幸も不幸も己の責任
また幸せになれないキスをした。
裏切られ、捨てられて、なのに本当は誰も私を裏切りも捨てもしていなかった。なぜなら確固たる繋がりが存在していると、過信していたに過ぎなかったから。なぜなら捨てられる以前に、拾われていなかったから。
私が私を捨てさせた。
期待なんかしなければよかっただけなのだ。でも、それでもいつも私は飽きもせず何度も何度も期待する。期待してないフリをして、もうどうでもいいですよという顔をして、そんなフリに付き合ってくれると期待する。そんな馬鹿女でいさせてくれると期待する。
「変な男に着いて行ったらだめだよ〜!」
大切な人が風に乗せてさよならの代わりに言った。
変な男じゃないんだよ、一応夢を見させてもらえるからね、素性もわかってるし、そうそう、昨日だって…
いつでも私が選んでいることだ、世間が言う変な男に着いて行くも行かぬも。呼び出されて家を飛び出すも飛び出さぬも。幸せじゃないキスに応じるも応じないも。捨てられたと思うも。幸も不幸も。
そしていつでも私は不幸を選ぶ。やっすい幸色のペンキが塗られた立看板に、騙されたふりをして。それが雨で簡単に禿げることを知りながら。それが本当は不幸の立看板であることに気づきながら。
いつでも私が私を捨てさせる。
いつでも私が幸せになれないキスをする。
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