痛くない電気で免疫力アップ! 九大が新がん治療法を発見
みなさん、こんにちは。今日は、がん治療に進歩をもたらす可能性のある、研究成果についてお話しします。九州大学の研究チームが、痛みを感じないほど弱い電気刺激をつかって、体が本来持っているがんと戦う力を高める方法を発見したのです。この発見は、マウスだけでなく人間の細胞でも確認されていて、新しい治療法として大きな期待が寄せられています。
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体の中の戦士「マクロファージ」って知ってる?
私たちの体には「マクロファージ」という、まるで体内警備員のような免疫細胞がいます。このマクロファージは、がん細胞を見つけると、それを自分の中に取り込んで退治してくれるんです。さらに、他の免疫細胞たちに「ここにがん細胞がいるよ!」と知らせる合図も出しています。これは「がん免疫」と呼ばれる、体が生まれながらに持ってる大切な防御システムなんです。
朝と夜で変わる免疫力の謎
実は、このマクロファージの活動には「体内時計」が深く関わっています。体内時計は約24時間周期で働いていて、それに合わせてマクロファージの活動も変化します。その結果、がんと戦う力が強い時間帯・弱い時間帯が生まれてしまうんです。この時間による差は、がんの治療効果にも影響を与える可能性が指摘されていました。
弱い電気でパワーアップ!
そこで九州大学の研究チームは、とてもユニークな方法を思いつきました。現在スポーツ選手の治療などで使われている、痛みを感じないほど弱い電気刺激をマクロファージに与えてみたんです。すると、マクロファージの活動が弱くなる時間帯がなくなり、より安定した働きを見せるようになりました。
なぜ効果があるの?
研究チームが詳しく調べたところ、この弱い電気刺激は「時計遺伝子」の一つであるPERIOD1に働きかけることが分かりました。PERIOD1は体内時計の調整役として知られている遺伝子で、この遺伝子の働きが変化することで、マクロファージの活動が安定するというわけです。
実際にがんに効くの?
研究チームはマウスを使って、この治療法の効果を確かめました。乳がんや肝臓がん、卵巣がんのあるマウスに弱い電気刺激を与えたところ、がんの増え方が遅くなり、さらには転移も抑えられました。その結果、マウスの生存期間も長くなったのです。これは既存のがん免疫療法とは異なるアプローチで、新しい治療の選択肢となる可能性を示しています。
これからの展開は?
この研究成果を実用化するため、研究チームは「chicktek(チックテック)」という会社を立ち上げました。がん治療に加えて、数年内には加齢に関する研究成果の発表も予定しているそうです。さらに、この技術を畜産業にも活用できないか研究を進めているとのことです。
私たちの体に備わっているがんと戦う力を、痛みのない電気刺激でより安定して発揮させる。この革新的な発見が、これからのがん治療に大きな希望をもたらしてくれそうですね。引き続き注目していきたいです。
その疑問にQ&Aでお答えします!
Q1:この電気刺激はどのくらいの強さなんですか?痛みは本当にないの?
スポーツ選手の治療やリハビリでも使われている程度の非常に弱い電気刺激です。痛みを感じないレベルなので、治療中も快適に過ごせます。実際、この強さの電気刺激は既に医療現場で安全に使用されています。
Q2:がんの種類によって効果は違うのでしょうか?
研究では乳がん、肝臓がん、卵巣がんで効果が確認されました。これらのがんで効果が見られたのは、マクロファージの働きを高めるという共通の仕組みによるものです。ただし、他のがんについては今後の研究で確認していく必要があります。
Q3:既存のがん免疫療法と何が違うのですか?
既存の免疫療法は主に薬を使用しますが、この方法は電気刺激を使うという点が大きく異なります。また、体内時計に着目して免疫力の時間による差をなくすという、これまでにない新しいアプローチです。
Q4:いつから治療を受けられるようになりますか?
現在、九大発ベンチャーのchicktekが実用化に向けた研究開発を進めています。ただし、実際の治療法として確立するにはまだ時間が必要です。研究チームは安全性と効果を十分に確認しながら、開発を進めているところです。
Q5:体内時計が関係しているということは、治療は特定の時間にしたほうがいいのでしょうか?
むしろ逆です。この治療法の特徴は、時間による免疫力の差をなくすことができる点にあります。そのため、治療時間を気にする必要が少なくなるというメリットがあります。
Q6:副作用の心配はないのでしょうか?
使用する電気刺激は既にスポーツ医療などで安全性が確認されているものです。ただし、がん治療としての使用については、今後さらなる研究で安全性を確認していく必要があります。
Q7:「時計遺伝子」が変化すると、睡眠など他の体の機能に影響はないのですか?
研究では、この電気刺激による変化はマクロファージの働きを改善することに焦点を当てています。他の体の機能への影響については、実用化に向けた研究の中で慎重に確認が進められています。
Q8:この研究は他の病気の治療にも応用できるのでしょうか?
研究チームは、加齢に関する研究も進めており、数年内に成果を発表する予定とのことです。また、免疫機能の改善を通じて、様々な分野への応用が期待されていますよ。