「花束みたいな恋をした」を鑑賞して

少し前になるが、「花束みたいな恋をした」という映画を鑑賞した。結論から言うとすごく心に刺さる内容だった。何がそんなに心に残ったのかを今回は紐解いていきたい。

本作を語る上で欠かせないのは劇中に登場するサブカルチャーの数々だと思う。正直大半は分からないものばかりだったが、押井守監督がすごい人だというのは分かったし所々わかるものもあった。パズドラは自分はやらなかったが当時は皆やっていたなとかそういったことも思い出した。

最近自分が触れる本なり映画なりは、理想を捨てて現実を受け入れ社会の一員になっていく系のものが多い。20代後半はそういった内容が心に刺さる時期なのだろう。この花束みたいな恋をした、も同様である。本作の主人公である麦は、イラストを描くことで少ない収入を稼いでいて、いつかはそれ一本で食べていくことを夢見ている。彼女である絹はその夢を応援しつつ、自身は歯科助手という堅実な仕事に就いている。二人の共通点はヴィレッジヴァンガードとかに置いて有りそうなサブカルチャー系の本や漫画、音楽などが好きなこと。この映画を見ていて一番悲しい気持ちになったのは、主人公である麦がだんだんとサブカルチャーへの興味を失っていってしまうことだ。生活の為に始めた正社員の仕事が軌道に乗り、建前では二人の生活の為と言いつつ実際は仕事自体が楽しくなってしまったのだろう。そうして仕事で疲れ果てた状態で有村架純と口論している菅田将暉の表情がまるで自分自身を見ているかのようだった。

誰にでもある普遍的な問題。それは夢を追うか現実を受け入れ大人になるかの二択である。一見後者の方が正解に思えるが果たしてそうだろうか。少なくともこの映画における麦の選択が良かったとは思えない。自分も、身近な人の意思を尊重する為にやりたいことを我慢してしまう時はある。けど実際は、好きなものに対して感じる熱量から背を向けてしまっているだけなんじゃないかと思ったりもする。大人なんだから色々と諦めなければならない、なんてもっともらしい理屈をつけず、やりたいこととやるべきことを両立させる面白い大人になりたいとこの映画を見て強く感じられた。これだけ色々なことを考えることができた「花束みたいな恋をした」は本当に良い映画なので、まだ御覧になられていない方が居たらぜひ見てみてください!

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