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絶景温泉200#18【湯来温泉・湯来ロッジ】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

第18回は、湯来温泉・湯来ロッジ(広島県)。

広島県は観光スポットも自然も多いが、意外なことに温泉資源に乏しい。地元の人以外で、「広島の温泉」と聞いて1つでも温泉地の名が浮かぶ人はそれほどいないのではなかろうか。全国的に名の知れた温泉地が存在しない証しである。

もともと温泉が湧きにくい土地ということもあり、湧出していても泉温が低く、そのほとんどが加温循環して利用されている。そのため湯の質にこだわる人は、どうしても隣接する岡山や山口、島根の温泉に目が向いてしまう。

だが、広島市には源泉かけ流しの絶景温泉が存在する。まさに灯台下暗し、である。湯来温泉は、広島市の中心部から車で1時間弱という立地から「広島の奥座敷」と呼ばれる。

歴史は古く、開湯は1500年前(大同年間)とされる。白鷺が傷を癒しているところを発見したという伝説が残る。慶長年間(1596年 - 1615年)には、芸陽唯一の温泉場として賑わったという。

現在、湯来温泉で営業している宿は2軒。レトロな温泉街は寂しさも漂う。かつては13軒もの宿が並び、賑わっていたというから、温泉街の景色もずいぶん変わってしまったのだろう。

湯来ロッジ

そんな温泉街の一角を占める「国民宿舎湯来ロッジ」の周辺だけは活気がある。目の前を流れる水内川では、家族連れや子どもたちが川遊びに興じ、見ているだけで涼やかだ。川は鮎釣りの名所でもある

広島市とはいえ、このエリアは自然豊かで、四季の移ろいを体感できるロケーション。春は桜、夏は蛍、秋は紅葉、冬は雪景色を見られることもあるという。ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルという3種のホタルが競演する光景は一見の価値がある。

湯来ロッジの露天風呂は水内川に面し、湯船から望む景色はまるで一枚の絵画のよう。季節によって、四季折々の風景を楽しめる。浴室の雰囲気もよく、1泊の滞在中4回も入浴するほど気に入った。

湯来ロッジの露天風呂

つるつるとした肌触りが特徴の透明湯は28℃の単純弱放射能泉。加温した源泉をかけ流している。一般的に泉温が低い源泉は循環ろ過をして使い回すケースが多いもの。泉質に対するこだわりに好感がもてる。

正直に言うと、湯来ロッジの露天風呂よりも景色にすぐれた温泉は他にもある。だが、温泉資源に乏しい広島の中にあって、源泉かけ流しにこだわっている姿勢も含めて、「絶景温泉」と呼びたい。

なお、湯来温泉から車で10分ほどの距離には、広島藩主・浅野公の湯治場として栄えた由緒ある古湯・湯の山温泉がある。

日帰り入浴施設「湯の山温泉館」には、約4メートルの高さの打たせ湯があり、23.5℃の冷泉を頭から浴びることができる。夏場でも冷たく感じるが、心身ともシャキッと爽快な気分になる名湯である。湯来温泉と合わせて訪ねたい。

湯の山温泉

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高橋一喜|温泉ライター
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