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まちがいさがし③

https://note.com/solocamp2030/n/n41e3af07b2a8

↑短編小説の続きです。

暫くそのまま片付けをしていたものの、長らく放置していた室内を整理整頓された状態に持っていくのは至難の業だった。眞壁の心を折ったのは、床に放置してあった賞味期限切れの惣菜パンを拾い上げたところ、包装のビニールの裏側にびっしりと昆虫の卵が貼り付いていたことだった。よく見ると、無数の蛆虫がビニールの上を這いずり回っていた。
「うわぁぁぁ」
眞壁は惣菜パンを床に投げつけると、そのまま床にしゃがみ込んだ。もう、なんだか全てがどうでも良くなってきた。土台、片付けられない体質の自分が1人で暮らしていくこと自体に無理があるのだ。
先日読んでいたネットニュースの記事が頭をよぎる。その記事には、最近若者の孤独死が増えている、という内容だった。しかも、孤独死をした若い男性の部屋は足の踏み場もないほどゴミが散乱していた。こういうケースを、「セルフネグレクト」というらしい。清潔な部屋で暮らし、自分自身の健康管理をするという善管注意義務を怠った、というわけだ。眞壁は自分がそうなるのも時間の問題だと思った。片付けという行為の、完成形がそもそも頭の中に思い描けない。この散らかりきって、挙げ句の果てには蛆虫が沸いているようなゴミも落ちている部屋の片付けを何を持って終わりにしたらいいかが分からない。眞壁には頼る人も思いつかなかった。
友人はほぼ居ないも同然だったし、親からは勘当されたようなものなので頼ることができない。
詰んだ。このまま、汚物に塗れて死に晒すのか。
嫌だが、もう疲れたし何もかもどうでもいい。
思考がグルグルと悲観的な方向へループしていく。
俺はどうしたらいいんだ。眞壁は薄暗い部屋の中で頭を抱えた。
「ピンポーン」
インターフォンの音がする。居留守を決め込もうとするも、何度もインターフォンが鳴った為眞壁は渋々ドアのピンホールから外を覗いた。
すると、そこには見覚えのある人物が立っていた。


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