C4-621≠Raven
我が愛しい飼い主、もういないあなたへ、せめてさようならと言わせてください。
あなたが与えてくれた全てが、私にとって新鮮でした。あなたが与えてくれた、名のあるものが好きでした。名もないものも好きでした。温かいものも冷たいものも、あなたが与えてくれたものは私の中で熱になりました。
その熱が私をここまで連れてきて、だけどあなたはいなくなってしまった。私の首輪へ繋がるリードの先には、今あなたはいないのです。
かつて、この空虚こそが私でした。寒々しい荒廃の中で、熱なく生きる者こそが私でした。我が愛しい飼い主、あなたが私を見つけるまでは。あなたが私を見出したのは、きっと空虚を友とすることが所以だったのでしょうね。でも、あなたは私に温かさを、冷たさを、熱を与えてくれた。かつての私ならばともかく、今の私にとってはこの空虚は耐え難い。
確かに、私にも友と呼ぶべきものができました。暖かなものができました。羽ばたくための比翼の友ができました。
ですが、あなたがいないのならこの世の全てに意味はないのです。友たちが私に見出したのは、あなたが込めた熱なのですから。私とは、首輪とリードであなたに繋がっているものなのですから。
あなたが居たならば、比翼の友と共に戦うことも選べたかもしれない。けれどあなたが居ない今、あなたの猟犬と名の付いた首輪を嵌めていたいのです。そうやって逝きたいのです。
さようなら、我が愛しい飼い主。私には、あなたのくれた首輪が他の何より愛おしい。
さようなら、我が比翼の友よ。私はこれから、あなたを殺して星を焼きます。
「決着を、レイヴン!」
私は621だ。レイヴンではなく。