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稲妻に乗れ

 上を向いてアイス・ティの最後の一滴を飲み干した。そして氷のかけらを食べようと思った。が、小さくなった氷のかけらは紙コップのそこにへばりついていた。ナジャーを小馬鹿にするように。彼の人生は大体がこんなものだった。
 彼は紙コップをつぶして、くずかごに捨てた。
ジョン・ラッツ『稲妻に乗れ』

ハヤカワ文庫『新エドガー賞全集』
マーティン・H・グリーンバーグ編
訳 #田口俊樹 #山本光伸#篠原慎 #吉野美恵子 #黒原敏行 
カバー #和田誠

アメリカ探偵作家クラブが開催しているエドガー賞(エドガー・アラン・ポーに因んで)、1981年から88年までの最優秀短編賞の受賞作品。

フレデリック・フォーサイス『アイルランドに蛇はいない』
ヘイトクライムが意外な展開へ(やはり悲劇)。

ビル・クレンショウ『映画館』
 “13日の金曜日”のような大袈裟なホラームービーの娯楽に麻痺した人々の怖さ。

ハーラン・エリスン『ソフト・モンキー』
黒人のバッグ・レディ(女性の浮浪者)が主人公。

と、さすが80年代なので現代にリアルに迫ってくる話ばかり。

怖かったのはルース・レンデルの『女ともだち』
男性恐怖症になってしまったストレートの女性クリスティーンと、女装が趣味のストレート男性デーヴィッドが親友同士のようになり、女同士としてのデート遊びを繰り返す。しかしデーヴィッドはオトコとしてクリスティーンを好きになる。それが最悪の結末に..。フランソワ・オゾン監督で映画化されてるが、内容はかなり違っているようだ。
#ルースレンデル

他はジャック・リッチー『エミリーがいない』、ローレンス・ブロック『夜明けの光の中に』、ロバート・サンプスン『ピントン郡の雨』。

電気椅子処刑が決まった死刑囚の冤罪を晴らすことができず、処刑の後でやっと真実を掴んだ探偵ナジャーの話、ジョン・ラッツ『稲妻に乗れ』は苦かった。
#ジョンラッツ

紙コップの底の氷のかけら、取れないよなー。

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