山火事の後一番に咲く花【Yukon Canoeing Trip_Day8】
ゴール地点であるCarmacksのキャンプ場まではもうすぐそこだった。
この日は随分ゆったりと進んでいたので、余裕があった。数日前に立ち寄ったBig Sarmon villageのことを思い出していた。
砂浜にカヌーを上陸させて、獣道を辿って少し進むと、不思議な空間に辿り着く。原住民が暮らしていた跡が残っている村を見つけた。もう随分使われてなさそうなログキャビンを間近で見る。当時の暮らしの息遣いが聞こえる気がする。
壊れかけたキャビンの中に入ると、いつのか分からない割れたウイスキーの瓶が置いてあったり、旅人の落書きが残されていたり、確実に過ぎている時間と共に上書きはされているものの、ここの空気はずっと止まったままな気がする。
朽ちて壊れて半分も形を成さないログキャビンからは、Fireweedが咲いていた。この花は、山火事の後、どの植物よりも先に芽を出し花を咲かせるピンク色の花。そんな力強いストーリーから何かと惹かれてしまう。原住民の間ではハーブティとしても飲まれていて、草っぽさとさっぱりした渋みがあって心穏やかになる味で私は好き。
そして、山火事の跡の森もよく見かけた。
木々が焼けてしまっても、まずはFireweedが花を咲かせ、そして、スプルースやヒバといった針葉樹がまた芽を出し始める。そして、次第に大きくなり、いつかは、山火事の跡が分からないくらいの豊かな森へと再生していく。その姿を間近で眺めていた。
植物とは、一体何者なんだろう。ここでも彼らは淡々と生命の循環を繰り返している。あんなに小さな種一粒に、全ての情報を詰め込んで、社会の変化に揺らぐことなく、淡々と生き続ける姿は神秘的だ。ピントが合わなければ、通り過ぎてたはずだけど、どうも私は植物の声が気になってしまう。また一つ私の中で、Fireweedが花を咲かせていた。