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線形3項間漸化式の解き方(破産確率に向けて)

破産確率の問題を考察するに当たり,線形3項間漸化式の知識が必要になるので,本稿にまとめておく.高校数学でも解けるが,どちらかというと大学で学ぶ線形代数の知識を使って解く方法を用いる.


$${p,q}$$を定数として,数列$${\{a_n\} \; (n=0,1,2,\cdots)}$$が次の漸化式を満たすとする.

$$
\begin{align*}{}
a_{n+2}+2pa_{n+1}+qa_n=0 \;\;\; (n \geq 0)
\end{align*}
$$

この漸化式は線形なので,二つの線形独立な解が存在すれば,それらの線形結合が一般解となる(証明略).そこで,$${a_n = \lambda^n \; (0 \neq \lambda \in {\mathbb C})}$$という形の解を探すことにする.これを漸化式に代入すると,

$$
\begin{align*}{}
\lambda^2+2p \lambda + q=0
\end{align*}
$$

が得られる.これを与えられた漸化式の特性方程式(characteristic equation)という.2次方程式の解の公式を用いると,特性方程式の解として次を得る.

$$
\begin{align*}{}
\lambda = \lambda_\pm := -p \pm \sqrt{D}, \;\;\; D:= p^2-q.
\end{align*}
$$


$${D \neq 0}$$のときは,二つの解$${a_n = \lambda_\pm^n}$$が線形独立となるから,$${C_\pm}$$を任意定数として一般解は次で与えられる.

$$
\begin{align*}{}
a_n = C_- \lambda_-^n + C_+ \lambda_+^n.
\end{align*}
$$


$${D = 0}$$のときは,$${\lambda=\lambda_\pm=-q}$$のみが特性方程式の解であるから,上の方法では線形独立な解は$${a_n =C (-q)^n}$$しか得られない($${C}$$は任意定数).そこで,任意定数$${C}$$を数列$${C_n}$$に格上げして,元の漸化式が満たされるように$${C_n}$$を決めてみよう(定数変化法).$${a_n=C_n (-q)^{n}}$$を漸化式に代入すると,次を得る.

$$
\begin{align*}{}
C_{n+2}-2C_{n+1}+C_n=0.
\end{align*}
$$

これは,$${C_{n+2}-C_{n+1}=C_{n+1}-C_n=\cdots=C_1-C_0}$$と変形できるから,$${\{C_n\}}$$は等差数列である.したがって,$${A,B}$$を初期条件から決まる定数として,一般項$${C_n = An+B}$$を得る.よって,

$$
\begin{align*}{}
a_n = (An+B)(-q)^{n}.
\end{align*}
$$

$${(-q)^n}$$と$${n(-q)^n}$$は線形独立であるから,これは一般解である.

破産確率の問題についてと,上で扱った漸化式の高校数学っぽい解き方はヨビノリの動画にあります.

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