ビートルズの曲で興味深い、コードとメロディーの関係1(I'm Down)
『ザ・ビートルズ:Get Back』がディズニープラスで公開されるということで、ビートルズの曲について少し書きます。
ビートルズ好きな人は言うまでもなく大変多く、私もその一人ですが、ファンは熱くなりやすく、ネットでの記事を見ても「この曲のコード進行はすごい!」みたいに書いてあるものも、実は別に新しいものではなかったりなんてこともありますね。というわけで今回書くこともどこまで適切か定かではありません。また今回書くことは普通に音楽理論で言えば全く問題のないところです。しかし面白い。
前から面白いなと思ってる曲としてI'm Downを。
これはロックンロールナンバーで、こういうのはだいたいブルース的な音使いをするわけで、この曲もだいたいそうなのです。しかし非常に特徴的なのが冒頭が(♮)9thの音で始まるところですね。下記の譜では2と書いてる音です。
どの音もこのコードの上で普通に使われる音ですし、(♮)9thはこういうブルース的なコードのテンションとしては非常によく使われる音です。しかしブルース的な歌で(♮)9thがメロディーとしてここまで主張して使われるのはそれまでのブルースやロックンロールでも聴いたことがないかもしれません。あったら教えてほしいです。
ちなみにこの曲はビートルズがライブの最後の曲としてリトル・リチャードの「ロングトールサリー」を演奏していたのの代わりとして作られたということで比較されることが多いですしょうか。
この曲の冒頭は、アウフタクト部分を省くとこうなります。
冒頭で4拍またはそれ近く同じ音を続ける点などはそっくりですね。ビートルズの場合は(♮)9thあるいは(♮)2ndだったわけですが、ロングトールサリーでは、テンションとして書くなら#9th、メロディーとして書くなら♭3rdの音となります。この曲のFという調性の中ではブルーノートに当たります。
いずれにしてもブルースやロックンロールでこの伴奏でこの音を歌うことは非常によくある。ということです。ちなみにこの音をFにコードで表すと#9thということになりまして、ジミヘンコードなどで使われるますが一般的なブルースではそのコードをギターで押さえたりはしないでしょう。
逆に「アイム・ダウン」ではコードのテンションとしては多用されるがメロディーではあまり多用されない(♮)9thを歌うという、ある意味で逆転現象が起きてます。
まとめますと、リトル・リチャードの曲の冒頭のメロディーはよくあるが、ビートルズの曲の冒頭のメロディーは聴いたことがないってことです。昔から非常に興味深いなと思っていたのを思い起こして書きました。
ところであまり関係ないのですが、メロディーが(♮)9thということで思い出したのが次の曲。といっても歌のとこではなく。歌の間のキメみたいなとこのフレーズです。ただの分散和音なのですが、最後の音がテンションであることもあり印象的です。