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東海地方の異常な暑さと豪雨の真犯人 - 7年続く黒潮大蛇行
この記事は「東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明 ~黒潮が及ぼす影響を高解像度の気候シミュレーションで分析~」をより多くの方に知っていただくため、専門的な内容をできるだけ身近な言葉で説明しています。正しい内容が知りたい方は、元のプレスリリースをチェックしてくださいね。
黒潮の大蛇行が、私たちの暮らしにどんな影響を与えているのか、気になったことはありませんか?実は、2017年から続いている黒潮の大蛇行は、東海地方の海水温を大きく上昇させ、予想以上の豪雨をもたらしていることが、最新の研究でわかってきました。
なぜ黒潮の大蛇行が注目されているのか
黒潮は太平洋を北上する暖かい海流で、日本の気候に大きな影響を与えています。普段は日本の沿岸に沿って流れていますが、時々、大きく蛇行して沖合を流れることがあります。これを「大蛇行」と呼びます。
2017年8月から始まった現在の大蛇行は、観測史上最も長く続いていて、すでに7年以上が経過しています。この間、東海地方の沿岸では、これまでにない大きな変化が起きています。
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東海地方の海が異常に暖かくなっている
研究チームが衛星データを分析したところ、東海地方の沿岸の海水温は、通常より約3度も高い状態が続いていることがわかりました。時には5度も高くなることもあり、これは「海洋熱波」と呼ばれる異常な状態です。
海の温度が3度上がるというと、あまり大きな変化に感じないかもしれません。でも、これは私たちが住む陸地の気温が真夏日から猛暑日に変わるくらいの大きな変化なのです。
海水温の上昇が豪雨を引き起こすメカニズム
では、なぜ海水温の上昇が豪雨につながるのでしょうか。研究チームは、コンピューターシミュレーションを使って、そのメカニズムを解明しました。
暖かい海面からは多くの水蒸気が発生します。さらに、暖められた空気が上昇することで、大気が不安定になります。夏の季節風がこの水蒸気を運び込むことで、東海地方では平常時の1.5倍もの雨が降るようになっているのです。
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将来の気候変動との関係
研究チームは、将来の気候変動についても予測を行いました。その結果、地球温暖化が進むと、2050年には東海地方の海水温がさらに2度上昇する可能性があることがわかりました。
これは深刻な問題です。なぜなら、海水温が5度上昇すると、降水量が2倍になる可能性があるからです。実際、2020年7月の記録的な大雨や、近年の台風による豪雨被害には、この海水温の上昇が影響している可能性が指摘されています。
この研究が私たちの生活にもたらす意義
この研究の成果は、気象予報の精度向上に役立つだけでなく、防災対策の改善にも大きく貢献すると期待されています。特に東海地方に住む5000万人の人々にとって、豪雨や熱中症のリスクに備えるための重要な情報となります。
その疑問にQ&Aでお答えします!
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黒潮の大蛇行は今までも起きていたのですか?
黒潮の大蛇行は1965年以降、過去に5回観測されています。第1期(1975年8月から1980年3月)、第2期(1981年11月から1984年5月)、第3期(1986年12月から1988年7月)、第4期(1989年12月から1990年12月)、そして第5期(2004年7月から2005年8月)です。しかし、現在の大蛇行は2017年8月から続いており、これまでの記録をはるかに超える長さとなっています。過去の大蛇行は長くても4年程度で終わっていましたが、現在の大蛇行は7年以上続いているという特異な現象なのです。
大蛇行による海水温の上昇は、地球温暖化との関係はあるのでしょうか?
研究チームが1982年から2016年までの東海・関東沿岸の海水温を分析したところ、地球温暖化による長期的な上昇傾向は見られませんでした。つまり、現在観測されている顕著な海水温の上昇は、主に黒潮の大蛇行による影響だと考えられています。ただし、将来的には地球温暖化の影響で、この海域の水温がさらに上昇する可能性が指摘されています。特に高いCO2排出シナリオでは、2050年までに現在より2度、今世紀末までに3.2度上昇する可能性があるとされています。この予測は、現在の大蛇行による水温上昇に加えて、さらなる水温上昇が起こる可能性を示唆しています。
海水温の上昇は台風にも影響を与えるのでしょうか?
研究チームは、2018年の台風シマロン、2022年の台風メアリー、2023年の台風ラン等を詳細に分析しました。その結果、大蛇行による海水温の上昇は、台風が通過する際の降水量を通常の1.5倍から2倍に増加させる可能性があることがわかりました。ただし、海水温の上昇が台風自体の強度に与える影響については、少なくとも上陸前までは顕著な違いは見られませんでした。これは、台風の強度が局所的な海水温だけでなく、より広域の気象条件にも大きく影響されるためと考えられています。これらの知見は、台風接近時の防災対策を考える上で重要な情報となっています。
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