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アンビエントサウンド SPIRIT SEASON

年間を通して、お客様の前でのライブやコンサートは1、2回程度です。そろそろ人様の前に……とは願ってはおりますが、コロナが収まるまでは無理ですね。
(今回はsolmaではなく唐沢が代筆投稿)

スタジオでの制作仕事はCM、劇伴が大半。近年のような、短時間で仕上げ可能なデジタル編集が主流でなかった時代、簡単に作品へNGを出すクライアントさんや広告会社の担当に、只々、黙々とリクエストを聞き、徹夜を続けOKテイクが頂けるまで作り続けました。

NG作品の大半は、例えば曲名は「87-10-2ーA02」などで、闇から闇のように、ファイルデータ保管サーバー送りに。
音楽芸術とは呼べず、生産者です。今も。

気づかず数年、数十年経過し、たまに行うファイル整理作業中に手を止め、それらを聴いてみると、驚くほどの響きを出す曲もあります。まるでお家代々に伝わる糠床のようなものでしょうか。発酵作品です。

そんな発酵したNG作品を時間をかけて編曲しています。
そして今、リミックスした発酵曲を、アンビエントサウンドのSPIRIT SEASONにより生き返り、アルバムもリリースされました。まだ3アルバム。
今後。フィジカルCDリリースを予定しています。
※マイナー中のマイナーですけど。

デモ曲やNG曲のファイル数を見ながら考えてみますと、一発でOKをもらえなかった力の無さに反省しています。
食品の無駄ではないのですが、よくもこんなに音楽の無駄使いを重ねてきたなと、力不足に加え、真剣さに欠けていたのかも知れません。

時にはこんな言葉を出すクライアントさんがいました。「このギターの音は嫌いだから、違う種類のを入れてくれる?」とか「ここにシタールを入れてみてくれないかな」等。全てその通りにしたら、「やっぱり外して」とか。
思い起こせないほどユニークな出来事は沢山ありました。

お任せ頂けない仕事に関しては意見を尋ねられても、一切こちらの考えは言わない、押し付けないようにしてきました。たとえ15秒、20秒作品の短尺でも。
ただただ黙って広告代理店の営業担当の方が言う通りに従ってきたわけです。

劇伴では、プロデューサーさんや制作者の方々は、音楽家として近いフィールドで扱って下さるので、とても嬉しく、ありがたく、無言ということは無かったのですが、広告音楽ではたまにあるわけです。心の中では「この作品、映像も奇麗だから別に音楽は入れなくても、このしっかりしたNAさんだけでいいのにな」と思ったことも。

あの時、もう少し自信をもって提案の言葉を強めれば良かったかなとも思いますが、しかし、時が過ぎ、新たな陽の目を見ることになる作品の数々を見てみますと、NGを頂いたから、そのお陰で作品ストックが出来たことに、何も無駄な出来事は無かったんだと思えるようになりました。

30年前に制作した、特に1988年~1992年頃の作品を中心に、演奏は当時のシンセサイザーは使用していますが、他は殆どアナログ楽器。

昨今のようなデジタル編集機器などは高価で、古い仕事場には、やはり古い16chのアナログオープンテープMTRと、マスターは6ミリテープのオープンテープレコーダー。もちろんこれらもあの時代は高価で、5年リースで四苦八苦。懐かしいです。

空き時間に、コツコツとNG作品を新しくしている私たちの姿は、まるで、ピノキオを作るジイサンになったような、そんな感じです。

                  Solma with P/D Karasawa


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