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瞬 / 眼

'FOLLOW' AGAIN TO CINEMAS

Rock with youはバーノンさんの表情が変わる。
それまでの少し力みのある表情からギアチェンジして、音楽を乗りこなすような余裕のあるニュアンスが出てくる。
その顔を見るのが好きで、私はRock with youが好きだ

斜め頭上のカメラをバーノンさんが見上げる
両眼が画面の中心を射抜いた。
ああ絶対そんなわけないのに私は
「見てる」って思った
こっち見てるって思った

その一瞬だけが他の全てと違った。


初めてバーノンさんと間近で会ったお見送り会の、三巡目の感覚を鮮やかに思い出した
バーノンさん 私はバーノンさん以外の全ての人と眼を合わせていられない。
仕事や友達との会話では頑張るけれど、
どうしても相手の眼に何が映っているのかわからなくて、ただのガラス玉のように見えて、
左右の眼の間で心許なく視線を迷わせたり、
あまり長く見ていなくていいように、相槌と一緒にぎゅっと瞼を閉じたりしてやり過ごす。
眼を合わせるということにいつも緊張している。
生まれてこの方ずっと。親にも。

バーノンさんもう何度もここに書いたけど、あなたと眼を合わせた時は怖くなかった。
あなたの前にいた私のうち、全く取り繕わずにそのままの私でいられたのは今のところあの一回きりだったと思うけれど、だからこそあの時のあの一瞬が特別で

バーノンさんがあんなにぐっと覗き込んで眼を合わせてくれるから、その眼がはっきりと私を見ていることがわかって、その眼の中に私は安心して居られるのがわかったから、
私はあなたと離れたくなくて、ずっと、ぎりぎりまで、あなたの両眼に縋ったね、…


映画館の座席に埋もれてただ客観的に、
SEVENTEENとたくさんのCARATたちがこの世にいる全てみたいに、
要は自分のことなど忘れて、没入して(良いことだ)観ていた私を
両眼が違う世界に引き戻した
バーノンさんの両眼はまさに吸い込まれるようで
その眼に貫かれて、
絶対そんなわけないのに
あなたに見られている私がここにいることを
あなたの眼を通して私の存在をはっきりと自覚するんだ

それが不思議
それがバーノンさんの全てじゃないし、バーノンさんの真似をして私らしさを忘れることだって(それが楽しいことだって)いくらでもあるのだけれど、
きっとあの眼だけがもたらすものがあるんだと思う
普段の私も忘れている何かが。


ねえバーノンさんあなたの眼だけは見つめ合っても怖くないんだよ
そんな人がこの世に一人でもいてくれるのは救いでしょうか、
それとも全員が怖いことが当たり前だったらもっと楽に生きていけたでしょうか。

一瞬で涙が出て、音楽は進んで、私はまた座席に溶けて、涙は乾いた。


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