【ミドリ×ワタル】ルールをつくらないからうまくいく。お互いバリバリ仕事をしたい夫婦のリアルな「ワーク・イン・ライフ」
子育てと向き合う「パートナーシップ」にスポットを当てる連載。今回は、Netflixで人気を博したリアリティショー「ラブ・イズ・ブラインドJAPAN」にて結婚した“ミタル”こと、ミドリさん&ワタルさんご夫妻に登場いただきました。お互いハードに働く二人が、どのようなコミュニケーションで家庭を運営しているのか、お話を伺います。
(取材+文:菅原さくら)
妊娠初期には“あるある”なケンカも
――お二人が出演されていた「ラブ・イズ・ブラインドJAPAN」は、お互いの顔や姿が見えない「ポッド」で会話し、カップルになってから初対面を果たした相手と婚約するリアリティショーでした。無事に結婚して番組が終了したあと、どのような新婚生活を過ごし、お子さんについてはどのように考えていましたか?
ワタル:僕らの場合は出会いから結婚までがかなり特殊なので、新婚といっても付き合いたてなんですよね。だからまずは愛を育もうということで、お互いに好きな仕事をバリバリやりつつも、週一回は一緒に外食するような時間を設けていました。この生活スタイルを変えるつもりはなかったけれど、いつか子どもというピースが自然にハマるときが来たとしたらいいな、と考えていたんです。
ミドリ:年齢的なことを考えれば、子どもは早く授かれたらうれしいなとは思っていました。でも、ワタルさんと同様に、まずは二人の時間を大切にしたいなと思っていましたね。
ワタル:ただ、僕は再婚なこともあって、「ラブ・イズ・ブラインド」に出るときにはすでにある程度の腹をくくっていました。結婚するなら、そういうこともあるだろうと。だから、結婚して半年足らずで授かったときには、まだ若いミドリのほうが動揺は大きかったんじゃないかと思います。
ミドリ:そうだね。でも、仕事としてはいったん落ち着いたタイミングだったし、妊娠がわかった数週間後にはすっかりポジティブな気持ちになっていました。ワタルさんと一緒にエコーを見られるようになってからは、これからの暮らしがどう変わっていくのかよくわからないなりに、赤ちゃんに会えるのがすごく楽しみになっていったんです。
――妊娠中、お二人のあいだに何かトラブルはあったりしましたか?
ミドリ:妊娠初期には多少ケンカしましたね。私は以前のようには飲みに行けないですから、できればワタルさんにも早く帰ってきてほしいし、つらいときはごはんをつくったりもしてほしい。なのに、ワタルさんはすぐには生活リズムを変えてくれなくて、呼ばれた飲み会には率先して行っていましたし……。ただ、妊娠するまでは私もそうやって出歩いていたし、相手がどこで何をしていようと一切気にならなかったんです。だから、急に言うことが変わった私に、ワタルさんは戸惑ったと思います。
ワタル:僕は時間を拘束されるコミュニケーションが得意ではなくて……それまでずっとお互いの個人行動を尊重できていたはずなのに「ミドリもそうなっちゃうの!?」って(苦笑)。でも、妊娠以降の生活はお互いにとって“未開の地”なんですよね。まずは僕がもっと話を聞いて、解決策を考えればよかった。
ミドリ:私がすごい勢いで文句を言うから、ワタルさんも理解するまで大変だったと思うよ。でも、実際に子どもが生まれたらとにかくかわいくて、ケンカをしても「言い合いをするよりも早く解決しようよ」という方向に進めるようになり、ヒートアップすることはほとんどなくなりました。
夫婦の暮らしには「ルールをつくらない」がルール
――これまで、家事育児はどのように分担されてきましたか?
ワタル:産前産後は、あらゆる家事をすべて僕が引き取るようにしていました。妊娠・出産って、我々メンズにはどうしても理解できない領域なんですよね。ホルモンバランスが崩れて意味もなくイラついたり泣きたくなったりすることもあるんだろうし、だったらできるだけ作業を引き取って、彼女がほっとできる余白をつくってあげなきゃいけないな、と。
それから「夫婦生活ではルールを作らない」というマイルールがあるんです。「掃除は僕」「洗濯はあなた」とかって決めちゃうと、相手がやっていないときにイライラするし、責める理由になっちゃう。だったら、ちょっといやな言い方かもしれないけど、いっそ期待をしないほうがいい。「逃げ恥」みたいにきっちり役割分担すれば、確かに揉めごとは少なくて快適かもしれないけれど、本当にお互いのためにはなっていないような気がして……。トラブルがあったときのためには契約書を巻いておくほうがいいとか、事前の取り決めが大事だって理屈も、理解はできるんですよ。でも、夫婦生活については「どうすればお互いが過ごしやすいか」を都度考えて行動するほうが、幸せになれるんじゃないかなと思うんです。そんな話をミドリにしたら賛同してくれて、以降僕らはそのスタンスで生活を営んでいます。
ミドリ:私はワタルさんのこの考え方が、すごくいいなと思っています。お互いのことを思いやりながらフレキシブルにやれるから、家事育児の分担でケンカになることがありません。そして産前産後に限らず、基本的にワタルさんが多くやってくれる……(笑)。
ワタル:そうだね(笑)。でも、やれる人や気づいた人がやればいいんだよ。とくに産前産後のミドリは、リアリティショーに出て急に周りの状況が変わったうえに結婚して妊娠して出産して、これからどうなっていくのか全然わからなかったわけで。そんなの、彼女のほうが絶対に不安が大きいですもんね。僕はやることをどんどん巻き取りつつ、どっしり構えていることが大切かなって考えてました。
――出会ってからまだ短いのに、どうしてそんな信頼関係が築けたんだと思いますか?
ワタル:一緒に過ごした期間は短いけれど、顔の見えない「ポッド」での時間を通じて、ミドリのコミュニケーションスタイルを理解できていたことが大きいんじゃないかなと思います。ときどき言葉尻が危ういことはあるけど(笑)、ちゃんと本質を言おうとしてくれる。
ミドリ:私、なにも隠さないで100%話すもんね。
ワタル:変に取り繕うことがないよね。しんどいとき、心配かけないようにいい意味でつく「大丈夫だよ」みたいな嘘もない。ミドリが話す言葉の裏の意味を考えたり、察したりする必要がないから、コミュニケーションが早くて、ちゃんと対話できるんだと思います。
お互いの「仕事スタイル」を尊重して、助け合う
――ミドリさんは妊娠・出産当時、シリコンバレー発のベンチャー企業「b8ta(ベータ)」の日本法人立ち上げメンバーとして働かれていました。産前産後は、どのようにお仕事していたんでしょうか。
ミドリ:妊娠中は幸いつわりもほとんどなくて、順調でした。チームを持っていたけれど、自分で時間をコントロールできるポジションでもあったため、お腹が大きくなってつらさが増してからは、働き方もうまく調整できていましたね。ただ、もっとフレキシブルにいろんな仕事をやりたいという思いがあって、妊娠中に自分の会社を立ち上げました。。娘が保育園に入ってからの数ヶ月は、自分の会社で好きな仕事をして、夕方からは娘とものんびり過ごして、とても幸せな育児生活でした。
その後は自分の会社を残しつつ、b8taを離れ、別の会社に転職。いまはもう、忙しさとの戦いです。出産するまで170%くらいの出力で働き続けていたから、子どもを18時までに迎えに行かなきゃいけなくなってからも、頭と身体が昔のマインドのままなんですよね。だから、どうしても物理的に時間が足りなくて……。もちろん娘ともっと一緒に過ごしたいという葛藤もあるし、いまが一番しんどいです。
――ワタルさんもリクルートからキャリアを始め、以降はGREEや17LIVEといったスタートアップ界隈でハードにお仕事をされていて、お忙しいことと思います。
ワタル:ただ、僕は仕事ってどこまでも調整可能なものだと思っているんです。もちろん登壇とか物理的にずらせない仕事もあるけれど、通常業務は加減できる。たとえば、ミドリは提案資料とか個人のPRの仕事もめちゃくちゃ作り込むし、いつも170%満足のいく状態で出しているけど、僕はそこまで頑張れないので70%で提出しちゃいますね。
ミドリ:そんなかっこいいこと言って、ワタルさんだって実際はめちゃくちゃ働いてるじゃん!
ワタル:そう?(笑)もちろん70%での提出が許されるような周りとの関係値作りも大事ですし、常に時間にバッファを持ちながら働けるように事前準備を尽くしてます。そうすれば、突発的に娘が熱を出してもなんとか対応できるというか。ただ、僕はそういう70%のスタイルで仕事をするけれど、ミドリはミドリの気が済むまで、170%までやり切ればいいと常に思ってるよ。
ミドリ:……ワタルさんの良いところってそこなんですよね。私がやることに文句を言わないし、信じてくれる。娘を産んでからはさすがに170%でできないことも増えてきたけれど、それでもやれるところまでこだわりたいし、そのために遅くまで働くことも多いんです。そんな私に、普通だったら「そこまで頑張らなくていいよ」とか「家庭のことも優先したら?」とか言ってもおかしくないのに、ワタルさんは言わない。それどころか、私の代わりに8割くらい家事を引き取ってくれていて、彼の負担は増えているのに「俺がやってる」感を出さないんです。本当に支えられています。
ワタル:だから、そのときそのときで余裕のあるほうがやればいいんだって。
――いい夫が過ぎる……。どうしてそのスタンスでいられるんですか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?