
水と酸素から消毒剤をつくる新技術!
この記事は「酸素と水から環境にやさしい酸化剤を創出! 安全な水と衛生のための持続可能なソリューション」をより多くの方に知っていただくため、専門的な内容をできるだけ身近な言葉で説明しています。正しい内容が知りたい方は、元のプレスリリースをチェックしてくださいね。
みなさんは過酸化水素という物質をご存知でしょうか。実は、傷の消毒や衣類の漂白、浄水処理など、私たちの生活の様々な場面で使われている大切な化学物質なのです。でも、これまでの製造方法では大量の温室効果ガスを出してしまい、環境への負担が大きいという問題がありました。そんな中、東京都立大学の研究チームが、とても画期的な技術を開発しました。空気中の酸素と水だけを使って、環境にやさしく過酸化水素を作る方法を見つけたのです。
新技術のすごいところ
この新しい技術のポイントは、特殊な膜を使っているところです。この膜には小さな穴がたくさん開いていて、水素イオンと酸素は通しますが、水はほとんど通しません。このユニークな特徴のおかげで、とても効率よく過酸化水素を作ることができます。研究チームは、この技術を使って50時間以上も連続して過酸化水素を作り続けることに成功しました。しかも、できた過酸化水素には余計な物質が一切含まれていないため、水の浄化や消毒にそのまま使うことができます。

私たちの生活がより良くなる可能性
この技術が実用化されると、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って、必要な場所で必要な量だけ過酸化水素を作ることができるようになります。これは、世界中の人々が安全な水を使えるようになるための大きな一歩となるでしょう。例えば、これまで安全な飲み水を確保するのが難しかった地域でも、この技術があれば簡単に水を消毒できるようになります。また、工場での使用においても、運搬や保管にかかる環境負荷を大きく減らすことができます。
より詳しい内容をQ&Aでお答えします!

従来の過酸化水素の製造方法と、今回の新しい方法はどう違うのですか?
従来の製造方法は「アントラキノン法」と呼ばれるもので、製造過程で大量の温室効果ガスを排出してしまいます。また、できた過酸化水素を70%という高濃度まで濃縮する必要があり、その輸送時には爆発のリスクもありました。
一方、今回開発された方法では、空気中の酸素と水だけを原料として使います。特殊な膜を通して酸素と水を反応させ、電気を使って過酸化水素を作ります。この方法なら温室効果ガスを出さず、必要な場所で必要な濃度の過酸化水素を作れます。実際の用途では10%以下の濃度で十分なので、より安全で環境にやさしい製造が可能になりました。
研究チームが開発した「多孔質電解質膜」って何がすごいのですか?
この膜の特徴は、とても小さな穴がたくさん開いていて、水素イオンと酸素は通すけれど水はほとんど通さないという点です。この膜をフッ素系の特殊な樹脂で加工することで、反応に必要な物質だけを効率よく通すことができます。
さらに、この膜のおかげで、陽極側で分解された水から生まれた酸素を陰極側に効率よく届けることができます。この仕組みにより、高い効率で過酸化水素を作り出すことに成功しました。具体的には、電流密度5.0 mA/cm²という条件で79%という高い効率を達成しています。
なぜ50時間以上も連続して製造できることが重要なのですか?
工業的に使える技術かどうかを判断する上で、長時間安定して製造できることはとても重要です。この研究では、水処理に使える濃度である5,000 mg/L以上の過酸化水素水溶液を50時間以上も途切れることなく作り続けることができました。
これは、開発された装置が安定して働き続けられることを示しています。特に、多孔質電解質膜を通じて供給される酸素ガスと、陰極に供給される純水が、コバルト触媒の近くで安定した反応場を作り出せていることを意味します。この安定性は、実用化に向けて大きな強みとなるんです。

「不純物を含まない過酸化水素」というのは、なぜ重要なのですか?
従来の電解による製造方法では、電解質(イオンや酸・塩基)などの不純物が混ざってしまい、使用できる用途が限られていました。しかし、今回開発された技術では、原料が酸素と水だけなので、できた過酸化水素には不純物が一切含まれません。
これにより、飲料水の消毒や医療用の消毒など、高い純度が求められる用途にも直接使用できます。特に、安全な飲料水へのアクセスが難しい地域での利用や、医療現場での使用において、大きなメリットとなります。
この技術は実際にどのように私たちの生活に役立つのでしょうか?
この技術の最大の特徴は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って、必要な場所で必要な量だけ過酸化水素を作れることです。例えば、病院や浄水施設などで、その場で必要な量の消毒液を作ることができます。
また、これまでは高濃度の過酸化水素を工場で作り、それを運搬・保管する必要がありましたが、この新しい技術では各地域で必要な分だけ製造できます。これにより、運搬や保管にかかるコストと環境負荷を大きく減らすことができます。さらに、災害時などでも、電気さえあれば消毒液を作れるため、衛生管理に役立てることができます。
考察:変わりゆく時代、変わりゆくものづくり

便利になった私たちの生活を振り返ってみると、必要なものがボタン一つで手に入る時代になりましたね。音楽も映画も、欲しい時にすぐ楽しめます。でも、化学製品の世界はまだまだ昔ながらの「大量生産・大量輸送」の仕組みが主流です。
今回の研究は、そんな従来の考え方を大きく変える可能性を秘めています。過酸化水素という身近な化学製品を、太陽光や風力を使って、必要な時に必要な分だけ作れる。この技術は、私たちの暮らしをより柔軟に、より環境にやさしくしてくれるかもしれません。
病院では消毒液が必要な時にすぐ作れる。災害時には避難所で浄水に使える。遠く離れた地域でも、電気さえあれば安全な水を確保できる。このように、場所や状況に応じて柔軟に対応できることは、これからの時代にとても大切な価値になるのではないでしょうか。もちろん大規模工場での生産がなくなるわけではありませんが、こうした小回りの利く技術が増えていけば、私たちの生活はもっと便利に、そして地球にもやさしくなっていくはずです。
執筆の励みになるので、内容がおもしろかった!参考になった人は「いいね」お願いします。他の研究も知りたい人は「フォロー」しておくと漏れなくチェックできますよ!
いいなと思ったら応援しよう!
