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あなたを好きなのは

消費させないアイドルだから

踏み込ませない 踏み込めない
踏み込もうとすると火傷をする
あなたはごつごつしていて飲み込めない

アイドルは可愛いのが仕事なのに
あなたはちっとも可愛くない
みんなにどう見えてるんだろうかとなぜか私が不安になる
不安になってもしょうがないのに

新大久保をあてもなくぶらぶらと歩いて
なんとなく覗いた非公式ショップで
売れ残りのあなたを見る時
私はあなたの強さに唾を飲むのだ
消費されないあなたに

あなたは王子様じゃない
吟遊詩人のスナフキン
玉座であるべき段の上から
公園の階段に立つ友達みたいに手を振る

あなたが姿を見せない時
私はちっとも不安にならない
私が見ていなくてもあなたの時間は相変わらず続いていて
あなたは1秒も休むことなくずっとあなたで
それは私のまったく知らないあなたかもしれないけれど
あなたがあなたであることにはまったく変わりなく
だから私が確かめなくてもいい
あなたがあなたであることを確かめているならば

あなたがそこで堂々としていることが私の希望だ
誰のためにもなれない私に
してもらうことすべてを恐れてしまう私に
アイドルたちの差し伸べる手にすら気後れしてしまう私に
ただあなたは自分のために笑い
自分のために人と会い
自分のために歌を作って
自分のためにステージに立つ
しかもそれが
自分の体を透り抜けて、誰かのためになることを知っている
私のためになるかもしれない

あなたが理解されることが怖い
ずっと黙っていてほしいとさえ思う
ずっと何をやっているのかわからない人であればいいのに、と思う
私にあなたはわからない
私以外の人たちがみんなあなたをわかっていたらどうしよう
私はあなたのことをみんなが
まったくわかってしまっている想像と
まったくわからないで興味も持たないでいる想像しかできない
私は、
あなたを好きな私以外のどんな視点にもなれないから

あなたを好きでいていいのかいつも不安になる
あなたはただ好き勝手生きているだけで
それを誰かに好かれるというオプションは、ついてもつかなくてもいい
愛は時に暴力
私はあなたを抱きしめる想像だってする
不安な時
あなたのかたく大きな体で暖をとる
気持ちの悪い私の想像を
あなたは知らない
私は暴力

だけどあなたがCARATに会いたいと思う時
会えたら一人一人とまるで旧知の友達みたいに目を合わせて手を振る時
あなたの好意をただ受け取るんじゃなくて
あなたの会いたさの何倍も何十倍も
CARATだからとかでももうなくて
あなた一人に、あなたという人間に
会って目を見て「あなたがいいんだ」って伝えたいんだと
そう思っている奴が
気持ち悪さでもいいから
あなたの世界への片思いを帳消しにすればいいのにと思うよ

私の片思いをあなたが帳消しにすればいいのにと思うよ

あなたへの好きが無条件に良いものだって今はちっとも思えないけど
あなたの笑顔を信じていいんだね?
隠し事は多いけど嘘はつかないあなたのことを
私は相変わらず信用するよ

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