけど……故障ですよね)

「あ、いややっぱなんでもねぇです」


「……?なんだよ」

「はん…!まぁいいや、んじゃこいつはもう連れてくぞ。本部への転送装置が転送可能になる時間まで牢屋に入れとくわ」


「効率悪い転送装置ですよね~。一回送ると次転送するまで48時間もかかるなんて」


「型が古いからな、ただ俺は好きだぜ。その間使えないことを口実にサボりを正当化できる」


「いやいや…成果は出さないと、また評価下げられますよ」


「いいんだよ評価なんざどうでも。こっちの方が悠々自適に出来て俺様は楽だ」

「んじゃ、ちょっくら行ってくる」


「……全く、しょうがない人だ」


ーバミラのアジト 牢屋ー

「あ"~俺様とした事がしくったぜ。そういや牢屋の空き無かったんだったわ」


「…ZZZ……ZZZ…」


「………まぁいい、この取っ捕まってんのに呑気に寝てるやつと一緒にするか」

ガラァ…!
【バミラは牢屋の扉を開けた!】

ドサァ…!
【マサアキは牢屋に投げ込まれた!】


村は見ての通りもう搾取されまくっちまって、他に残ってるものなんてほとんど無いだろ

それでもこの村を狙い続ける理由ってのは何だ?メリットなんてあるのか?

無いなら、これ以上はもう手を出さないでやってくれよ

第3章 第15話


「……はん…!惨めなもんだな」

「村を庇ったつもりかしんねぇが、俺様相手にしゃしゃった結果が何一つ守れずにこの様だ」

「身の程を弁えて逃げちまえばよかったのによ」

「ま、せいぜい来世ではもっと利口に生きろや人間」


……………


「……ZZZ……………ん?…」



―バミラのアジト 入口付近―



「………」
「………」

【門番は辺りを警戒している!】



リリアル
 HP 71
 MP 43
 LV.8


「…さてと…どうにかここまでは来れたわけですが…」


「見張りがいるっすね…」


「…はい…当然あの方達をどうにかしなければ中に入ることは出来ません…定番ですね…」


「一応荷車持って来たっすけど……本当にやるんですか?」


「…勿論です…今は羅刹君もあるので強行突破も可能と言えば可能ですが…あまり得策とは言えないので…」


「この夜の静けさの中、事を荒立てるのは内部の敵に居場所を知らせるようなもんすからね」


「……仰る通りです…」

「…それに私もシスターの端くれ…出来れば無益な殺生は避けたいです…例えそれがシスターと相反する魔族でも…」

「…命を軽々しく奪うという行為は種族を問わず悪の所業ですから…」


「そう言ってる人がチェーンソーを持ってると説得力がまるで皆無なんすけど…」


「…では…期待していますよウマオさん…私に手を貸してくれるために着いて来てくれたのでしょう?…」


「うぅ…もうどうにでもなれっす」



「ふあ〜……ぁ」


「おい、気を抜くな。警備に集中しろ」


「……警備ったって、こんな時間にどうせ誰も来ないだろ」


「お前、知らないのか?最近バミラ様とルーボ様を対象とした討伐依頼が出回っている話を」


「あぁ?なんだそりゃ?命知らずな奴らもいたもんだな」

「ここら辺であの二人に勝てるのなんて居ないだろ」


「勝てる勝てないではない。そんな事態だからこそ、いついかなる時も気を抜くなと言っているのだ」

「不審な輩の侵入など許してみろ。我々など瞬く間に処分され──」


「あ〜、あのぉ……」


「「……っ!!」」



ジャキン…!
【門番Aは武器を構えた!】


「貴様…っ!何者だ!」


「ひひ〜ん!自分怪しい者じゃないっす!」


シャキン…!
【門番Bは武器を構えた!】


「ではこんな所で何をしている!返答次第ではすぐさま叩っ切るぞ!」


「ひえ〜!!血の気多すぎっす!」

「違うんす違うんす!自分はほら!これを届けに来たんす!」


ガラガラ…
【ウマオは積み荷を引っ張り出した!】


「なんだこれは?」


「あ、あの!ここは魔族バミラ様の縄張りだと聞いたっす。それであの…自分人間の身ではあるんすがバミラ様の強さにあこがれていて、一方的ではあるんすが献上品をと思いまして…!」


「荷物に紛れて中に侵入する…っすか?」


「…はい…」

「…バミラへの手土産という事で…ウマオさんはバミラの熱烈な信者として見張りの人達と接触して下さい…」


「しかし…中身を調べられたらどうするんすか…!?」


「…その時はウマオさんのアドリブ頼りです…巧みに騙してですね…」


「騙してって、そんなのほぼ自分に丸投げじゃないっすか!」


「…いざとなったら私がどうにかします…というより嫌なら無理をしないで戻ってもらっても結構ですよ…」


「くぅ……なんか納得いかないっす…」


「献上品~?こんな夜分にか?」


「怪しいなぁ…」


「あははは…」

(ちょっとちょっと大丈夫なんすかこれ~…!なんかいきなり怪しまれてるんすけど…!)

(それにアドリブだなんて…)


「まぁいい、とにかく中を確認させてもらうぞ」


「う”ぇ、あのえっと…それは…」


「……?なんだ?」


「えええっと、あ…開けない方が良いと思うっすよ!自分は!」


「開けない方が良い?なぜだ?」


「し、新鮮味を損ねるんで…なるべく良い状態でバミラ様に届けてあげたいなら、未開封のままのが良いと思うんすよ」


「新鮮味というと…食べ物か?」


「は、はい…」


「種類はなんだ?バミラ様はグルメであらせられる。半端な物では寧ろ失礼に値するぞ」


「えと、ナマモノとだけ言っておくっす…」



「…………おい、どうする?」


「いや…怪しいだろ、確認すべきだ」


「しかし品質を損ねた場合、それを届けた我々の責任問題になりかねんぞ。バミラ様にしぼられる」


「それは……うーむ」



「……あのぉ…」


「…………良いだろう、引き受けてやる」


「っ!本当っすか!」


「あぁ、我々が中まで運ぶ。それを早く寄越せ」


「貴様はそこから動くなよ。妙な真似をしたら直ちにその首をはねてやるからな」


「は、はいっす!」

「……ほっ」




(……ナイスですウマオさん…何とか上手くいきそうですね…このまま何事もなければ…)

グイ…


(……?……羅刹君の一部が衣服に引っ掛かって…)

(…よいしょ…)


カチン…!
【羅刹の主電源が入った!】

ギュイィイィィィ…!!!


「…っ!!?…」

「「「っ!!?」」」



「なんだこの音は!?何事だ!?」


「おい貴様!!これは一体!」


「活きがいいんす!活きがいいんす!」


ギュウイィィィィン……!!!


「活きが良いってお前これ完全に機械音だぞ!?」


(…あわわわわ…まずいまずいまずいです…羅刹君を早く止めませんと…!…)

(…どうやって止めるのですかこの子!?…試運転しておけばよかったです!…)

(……あ…)


ボシュ…!
【羅刹の刃が積み荷から飛び出した!】


「おいなんだあれは!?何か決定的な物が飛び出してきたぞ!?」


「貴様!これはどう説明するつもりだ!」


「さ、さぁ?…中で解体ショーでもやってるんすかね?」


「何で用意したお前が疑問系なんだ!?」


「もう我慢できん!中を確認させてもらう──」

バッ…!!
【リリアルは積み荷から飛び出した!】


「…ぞ?」


【リリアルの攻撃!】

ザシュ…!!
【門番Aに35のダメージ!】


「ぐあァァァ…!!」


【門番Aを倒した!】


「やはり謀りおったか!!貴様ァァ!!」

バッ…!!
【門番Bの攻撃!】


ガキィン…!
【リリアルは羅刹で受け止めた!】


ギャリギャリ…!
【羅刹は門番Bの武器ごと切り裂いた!】


「な…!」


【リリアルの攻撃!】

ザシュ…!!
【門番Bに41のダメージ!】


「ぐあ…!!ば…バカ…な…!」


【門番Bを倒した!】


リリアルは70の経験値を獲得した!



「……!…羅刹君………すごい力です…」


「リ、リリアルさん…!大丈夫っすか!?」


「…………ウマオさん?…」


「は、はい……」


「…作戦……上手くいきましたね…」


「いや全然っすけど!?」



「何してんすかあんた!?結局殺っちゃってんじゃないすか!非殺生主義は!?」


「…羅刹君のスイッチが服に引っかかってしまって止め方が分からず…」

「…えへ…」


「いや、えへじゃ済まされないっす!」


「…まぁまぁまぁ…結果的に門番をどうにかできたので良かったではないですか…」


「だとしてもっすね…一体どうすんすかこの人たち」


「………そうですね…埋めましょう…」


「埋める!?」


「…はい…今の戦闘が敵の耳に入っている可能性が高いです…増援が来る前に証拠は隠滅しませんと…」


「ちょ…え!?もうリリアルさんが魔族より魔族にしか見えないんすけど!?」


「…人聞きの悪いことを言わないでください…状況も状況でしたからこうする他なかったのです…きっと神もお許しになってくれます…」

「…いえ…寧ろこれは神が私に与えた一つの試練だったのですよ…ええ…きっとそうです…」


「何さりげなく今の失態を神様のせいにしてるんすか!?もうシスター辞めましょうよあなた!」




「………──こっちか?───…」

「……──ああ──…確かに聞こえた──……」




「っ!?リリアルさん…何やら人が近づいてくる気配がするっす…!」


ザクッザクッ…!
【リリアルは穴を掘っている!】


「…ちっ…思ったより感づくのが早いですね国家の犬が…」


「もう完璧に犯人のそれっす!リリアルさんちょっと意識してません!?」

「あと相手は国家の犬じゃないっす!」


「…このペースでは間に合いそうにありませんね…あきらめて近くの林に隠すことにします…ウマオさん頼めますか?…」


「あぁ、はいっす…」

「じゃあ、リリアルさんは…」


「…はい…バミラのアジトへ足を踏み入れます…」

「…ウマオさんとはここでお別れです…この人たちを隠したらウマオさんはそのまま安全な所まで避難してください…ラスンへ戻っても構いません…」


「……リリアルさん、やっぱり自分も…!」


「…約束…忘れましたか?…」


「……………」

「………わかったっす。ではどうか気を付けて、絶対帰って来てくださいっす」


「……はい…そうなるよう努力します…」



「…──おい…こっち──……」




「…時間がありません…ウマオさんこれを…」

【リリアルはウマオに聖水を渡した!】


「…これで帰りに魔物に襲われる確率が減少するはずです…」


「あ、ありがとうございます」


「…いえ…こちらこそ…ここまでありがとうございました…助かりました…」

「…では…さようなら…」


「あっ…」

タタッ!
【リリアルはバミラのアジトへ入っていった!】



「リリアルさん……大丈夫っすよね……?」


〜To be continued〜


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