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「ソロ温泉」にやさしい宿7つの共通点

ひと昔前に比べて、圧倒的にひとり旅のハードルは低くなった。10年くらい前までは、女性がひとりで旅館に泊まっている姿はめったに見なかったが、今は当たり前のように、女性の一人旅を目にする。

その背景には、もちろんひとり旅を厭わない人が増えたこともあるが、ひとり旅を受け入れる宿が増え、旅の選択肢が増えたことも大きな要因である。

とはいえ、依然としてひとり旅を受け付けていない宿もあるし、場合によっては宿で肩身の狭い思いをすることもある。

ソロ温泉を愛する人にとって「やさしい宿」とはどんな宿だろうか。その共通点をまとめてみた。

①常時一人泊を受け付けている

ひとり泊を受け付ける宿はたしかに増えているが、そうはいってもひとり泊であることで、一気に選択肢が狭まるのは事実である。試しに「じゃらん」や「楽天トラベル」などで、宿泊人数を2人から1人に変更すると、一気に検索にヒットする数が減る。

たとえば、ある予約サイトで熱海エリアを検索すると、2人泊の場合は123件ヒットしたのに対し、1人泊の場合は89件だった。この数字を多いととるか少ないととるかは微妙なところだ。昔に比べれば圧倒的にひとり泊でも泊まれる宿は増えた。

だが、ある程度人気のある宿は「1人」を選択した時点で検索結果から消えてしまう。人気のある宿はひとり泊を受け入れなくても部屋が埋まるのだから仕方ないが、「ここ、ひとりOKだったらなあ」と地団太を踏むこともしばしばある。

それでも、予約数が少ない日や閑散期など限定でひとり泊を受け付けてくれる人気宿もある。そういう宿はひとり旅にやさしいといえるだろう。

なお、予約サイトに掲載されていないような家族経営の小さな宿は、多くがひとり泊OKである。電話で問い合わせる必要はあるが、お目当ての宿があれば気軽に相談してみるといいだろう。

②料金があまり変わらない

宿の立場になれば、ひとり旅の人を泊めるよりも、グループや団体客を泊めたほうが効率的に利益を上げることができる。ひとり客を泊めるのも2人客を泊めるのも用意する部屋や料理、手間はそれほど変わらないのに、売上は倍違うのだから当然だ。

したがって、ひとり泊を受け入れている宿でも、その宿泊料金は割高に設定されているケースが多い。場合によっては料理や部屋は一緒でも、2人泊の倍近い料金を請求されることもある。どんなに泊まってみたい宿でも、それだけ割高になると、二の足を踏まざるをえない。

宿の事情は理解できるが、それでも良心的な価格設定をしてくれている宿もある。同一料金はめったにないが、1000円~3000円くらいしか価格差がない宿はかなり良心的で、一人客にやさしいといえる。そういう宿は嬉々として予約したくなる。

③規模が大きすぎない

宿のサイズ感は一人客の居心地を左右する要素のひとつだ。100部屋以上あるような大型ホテルや旅館は、当然ながら宿泊客が多くなり、部屋以外のスペースではほぼ他の宿泊客と出くわすことになる。家族連れやカップルが楽しそうにしている姿は気にならない人はよいが、目に付いてしまう人はどうしても心が落ち着かないだろう。

また、一人の時間を愉しむというソロ温泉のコンセプトの観点から言っても、浴室が常に人でいっぱいである状態は好ましいとは言えない。

ソロ温泉が目的なら、10室未満の小規模の宿がベストであり、少なくと20室以下の宿を選びたい。

④「ぼっち飯」に配慮がある

以前の記事でも書いているが、ひとり旅の不安として食事の問題を挙げる人は少なくない。場数を踏めば「ぼっち飯」にも慣れるものだが、それが苦痛でソロ温泉を断念する人もいる。

実際、広間や食事会場に一堂に会するようなケースで、ひとり客が自分だけだとさびしい思いをする。隣のテーブルが賑やかなグループや家族連れだったりすると、いよいよ気まずい。

だが、ひとり旅にやさしい宿であれば、それなりの配慮をしてくれる。もちろん部屋食なら気楽に食事を楽しめるが、部屋食が叶わない場合でも、別の個室を用意してくれたり、仕切りのあるスペースを提供してくれるところもある。また、大広間であってもグループ客から遠い席や視界に入りにくい席を用意してくれたりする

ひとり客なので特段のサービスは求めないが、こうしてぼっち飯への心遣いをしてくれる宿は好印象である。

⑤プランの選択肢が多い

ひとり客を受け付けてくれている宿であっても、プランが限定されているケースがしばしばある。たとえば、「ビジネスプラン」「ひとり旅プラン」などが典型的である。

これらのプランは、価格もリーズナブルに抑えられている代わりに、その扱いも淡泊であることが多い。

料理は定食風の簡素なものだったり、狭い部屋限定だったりする。この場合、「仕事などの事情があってひとりで泊まるのだから他の客のように快適さや豪華な料理は求めていない」という宿側の決めつけがあるように思える。

先日、ある温泉自慢の宿に泊まろうとしたのだが、ひとり客は料理の数が少ない簡易プランしか選べず、通常プランの料理よりも数段落ちる内容だった。せっかく宿泊するなら少々割高でも地のおいしいものをいただきたかったので、あえなく他の宿を探すこととなった。

ソロ温泉に出かける人のニーズはさまざまだ。「温泉さえ入れれば安いに越したことはない」という人もいれば、「せっかくのひとり旅なのだから少々値が張っても贅沢したい」という人もいる。

だから、「ひとり旅だから」とプランを限定せず、部屋や料理のグレードアップも選択できるように配慮している宿はひとり客にやさしいといえるだろう。

⑥適度な距離感を保ってくれる

私の場合、ソロ温泉は忙しない日常や人間関係から距離をとるのが目的のひとつである。

だから、宿でも静かにひとりの時間を過ごせる環境がありがたい。何かと世話を焼いてくれるような仲居さんは求めていないし、最初から部屋に布団が敷かれていて、誰も部屋に入ってこないほうが気楽である。

とはいえ、あまりに素っ気ないのも寂しさを感じる。私は食事を出してくれるときや、チェックイン、チェックアウトのときなど、ひと言ふた言、宿の人と会話を交わすようにしている。

だいたいは温泉や料理の感想や質問だが、このときに思いがけない情報を聞けたり、話が盛り上がったりすることがある。ひとり旅だとそもそも会話をする場面が少ないので、このような機会は貴重であるし、旅の思い出にもなる。再訪したくなるのも、主人や女将との会話が印象に残っている宿であることが多い

一方で、話しかけても杓子定規の素っ気ない対応のこともある。それは宿のスタッフのキャラクターや接客スタンスの問題かもしれないが、少し寂しい。

これはひとり旅する側のわがままかもしれないが、心地よい距離感で対応してくれる宿は、やはりソロ温泉にやさしい宿といえるだろう。

⑦パブリックスペースの居心地が良い

ソロ温泉の場合、おもに自分の部屋と浴室を往復することとなるが、できることなら居心地のよいパブリックスペースがあると、一人でも部屋に籠りきりになることなく、気分転換ができる。

パブリックスペースには、ロビー、ライブラリー、団らん室、バーなどさまざまな形態があるが、豪華さや洗練度よりも、あくまでも重視したいのは居心地である。ひとりでも気後れしないような落ち着いた空間が理想だ。座り心地のいいイスと、ちょっとしたドリンクサービスなどがあれば最高だ。

館内にパブリックスペースがない場合でも、温泉街にカフェや足湯など居心地のよい空間があれば、それもまたよし。温泉街をひとつの旅館と見立てて、存分に一人の時間を満喫したい。


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高橋一喜|温泉ライター
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