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ムーンライト(Netflix)を観て

かなり、泣いた。

シナリオからして意図的に人を泣かせるために作った映画ではないだろうとなんとなく思う。ただ少年が大人になるまで成長していく姿を淡々と映し出すドキュメンタリー風の映画だ。しかし、画面の彼はいつも何故だか痛々しい。最初から最後まで、いくら歳を取っても繊細で今にも壊れそうな感じの『男の子』がずっと映画の雰囲気をひっそりとさせていた。画面越しの彼はただひたすら俯きがちで目を合わせようとしない。そして彼のその脆さが、最後までひどく私の胸をざわつかせた。

より正しく言おうとするならば、壊れそうというよりは、もうすでに壊れてしまっているようだった。貧困地区で育った、麻薬中毒のシングルマザーと暮らす黒人の少年。取り囲む世界は、もう彼の悩みや言葉を受け入れる隙など無かったし彼の多様性を受け入れるには狭すぎた。

やがて年月と共に彼は自分なりに『変わろう』とし、実際に実現する。どう変わったかの善悪は置いておいて、それは環境や現状から逃げるための彼の精一杯の努力だったに違いない。しかし彼は、老いた母の言葉にふと涙してしまう。

(人は突然、今まで憎んできた誰かを許さなければならない、と悟る日が来るのかもしれない。もう、そうするしか進む道は無いのだと。気が抜けたように、途方に暮れたように、あきらめたように。その人から与えられた傷は一生癒えないのに、ふいに放たれた一言が急に染みてしまって、傷の深さに気づいてしまい、涙が出てしょうがなかったりするのだ、きっと。)

そう思いながら、ひとり明るい部屋の中で小さな携帯をのぞき込みながら泣いていた(笑)。感動というよりは彼の悲しみが画面を超えて私の胸にとっぷりと、注がれてしまった感じだった。

最後に彼がどのような自分らしくいられる場所を見つけるのか、ぜひ観てもらえたらと思う。


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