見出し画像

根無し草


もし人間を狩猟型と農耕型と二つに分けて、あなたはどっち?と訊かれたら、私は間違いなく、狩猟型である。                 根気がなく、飽き性で大雑把である。じっくり腰を下ろして仕事のできない人間である。来るべき収穫のために手順よく毎日の仕事をするなんて、それは私にとって至難のわざだ。                     かといって、獲物を追って山野を駈け回るほどの執着もない。虫も殺せぬという諺どおり、私はエセ動物愛護者だから、食べるために自分以外の命を奪うなんて、そんなことできない。と、スーパーで買ってきた半額のヒレカツ丼にかぶりつく。                          結局、私はエセ狩猟型だ。ただいつも風に吹かれていたいだけなのである。口では自分の不甲斐なさを嘆きながらどこか根無し草のような生き方に未だに憧れているのかもしれない。
デラシネ、フランス語で、根無し草。転じて故郷や祖国から切り離された人を意味する。五木寛之の作品でこの言葉を知り、知ったかぶりして、いろんな機会でみんなに、教えた。
時々、クリオネと間違えて言ったこともあるけれど。
水に浮かんだ浮草を見るとき感じる癒しは、一体、何だろう。自分をそこに投影しているのか?それとも、優雅に水に漂う白鳥が、本当は、水面下、いつも懸命に水かきを動かしているんだ、と誰かに伝えたいのか?睡蓮が突然ある朝水辺に美しい花を咲かせるように、自分の人生にも劇的な変化が現れることを、性懲りもなく期待しているのか?
シンガーソングライターの山崎まさよしは「根無し草ラプソディー」で、こう歌う。軽快なリズムに乗せて、こう歌う。

さびしい夜は君を思う
面影だけでも抱かせて欲しい
黄金色の街で便りを書く
飛行機雲をみて

さびしい夜は君を思う
生意気な仕草 泣かせたことや
遠くの海で便りを書く
沖に出る船を見て

こんな曲を聴いていると、また旅にでたくなるなあ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?