見出し画像

$11 SSI2131 VCO - DIY Eurorack Modular Synthesizer

背景

自作モジュラーシンセの79作品目。
私もこれまで、様々な種類のVCOを作成してきたが、いずれもデジタルVCOで、アナログVCOを作ったことが無かった。
今回はいよいよ、アナログVCOを作ろうと思い、重い腰を上げたのだ。

SSI2131

Sound Semiconductor から販売されているVCO IC。電氣美術研究會さんが取り扱いを始めたことで、日本でも入手が容易となった。
SSIのVCOといえば、スルーゼロFM機能をもつSSI2130が有名で、最近はこのSSI2130を使用したアナログVCOモジュールが多く発売されている。
SSI2131は2130の廉価版の扱いで、一部の機能が削除されているが、DIYフレンドリーなICパッケージであり、使いやすい印象を受ける。
今回はこのSSI2131を使用したVCOの作成を企画した。

制作物のスペック

ユーロラック規格 3U 8HPサイズ
電源:20mA( +12V ),20mA( -12V ),5mA( +5V )

SSI2131を使用したアナログVCO。
データシートに記載された回路をベースにモジュラーシンセで使いやすいようにしている。
出力はDCカップリングのため、VCLFOとしても使うことができる。

FREQ POT:周波数の調整
FINE POT:周波数の微調整
PWM POT:SQU OUTのPWM調整
FM RATE POT:FM INの減衰。
VCO/LFO SW:周波数レンジの切り替え。
V/OCT IN:V/OCT CV入力
FM IN:FM CV入力。LFOを入れてビブラートしたり、EGを入れてSYNC出力の倍音変化に使うことを想定している。
PWM IN:SQU OUTのPWMのCV変調
SYNC IN:HARD SYNCの同期信号入力。内部回路がACカップリングなので、入力する波形はSQUやSAWなどの急峻な変化を推奨する。オペアンプのバッファがあるので、入力波形は3V程度でもSYNCを掛けることができる。
SAW OUT:ノコギリ波出力(-5~+5V)
TRI OUT:三角波出力(-5~+5V)
PULSE OUT:矩形波出力(-5~+5V)

製作費

総額約$11
---------------------------------
SSI2131 $5
フロントパネル $1
TL074 $0.4 *2pcs
可変抵抗 $0.3*3pcs
TL431D $0.1
3.9nF フィルムコンデンサ $0.1
他(汎用部品は下記リンク先参照)

SSI2131はThonkで3.5€で買える。日本国内で購入する場合は電氣美術研究會さんが良心的な価格で提供してくれている。

TL431Dは2.5V用のレギュレータ。日本では秋月電子で購入できる。2.5Vレギュレータならば、他のICを使っても問題ない。
フィルムコンデンサも秋月から買える。

ハードウェア

回路全体は以下の通り。

電源回路

回路図の左下。SSI2131は+5V,+2.5V,-12Vの3種類の電源が必要だ。
2.5Vはシャントレギュレータで生成している。
また、出力音声をオフセットする-1.25Vは、+2.5Vの反転増幅回路で生成している。

PWM回路

回路図の右下。加算回路でPOTと外部CVを足し算して、反転増幅回路でプラスの電圧に戻している。

周波数回路

回路図の左上。V/oct入力は、CVソースの出力抵抗の影響をキャンセルするために、ボルテージフォロワによるインピーダンス分離をしている。

C7は安定した周波数のために容量が安定するフィルムコンデンサの使用を推奨する。SSI2131の8pinの容量で周波数をコントロールできるので、C6を接続することでLFOレンジの出力が可能になる。

SSI2131の13pinのトリマー抵抗は、V/octになるようにチューニングが必要。

出力回路

回路図の右上。SSI2131の電圧出力は0 ~ +2.5Vである。
-1.25Vを加算することで、-1.25 ~ +1.25Vの電圧レンジになり、それを4倍に増幅することで-5V ~ +5Vを生成している。
ハイパスフィルタを用いて-1.25 ~ +1.25Vを作る事も可能だが、その場合はLFOの出力ができなくなるため、加算回路を使用した。

HARD SYNC回路

回路図右側中央。動作を安定させるために、C12とR14の値はデータシートの推奨回路から変更している。

その他の設計情報

回路設計中に遭遇したトラブルシュートの事例をPatreonにて掲載している。
今後もDIYを継続するためにも、サポートが貰えると励みになる。

記事内容は以下の通り。
・Soft syncの動作確認と、機能を削除した理由
・Hard syncの定数をデータシート回路から変更した理由
・PULSE出力の異常発振と対策
・ノコギリ波の歪とその対策
・SSI2131の出力周波数範囲

SSI2131の感想

アナログVCOといえば3340系ICが有名だが、SSI2131と比較した所感について。

コスト:3340 ICも種類が豊富だが、AS3340は$2.5で買えるので、SSI2131よりも安い。
回路構成:3340は出力の電圧レンジが波形ごとに異なるが、SSI2131は 0 ~ 2.5Vで統一されているため、オフセット回路を構成しやすく、部品数を減らすことができる。
拡張性:SSI2131とSSI2130は、基本的な回路の多くが同一である。SSI2130は多機能なため、まずはSSI2131に挑戦してから、SSI2130に挑戦すると、ステップバイステップで設計ができる。
データシート:SSI2131はデータシートの内容も充実しており、設計しやすい。一方で、発売から間もないICということもあり、webに回路図を見つけることが難しい面もある。

宣伝:オープンソースプロジェクトの支援をお願いします

DIYモジュラーシンセのオープンソースプロジェクトを継続するために、patreonというサービスでパトロンを募集しています。
コーヒー一杯の支援をいただけると嬉しいです。
また、パトロン限定のコンテンツも配信しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?