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「太りにくい体」への新発見!肝臓の隠れた働きを東北大が解明

この記事は「脂肪肝・肥満の治療作用を有するシグナル経路の発見 -未開拓の受容体シグナルを標的とした治療薬の開発に貢献-」をより多くの方に知っていただくため、専門的な内容をできるだけ身近な言葉で説明しています。正しい内容が知りたい方は、元のプレスリリースをチェックしてくださいね。

挿入画像の出典:PDF

みなさんは「非アルコール性脂肪性肝疾患」略してNAFLDという病気をご存じですか?これはお酒を飲む習慣がないのに肝臓に脂肪がたまってしまう病気で、実は今、日本人の4人に1人がその疑いがあるといわれています。この病気に対する有効な治療薬がなかなか見つからない中、東北大学を中心とした研究チームが、新しい治療法につながる大切な発見をしました。

サクッと内容を知りたい方はPDFを見てね!

なぜこの発見が重要なの?

私たちの体の中で、肝臓は「体の化学工場」とも呼ばれる大切な臓器。でも現代の生活習慣の中で、この肝臓に脂肪がたまってしまう人が増えています。これが「脂肪肝」でNAFLDの初期の状態です。さらに病気が進むと肝臓に炎症が起こり、最終的には肝硬変や肝臓がんにつながる可能性もある深刻な病気なのですよ。恐ろしいですよね。

研究チームは何を発見したの?

東北大学を中心に、慶應義塾大学や筑波大学の研究者たちが協力して、肝臓の中にある「G12シグナル」という特別な仕組みを発見しました。このG12シグナルは、細胞の中で情報を伝える道しるべのような働きをしています。研究チームがこのシグナルを活性化させると、次の2つの効果があることが分かりました。

  1. 肝臓にたまった脂肪を外に出す働きが活発になる

  2. FGF21というホルモンの量が増える(このホルモンには肥満を防ぐ効果があります)

どうやって研究したの?

研究チームは特別な遺伝子を持つマウスを作り、そのマウスの肝臓だけでG12シグナルのスイッチを入れられるようにしました。具体的にはマウスに「デザイナー作動薬」と呼ばれる特殊な薬を与えることで、G12シグナルを自由にオン・オフできるようにしました。

そしてこのマウスに高脂肪食を与えて観察したところ、普通のマウスと比べて脂肪肝になりにくく、太りにくくなった。さらに、体全体のエネルギー消費も増えていることが分かりました。また、研究チームはFGF21という「ヘパトカイン」(肝臓で作られ、全身に影響を与えるホルモンのような物質)の量が増えていることを発見しました。このFGF21が、肥満を防ぐ効果の一部を担っていると考えられています。

この発見は私たちの未来をどう変えるの?

この発見は、長年治療薬の開発が難しかったNAFLDに対する新しい治療法の開発につながる可能性があります。肝臓にはG12シグナルを活性化させる様々な受容体があることが分かっているので、これらの受容体を標的とした新しい薬の開発が期待されます。

ただし、研究チームは注意点も見つけています。G12シグナルを活性化すると血液中の脂肪が増える可能性があるため、血中の脂肪を減らす他の薬と組み合わせることで、より安全で効果的な治療法が実現できるかもしれません。今回の発見が私たちの健康な未来への、大切な一歩となりそうですね。

その疑問にQ&Aでお答えします!

Q:「G12シグナル」って、もう少し詳しく教えてください。

私たちの体は、細胞同士が情報をやりとりすることで正常に働いています。G12シグナルは、細胞の表面にある「GPCRs」という特別なアンテナが受け取った情報を、細胞の中に伝える仕組みの一つです。体の中には他にもGs、Gi、Gqというシグナルがありますが、今回の研究では特にG12シグナルが脂肪肝の改善に効果があることが分かりました。

Q:肝臓から脂肪が「外に出る」とありましたが、その脂肪はどこへ行くのですか?

肝臓から出された脂肪は、血液の中を通って体の各部分に運ばれ、主に筋肉などでエネルギーとして使われます。ただし、一度に大量の脂肪が血液中に出ると良くないので、研究チームでは他の治療法と組み合わせることを考えています。

Q:FGF21というホルモンは、どうやって肥満を防ぐのですか?

FGF21は肝臓で作られ、血液を通じて脳や脂肪組織に働きかけます。このホルモンには、体のエネルギー消費を増やす効果があり、また私たちの体が脂肪を効率よく燃焼させるのを助ける働きもあります。今回の研究で、G12シグナルを活性化させるとこのFGF21の量が増えることが分かりました。

Q:この研究は、すぐに治療薬として使えるようになるのですか?

残念ながら、すぐには使えるようになりません。今回の発見は「こういう仕組みが効果的かもしれない」という重要な手がかりを見つけた段階です。これから安全性や効果を確認する様々な研究を重ね、実際の治療薬の開発につなげていく必要があります。

Q:脂肪肝を防ぐために、私たちに今できることはありますか?

はい、いくつかあります。良い食事(揚げ物をさけ食物繊維の多い食事)を心がけること、適度な運動を続けること、十分な睡眠を取ることなどが大切です。とくに、急激な体重増加を避けて、腹囲を適正な範囲に保つことが脂肪肝の予防に効果的だと言われています。気になる症状がある場合は、早めに医師に相談することをお勧めします。

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