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東日本大震災と原発事故から12年。被災地の現在地を知る旅〜大熊・双葉・浪江〜

<旅の背景>
これまでに私たちは、食や文化を中心に、相馬地域の現在に目を向けたツアーを企画してきた。今回は、この地域の持つ過去と、未来に焦点を当て、現地の方々の案内で見ていくこととなった。題して「お殿様と巡る旅。標葉郡 大熊・双葉・浪江編」。
東日本大震災と津波、その後の原発事故から12年が経とうとする現地に足を運び、メディアでは伝わりきらない当時の様子と現在の状況をこの目で見て知ることができた。

旅の始まりは大野駅から。福島第一原子力発電所から最も近い駅である。ぽつんと立つ駅舎周辺はいまだ更地で、震災当時の風景が未だ広がっている。廃墟となっている保育所や、最近になって新たに設置された復興拠点のKUMAPREなどをまわりながら、深刻な震災による被害状況と、そこから少しずつ生活を取り戻そうとする住民の様子を見学した。

柴栄水産・請戸漁港を見学。常磐ものの魚を堪能。

街に並ぶアートを眺めながら車をすすめ、浪江町・請戸漁港で仲卸を営む柴栄水産へ。
親潮と黒潮がぶつかり合う豊かな海を持ち、”常磐もの”ブランドとして栄えた請戸漁港には、震災前は20社を超える仲卸が倉庫を構えていたという。津波で全てが流され、原子力発電所も近いことから長らく操業停止になっていたが、2020年から段階的に試験操業が始まっている。
その請戸漁港で、仲卸として唯一残って再開をしている柴栄水産の柴孝一社長の案内で、水産加工施設を見学した。
1匹ずつトレイに入れられ並べられている水槽には、ヒラメ、トラフグなど高級魚が所狭しと泳いでいた。目の前の請戸漁港で水揚げされた”常磐もの”の活魚は、築地市場を経て銀座をはじめとした都内の高級店で流通するという。

魚へのこだわりを語る柴強社長

<info>
有限会社 柴栄水産
〒979-1522 福島県双葉郡浪江町大字請戸字古川15-7
TEL:0240-23-5411
WEBサイト:http://www.shibaei.co.jp/ 

夕食は参加者も調理を手分けしながら、柴栄水産で購入したアンコウの鍋を食べた。アンコウは1匹分の肝をまるまる火にかけて香ばしく炒めて火を通し、味噌とあわせて濃厚なスープに仕上げた。

贅沢にアンコウを使った鍋…!

美味しすぎる。haccobaのベリーのお酒や、ぷくぷく醸造のお酒もすすんだ。同じ請戸でとれた魚のお刺身や、地元の野菜を使った料理も並び、素材そのものの旨みに舌鼓を打ちながら、あっという間に食べ終えた。

いちごはじめの季節!こだわりのいちご農園見学。

南相馬市原町区の郊外、水田の広がる地域の中に立ち並ぶハウスではちょうどイチゴ狩りが解禁を迎える頃。伊賀いちご園は、無農薬栽培によるいちごが人気。農園主の伊賀さんに、水や肥料のブレンドへのこだわり、品種にあった味わいの生きる育て方について話を伺った。

3種類のイチゴをいざ、食べ比べ!(左からとちおとめ・ふくはる香・章姫)

報道されない、震災時の家畜の話 

旅の最後に、震災時に農作物や家畜の対処にあたった元南相馬市職員、發田栄一さんに被災直後の話を伺った。
原子力発電所から20km圏内にあたる警戒区域については、家畜の移動が禁止されたため、多くの牛、豚、馬が取り残されることとなったという。

大半の牛や豚が取り残されてしまったことから、人のいない町を家畜が行き来し、家の中に入り込むなどの被害が相次いだ。
一方で、牛舎を抜け出せなかった牛や馬たちは餌をあたえられることなくやせ衰えていった。隣で衰弱死した牛から流れ出した血をすすって、生き延びた牛もいたという。動物の遺体から発せられる猛烈な臭いと大量のハエが飛び交う様子は、いまだに脳裏に焼きついているそうだ。

当時の様子を語ってくださった發田さん

家畜だけではない。沿岸被災地の捜索は難航し、遺体が転がる景色をまのあたりにしたり、枯れ木の枝だと思ったものが、人の腕で、地面から苦しそうに空に向かって突き上げられている、といった光景がいたるところで広がっていたそうだ。
時折涙を流しながら、当時の状況を語る發田さんの姿に、参加者も涙を流しながら話をきいた。

その後も市職員として復興に全力で取り組んだ發田さんは現在、株式会社荻の杜として耕作放棄地を活用した野菜づくりに取り組んでいるという。
”持続可能な農業”を掲げ、小規模ながら地域の人を巻き込み、コミュニティづくりの一環にもなっているそうだ。
参加者は最後に、發田さんが軽トラで運んできた南相馬名産のブロッコリーや、えごまなどを購入し、交流を楽しんだ。

【開催決定!】2023の相馬野馬追ツアー、仮募集開始
7月29(土)・30日(日)
行程などは調整中ですが、地元の方と協力し、観光ツアーではなかなか入れない場所をご案内する予定です!
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