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私が授業後大切にしている学習者とのインターアクション: 【余韻のための廊下作り】
毎回のオンラインレッスンの終わり。
私「じゃ、お疲れ様でした!」
学習者「先生、ありがとうございました。」
私「こちらこそ、ありがとうございました。また来週!おやすみなさい。」
学習者「おやすみなさい。」
毎回名残惜しい気分のまま、「はーい、さようならー。」「またー。」とか、語尾を最大限に伸ばしながら、ちょうどいいタイミングを見計らって【終了ボタン】を押す。
でも、どんなにいい感じに終わらせようと私が努力したところで、
画面はブチッと切れる。
そして、私も学習者も一瞬にして、自分の世界に半強制的に引き戻される。
やっぱりそこはいつになっても、心地良いものではないと感じる。
私がオンラインで日本語を教え始めたのは、2015年。
「オンライン」が当たり前となった今では、オフラインより便利で受けやすいと、皆が積極的「オンラインレッスン」を選ぶ。
でも2015年当時は、「対面式レッスン」が主流で、「オンラインレッスン」に懐疑的な人が多かった。
「オンラインレッスンは好きじゃない」という人に、その理由を聞いてみたことがある。
ほぼ全ての人が【コミュニケーションが取りにくい】と答えた。
他の言い方に換えると、
【画面越しだと、相手との距離を遠く感じる】ということだ。
【画面越しだと、相手との距離を遠く感じる】
なるほど。
物理的な距離は遠いから、仕方ない。
でも、相手を感じる【心の距離】はどうにかできるはず。
私がいつも心がけてしていることがある。
それは、終了ボタンが押されブチッと画面が切れ、相手と自分が自分の世界に引き戻された直後。
【学習者にラインでメッセージを送る】ということをやっている。
「今日もお疲れ様でした!今週はお仕事が忙しそうだけど、週末まで残り2日。頑張ってくださいね。」
「今日もすごく楽しかったです!○○さんがあのニュースについて詳しく話してくれて、私も更に理解が深まり興味が持てました!ありがとうございました。では、また来週!」
などなど。
その後、授業中に解説しながら書いた板書をスクショして、それを送ったりもする。次回までの宿題を送ったりもする。
つまり何が重要かと言うと、
さっきまで繋がっていたお互いの【余韻を残す】こと。
相手との繋がりが切れ、自分だけの世界に戻った後、
一瞬にして【相手との距離を遠く感じる】ようになってしまう。
そこで関係が途切れてしまうように感じてしまう。
それを、
一瞬ではなく、緩やかに、徐々に自分の世界に戻っていけるようにする。
相手にとっても私にとっても。
心地よく。
それはまた、
「あなたとの関係は、画面がブチッと切れてからも、ちゃんと繋がっているよ」というメッセージでもある。
タイトルにある『余韻のための廊下作り』って何?
それは、
『心はどこへ消えた?』東畑開人著
を読んでいた時のこと。
私がやっているあの『余韻作り』にピッタリとくることが書かれていた。
さっきまで和気藹々と仲良くやっていたのに、「じゃあ、これで終わりにします」という声と共に、ブチッと画面が消え、自分ひとりの部屋に放り出される。これが切ない。
(中略)
廊下が足りていない。教授会終わりに、「今日もあの教授のカラオケ状態でしたね」とか「マラカス鳴らそうかと思ったぜ」とか、(中略)
雑談も陰口も密談も全部廊下での出来事だった。事件は会議室でも現場でも起きるけれど、人間らしいことは大体廊下で起こっていたのである。
そう、皆思っている。あのブチッと画面から相手が一瞬で消えて行くのは寂しいと。
そして東畑さんはこう続ける。
だから、廊下なのだ。(中略)そこは半分は楽しい教授会で、半分は孤独な研究室だ。
(中略)
言い換えると、それは必ずしも物理的な廊下じゃなくてもいい。
オンライン研究会が終わってからもLINEで冗談を言えるし、オンライン教授会の後に短歌を内輪のメーリングリストに流すこともできる。
それが心に廊下を作り出す。
そうやって、私たちは日々孤独とつながりの間を行き来しているのだと思う。人間らしいことは大体廊下で起こっているのだ。
この東畑さんのいう『廊下』が私の中ですごくしっくりと来た。
インターネットの世界では、「ここ」から「次」へ一瞬で切り替わる。
それが最も大きな魅力であることは間違いない。
でも、人間と人間との繋がりにおいては、名残惜しさや切なさを感じてしまう。そのスピードについて行けないというか。
なので、その間に『余韻としての廊下』を設けよう。
そうしたら、心地よくだんだんと自分の世界に戻ることができるから。
染