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かわら版No.42 低度経済成長を高度文化成熟が支え、補う。

いつもお読みいただきありがとうございます。

桃山期には、戦乱をさけて山野に廬を結んで引きこもる隠者の姿を都にひきうつし、町屋の奥深くに「市中の山居」をかまえる風習がひろまった。上田篤氏によれば、その閑静なやつしの場は、「接客、遊興、文化の生活空間、すなわち情報交換の場として装置された」のであった。
このような、蓄財のあとのアソビこそが、 「……江戸時代の低い経済成長にもかかわらず、明治にいたって日本が、列強にまけずに近代化できた秘密であり……『低度経済成長』を『高度文化成熟』がおぎなっていた」とされる。

中村良夫『風土自治』藤原書店、2021年、79-80頁。

冒頭引用から入りました。逆説的に聞こえるかも知れませんが、私たちのまち米沢はいまこそ、再出発のつもりで、文化成熟に力を入れるべき時です。それがこのまちの個性を守り、また再確認・再発見することで、結果として経済成長を支え補う土台を形成します。

『低度経済成長』を『高度文化成熟』が支え、補う。

文化は、
経済に、力を湧き与えること、このことを重く受け止めるときです。

なぜいまやらなければいけないのか?その理由は、以前に書いた『かわら版No.16 文化を失う前に。社会が社会として持続するための世代間継承 』 にありますが、人口減少問題と同じく、まちの文化的資源を再確認し共有するための世代間承継に多くの時間的余裕はありません。

最近では、文化施設を社会的共通資本として捉え、成熟社会のまちづくりの新スタンダートとして、文化施設を拠点に形成される「文化的コモンズ」の姿を本格的に論じる著作も表わされています。

成熟期にあるこれからの日本では、博物館や美術館はもとより、図書館、劇場・ホール、公民館、福祉施設、教育施設、アートプロジェクトなどの文化的な営みや文化資源の集積が、地域づくりの重要な役割を果たすのではないだろうか。文化活動が地域に新たな価値をもたらし、住民の自治を育み、地域づくりの基盤をなすことが期待される。
その流れにあって、近年、文化施設の総体を「文化的コモンズ」と捉え、議論をする機運が生まれている。この概念が分野の境界を越えて人びとを結びつけ、地域の活動に新たな価値をもたらしている。

佐々木秀彦『文化的コモンズー文化施設がつくる公共圏』みすず書房、2024年4月。本の概要より

著作『文化的コモンズ』が示すように「博物館や美術館はもとより、図書館、劇場・ホール、公民館、福祉施設、教育施設、アートプロジェクトなど」の公共施設性の高い文化資源ももちろん大切なのですが、それに加え、私たちのまち米沢のように桃山時代・江戸時代の文化資源、そしてその時代から現代に至るまで多くの多様な民間文化団体が活動してきたまちにおいては、著作『風土自治』が示すように「町屋の奥深くに「市中の山居」をかまえる風習がひろまった。上田篤氏によれば、その閑静なやつしの場は、「接客、遊興、文化の生活空間、すなわち情報交換の場として装置された」このような町屋とまではいかなくても、その機能としての現代風の「市中の山居」(私たちのまち米沢では、東町プラットフォームでその取組がスタートしています。)を地域づくりの可能性の場として地域各地でデザインしていく必要があるだろうと思います。

『低度経済成長』を『高度文化成熟』が支え、補う。

そのためには、具体的な居場所、“閑静なやつしの場”を、現代風にデザイン(コ・デザイン※)し、言わば“よねざわルネサンス“を興していくことが急がれます。

※コ・デザイン(CoDesign)とは
デザイナーや専門家と言った限られた人々によってデザインするのではなくて、実際の利用者や利害関係者たちをプロジェクトの中に積極的に巻き込みながらデザインしていく取り組みのこと。Coは、接頭語で、「ともに」や「協働して行う」という意味。

この度も最後までお読みいただきありがとうございます。

かわら版No.42







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