nakai

キモノの製作現場います。模様染めです。一方で、中高生が学ぶ基礎美術のお手伝いをしています。 自由な生き方を目指しています。

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キモノの製作現場います。模様染めです。一方で、中高生が学ぶ基礎美術のお手伝いをしています。 自由な生き方を目指しています。

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きもの製作現場から

自己紹介 小さい頃の夢は、科学者になることでした。 銀河鉄道に思いをはせながら、石ころを手にとって空想を楽しんでいました。 今でも、海底二万里を読み返したりします。 京都で、模様染めに関わるキモノの仕事を30年以上続けています。 50歳の節目の時、何か新しいことを学び始めようと考えて、大学へ入りました。 お陰様で、美術と工芸の教員免許を頂きました。 ここ数年、中高校生が通う近所の美術予備校で、お手伝いもしています。 「自由に生きる」を心掛けています。 でも、1日の

    • キモノ産業の悉皆屋ってどんな仕事?

      皆さんは、魚屋さんと聞いて、どんな仕事を想像されるでしょうか。 商店街やデパ地下で、威勢のよい掛け声よろしく商いされている光景を思い浮かべる方も多いと思います。 魚屋さんは、魚を商材として販売、流通させるのが仕事です。 一般感覚では、魚を獲ることを含んでいません。 つまり、漁師さんを魚屋さんとは呼ばないということです。 小売や卸売の流通業者と、漁業や水産業者は別業種の仕事となります。 キモノ産業の中の職種に「染め屋」があります。 では、この「染め屋」については、どんな

      • きもの染め職人の腕の見分け方?

        「腕が良い作り手」とは一体どのようなものでしょう? (今回も、後染めのキモノが前提です。) ここでの「作り手」は、勿論、実際に手を動かす職工人を指します。 製造業者のことです。 (発注者としての「腕」、つまり、小売り屋、問屋、悉皆屋などの、流通業者としての「腕」については、別の機会に述べたいと思います。)   色合わせの精度は、職人の腕? 出来上がった反物を、色合わせの精度を念頭に、観察してみます。 しかしながら、出来上がった反物、それからだけでは、その色合わせの精度を見抜く

        • 200年後の伝統を目指せるか…

          きもの製作現場からvol.4§1 現場の状況から見えること 本来なら、退場を迫られるはずの、ある種のきもの職人がいます。 彼らは、何かが変わることを極端に嫌います。 自分達が今まで行ってきたことを全部肯定したい、という幼稚な考えがあるからでしょう。 今の地位を守りたいために、また、他者に必要とされるほど腕が良いという幻想を信じたいために、アート分野の従事者やセンスの良い若年層などの能力を認めようとしません。 従来通りの同じ顔ぶれで、手を取り合って、上から目線を保ちなが

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        きもの製作現場から

          きもの製作現場から vol.3

          私のモヤモヤ ~「金」って奇妙?~  「和服の金加工」 和服の製造加工法の中に、「金加工」というものがあります。 キモノの生地に金箔を貼ったり、帯の織地に金糸を使ったりして、装飾を加える加工のことです。 実際にお召しになったり、ご覧になったことがあったりして、ご存じの方も多いと思います。 長い間、キモノ製作現場いるからでしょうか。 「金加工」について、 何か剣呑な雰囲気に包まれた、不安でモヤモヤする疑問が、自分の中にはあるのです。 そんなことを整理する意味も込めて、

          きもの製作現場から vol.3

          親の介護って理解されないんですよね…

          1日の生活リズムは、親の介護(要介護5)が中心です。 長時間、束縛されます。 ……………………………………………………………… 1日の内、半分以上、介護に関わっている計算になります。 当然、趣味や仕事にかける時間は、一般の人と比べて、極端に減ります。 ライフスタイルが、自分に関系ない要因で、無理やり変更させられます。 ……………………………………………………………… 介護の中で、いつも、考えます。 家族とは何か? 社会システムとは何か? 生活とは何か?

          親の介護って理解されないんですよね…

          きもの製作現場から vol.2

          ◎言葉の使い方1.同じ日本語なのに…… キモノ製作現場に長い間います。後染めの分野です。     産業自体は、随分昔から続いていますから、大なり小なり、今でも多くの人々が従事しています。 いろいろな立場の人達と仕事で同席すれば、楽しいことも大いにあるのですが、困ったことも、時々起きます。 話し合いの途中で、気付きます。 使う言葉の意味合いが、違うのです。 その結果、コミュニケーションが歪み出します。 会話を止めてみても、戻してみても、同じところをグルグル回り出します。

          きもの製作現場から vol.2

          これって、きもの屋さんで あるある?

          きもの製作現場で… キモノ製作現場にいます。 製作依頼を受けた反物を染め上げるために、職工人の方々と、図案段階からキモノ作りに関わっています。 職先や工場で打ち合わせをしている時、たまたまその場で出会う、一般の方から尋ねられることがあります。  「キモノをお召になられないのですか?」と。  心の中で思います。(ああ…。またか。) モヤモヤした気持ちになります。 きもの製作現場での服装 仕事の時は、大抵、黒っぽい服装をしています。 黒色の綿パンかチノ。グレーかチャ

          これって、きもの屋さんで あるある?

          きもの と メディアリテラシー

          〈きもの屋さんって…〉 ネットで何でも手に入れることが出来る昨今、対面販売が根強く残っているのが、キモノ屋さんではないでしょうか。 店によっては、靴を脱いで、和室で、畳に座って、お茶でも頂きながら、お買い物をする。 こんな習慣も、まだまだ残っています。 個人的には、対面での商売があるから、キモノの商いに魅力を感じます。 人と人とが、品物を介して、膝を突き合わせる。これが楽しいからです。 膝の距離には、気持ちの身近さが実際に面前で表れますが、対面の楽しさは、直接でも、

          きもの と メディアリテラシー

          キモノ業界 あるある?

          ~ 作り手の振りをする人々~(後染め分野についての話題です) 「商売人」 と「作り手」の違い キモノ産業には、様々な業種の人がいます。 悉皆屋(染匠)さん、問屋さん、呉服屋さん。 彼らは、商売人です。 つまり、キモノを販売することを、主な仕事ととする業者です。 売り手です。 現場には、製造や加工を担う職工さん達がいます。 彼らは、作り手です。 至極普通のことです。 前者は、流通業者。  後者は、製造業者。 明らかです。 ですから、前者の中には、実際に反物を染める経

          キモノ業界 あるある?

          わたしの推し~学び直し~

          § リカレント教育 リスキリング 呉服屋さん、きもの屋さん、前売り問屋さん、悉皆屋さん、染匠さん、職人さん。 様々な業態で多くの事業者が、キモノ(後染め)作りに関わっています。 これらの方々は、どこで、キモノ作りを学んだのでしょうか。 キモノ作家さんや染めアーティストの方々は、芸大や美大で、美術、工芸、デザインを習得されています。 キモノ制作から世界観の表現まで、個性を発揮して実践、活躍されています。 一方、先ほどのキモノ産業界の方々には、すこし不安を感じます。 何十

          わたしの推し~学び直し~

              友禅を再定義してみる

          長い間キモノ作りの現場にいます。 3次元の世界を、2次元の中に誘います。 色の海から、模様が浮かび上がり出します。 3次元に纏われるとき、本当に綺麗だなぁと思います。 手描き友禅染めを、言葉で考え直してみます。 少し堅苦しいとは思いますが、今の心境も含めて捉えてみました。 よろしくお願いします。 手描き友禅の「手描き」って? § はじめに 手描き友禅とは、模様を染める技法のひとつです。 単に友禅と呼ばれる場合もあります。 もっと具体的に詳しく述べてみましょう。 (ここ

              友禅を再定義してみる

          学生のとき、キモノについて考えたこと

          基礎情報学という座学の授業がありました。 横田学先生の講義でした。 とても面白く、興味深く、全出席した記憶があります。 最後の授業は、アートにまつわる著作権やオマージュ、パロディ、二次創作について、考えるものでした。 勿論、レポート提出しなければなりません。 当時の私は、50歳です。 18歳の学生と同じ講義を受けています。 およそ、30年ぶりに書くレポートです。 グダグダになりました。 錆びついた頭に鞭を打ち、拍車をかけていたことを覚えています。 読み返してみると、変な硬さで

          学生のとき、キモノについて考えたこと

          京都のキモノ職人さんって、嘘…

          ~キモノ職人さんには、あるあるですか?~ キモノの中でも後染めの分野があります。 友禅染めや、ろうけつ染めを取り扱う範囲です。 製作現場では、友禅、糊置き、引き染め、ろうけつ、印金、図案、下絵、整理、紋上絵など、様々な職人さん達が活動されています。 それらの加工を担う職人さん達の中には、大きな会場を借りて、何十人も集まって、キモノの展示会を催す方々もおられます。 ☆☆☆☆ 会場に入ると、衣桁に掛けられたキモノが、ズラッと並べられています。 キモノには、1点ずつに、

          京都のキモノ職人さんって、嘘…

          京都の糸へんは嘘つき?

          ~キモノの流通現場で見えるヤバイこと~ 作り手は誰? キモノ、特に、後染め品の商売をしていますと、不思議なことに出会うことがあります。 (先染め品は、先に糸を染めてから織られた布、つまり織りものです。後染め品は、布に織られた後で染める品、つまり、染めものです。) 呉服屋さん。問屋さん。染匠さん。(糸へんと呼ばれることがあります。) このような方々が、自社の商材について話すとき、どう考えても意味不明な場合があるということです。 下請けや孫請けとなる外注業者さんへ、加工や

          京都の糸へんは嘘つき?

          きもの屋さん、職人さん。中高生の時、美術って好きでしたか?

          ~よりよくなってほしいという願いを込めて~ 呉服屋さん、問屋さん、職人さん。様々な方が、キモノ産業に携わっています。 私も、その産業の中にいます。ただ、随分前から、この産業界に疑問があって、モヤモヤしていました。 その疑問といいますか、個人的には問題だと思っているのですが、一度、言葉にしてみようと思いました。 そして、キモノ作りの環境が、よりよくなってほしいという願いを込めて、大きく分けて2つの話題にまとめてみました。 とりわけ自分が「後染め」と呼ばれる分野に属しています

          きもの屋さん、職人さん。中高生の時、美術って好きでしたか?