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かわら版No.74 本当のローカル 奄美市から考える

いつもお読みいただきありがとうございます。

11月10日から13日の会派視察の行程で、鹿児島県奄美市、宮崎県宮崎市、宮崎県高鍋市をそれぞれ訪れることができました。本回は、最初に来訪させていただいた奄美市についてです。

奄美市は、鹿児島県の大自然・離島自治体の中でも最大のまちであり、奄美群島の中心です。その豊かな自然環境は世界自然遺産に登録されています。また、その中心地である名瀬地区は、人口集中地区(DID)でもあり、市の全体人口約40,000人に対して、人口約12,000人が東西2㎞、南北3.8㎞内にあり都市機能が集中しています。市役所をはじめとする行政機関・商店街・スーパー・病院・学校が局所的にまとまっている、いわゆるコンパクトシティです。DIDのためその繁華街は米沢市のそれよりも何倍も大きく感じます。

また、もっとも、まちには地元事業者が連なり、米沢市のようなチェーン店が乱立するような気配はなく、島の経済は「多品種少量生産」によるローカルな雰囲気が漂っています。さらに観光地としての活況を呈し、観光客が一目瞭然、島の経済を盛り上げています。果樹・さとうきびや黒糖・黒糖焼酎など島ならではの産品、伝統工芸品の大島紬、島料理などは、大手資本はもとより島外の色に染まっておらず、島の独自の風景や景観からなる雰囲気と相互に溶け合って島の個性として大きな魅力をつくりだしています。

この背景には、島の独自の歴史と伝統文化が根差していることを忘れてはいけません。この奄美のまちの濃度・濃さは、どこからやってくるのか、少し疑問でした。しかし、奄美群島には、カタカナでシマと呼ばれる集落があり、シマは人が生活するために人為的に構築された空間だそうです。家や畑や山や海がワンセットになっていて、それぞれの集落には独特の宗教的信仰と儀礼・文化が残り、先人の教えが伝承され、シマごとに濃い関係性を成してきたそうです。シマが奄美のまちの背景を成しているのです。

「奄美の人間関係はとても濃厚である、濃い関係性はシマによって形作られた。シマは互いに隔てられ、孤立していた。シマのメンバーは常に固定的で、シマではいつも同じ人と顔を合わせる。それは閉鎖的な社会であるが、反面、個人の存在が大きな意味をもつ社会であり、人と人が強く結びつく社会でもある。」
「集落という言葉には人間の要素が希薄である。一方、シマは人間関係の基本的な枠組である。だからこそ、言い換えがきかない。」

須山聡著「奄美雑話  地理学の目で群島を見る」海青社 2024.2 37頁

奄美ほど、はっきりとまちの輪郭がその独自の相貌のまま都市機能として発達した印象のあるまちは、私は始めてかも知れません。それは夕食にいただいた島料理で正月料理として食べるのだという塩の効いた塩豚とゴロゴロした島野菜を出汁で炊いた一皿を食べたときの印象がとても強く、食体験として不思議に残響しているほどです。

この度は、奄美市の島の印象を綴りました。また、より奄美のことが知りたくなり、視察中に『須山聡著「奄美雑話  地理学の目で群島を見る」海青社 2024.2』を買い読みました。解像度が上がると同時に、奄美市のローカルは、米沢市の磨き上げのためのヒントとしてとても濃密な経験となりました。

なお、奄美市視察は、奄美市役所を訪庁し「ノーコード宣言シティー」の取組、奄美市WorkStyle Lab Inno(ラボ “イノー”)を見学し、市内における就労機会の確保を行うとともに「テレワーク」や「フリーランス」、「副業推進」など新たな働き方を実現するための環境整備事業の取組を視察させていただきました。

この度も最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考文献】

須山聡著 「奄美雑話  地理学の目で群島を見る」 海青社 2024.2

かわら版No.74

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