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Parallel Virtual Reality Ⅲ
「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ (崇徳院) 」は、かるたでお馴染み、小倉百人一首に収録されていて、「川の激しい流れも岩にあたると分かれてしまう。ただ、たとえ今は分かれる事になっても、またいつか必ず会いましょう。」というような意味です。見方によっては究極の恋愛宣言で、とてもロマンチックな歌であるともいえますが、分かれざるを得ないという作者の「今」がどのような状況・心境であるのかはちょっと気になるところです。
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あらためまして、年齢不詳の 瀬尾はやみ です。大学でいわゆる情報系の授業を担当しています。
何年前かは極秘ですが、私たちが学生の頃は、授業が始まる前、先生は名簿を読み上げ学生が「ハイ」と返事して出席をとっていました。今では学生カードでピピッとやりますが、その頃は、100名を超える授業だと出席をとり終わるまでに10分以上かかることもありました。それはともかく、ある授業の先生は私の名前を呼ぶたびに、「いや~~、いい名前ですね・・・」といつも点呼が中断するので、返事をしようとかまえていた 「さ」「し」「す」「せ」・・え~と・・・「そ」 何とか君(名前を忘れてしまってごめんなさい)がいつもズッコケていました。慣れてくると彼は授業ごとにズッコケパターンを少しづつ変えるようになって、次はどのパターンでくるかクラスの仲間で賭けの対象にもなっていたらしいのですが、そんな事はどうでもよくて、毎授業「瀬尾君・・・この名字を変えないために君は結婚できないね」と必ず言われるので少々ウンザリしていました。今の時代「不適切にもほどがある」と問題になりそうな発言ですが、夫婦別姓の概念さえない昭和の時代。でも、民法では結婚時、夫・妻どちらの氏(性)を名乗るかは夫婦で決めて良い事にはなってたはずですけどね。
私の授業でAIやAIの餌となる big dataの回のスライドを作るために話題の生成AIを色々と触ってみました。まず行ったのは、アルバムに貼ってあったフィルムカメラ時代の写真を全てデジタル化し、デジタルカメラ時代以降の写真データと併せて amazon photoに放り込むという作業。amazon photoのAIが今の私と同一人物が写っていると判断した756枚の写真の中で、一番若い写真は大学の学生証の写真でした。う~ん・・若い!!
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この写真をadobeのFireflyに読み込ませて証明写真を再発行してもらったところ、なぜか男女の写真が生成されました。
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その男子バージョン。よく見ると鼻や目などのパーツは現実の私のそれとよく似ている感じもします。ただ、残念なことに私好みのタイプではない。学生の頃の同級生によく似た人がいたような気もするけど、どうしても名前を思い出せないんですよね・・・。
この写真で画像検索をかけてみましたがよく似た人も含めて全くひっかかりませんでした。そりゃまぁ生成AIで生成された画像ですので「なんかこんな人いるよね」という感じではあるけれど、私が存在しているタイムラインにこの人は存在していないのでしょう。もっとも、タイプでないとはいえ「われても末に 逢はむとぞ思ふ」という気持ちがないわけではありませんが・・・
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アルバムに貼ってあった私の卒論発表会の時の写真が出てきて、デジタル化しました。まだまだ若い・・・。もと写真がかなり変色していましたが、発表が終わったばかりタイミングで、ホッとした表情というよりも、ちょっとドヤ顔。先日見つけたPhotoshopのAIフィルター(ニューラルフィルター)を使って、このドヤ顔をなんとかできないか試してみました。
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う~ん、拡大するとちょっと変なところもあり、あいかわらずドヤ顔のままのような気もしますが、表情を少し変えることができました。
私のこの卒論発表会の時の写真をベースにして、FireFlyで新たな写真を生成してみると、例によって男性の写真も生成されました。
生成される写真は多くの場合イケメン化、美女化されているような気がするのですが、何人か生成されたなかで、お気に入りのイケメン君の服装の色がちょっと変でした。そこで写真の体の部分だけ囲って「この構図のままジャケットをキャメルブレザーに変えてください」とphotoshopにお願いしてみたところ・・・
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指の長さや手の位置がおかしい等々、突っ込みどころは色々とあるのですが、彼の服を着替えさせることにあっさりと成功しました。
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このキャメルブレザーバージョン。まず首と指が微妙に長いのと、両手の手の位置や向きがずれていて、指の本数も違っています。
気をとりなおして、正装させてくださいとお願いしてみると・・・・
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キャメルブレザー版よりもまだましになりましたが、よく観察すると突っ込みどころが残っています。一方で、おかしいという所が残っていて若干の違和感はありますが、知らない人が見たら本物だと騙されてしまいそうな気もします。
さて、PhotoshopのAIフィルター等を使って「もと写真」を変換しながら色々と遊んでみました。生成機能がこれだけリアルになると、そもそもベースとして使っている写真が「もと写真」なのか「生成された写真」なのか、さらに、それらの写真をAI技術を使って修正したものか見分けるのが困難な場合があります。もとがある場合、本物(もと)の側から見たら生成物は本物とは違うという意味では偽物になります。一方で、生成AIで「生成された写真」は再現性がなく非可逆的。一度生成されたら最後、それをオリジナルに戻すことができません。つまり、生成されたものは偽物というよりも、お前は偽物だと訴える本物がないという意味で、本物と並行して存在できる「新たな本物=別物」と言うことができるのかもしれません。
沢山の写真を載せましたが、私のいる現実世界から見ると本物としての「もと写真」は冒頭の写真と、学生証の写真と、卒論発表会の写真の3枚です。
これらの「もと写真」から何枚かの男性が生成されたわけですが、今、私が生きている現実世界のストリーム(タイムライン)と並行して彼らの現実世界のストリームが存在し得るとしたら・・・。彼らから見ると私自身が生成AIの成果物ということになるのかもしれません。
FactとFake。どっちのFが本当か・・・