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$9 opto compressor - DIY Eurorack Modular Synthesizer

背景

自作モジュラーシンセの78作品目。
Eurorackの定番モジュールのひとつにMATHSがある。MATHSの用途のひとつがEnvelope followerだが、このEnvelope followerは使いこなすことが難しい。
Envelope followerは過去に作成したことがある。今回はEnvelope followerの応用例の一つとしてコンプレッサーを作成することとした。

Opto compressor

コンプレッサーには音声を圧縮する手段として、VCAやFETがあるが、バクトロール(アナログフォトカプラ)を使用したopto compressorという種類がある。
応答性は悪いが、少ない部品で安価に作成が可能なため、今回はopto compressorを作成することとした。

制作物のスペック

ユーロラック規格 3U 6HPサイズ
電源:20mA( +12V ),20mA( -12V )

バクトロールLCR-0203を使用したopto compressor。
MIXされた音声全体を圧縮することで音圧を上げたり、KICK等のパーカッションサウンド単体を圧縮することで音の印象を変える使用方法を想定している。

THRESHOLD:圧縮開始するレベルの調整。
RATIO:減衰率の調整。RATIOを大きくすると、1倍以下の倍率で圧縮可能。つまり、入力音声が大きいほど、出力を下げることができる。
RELEASE:内蔵するEnvelope followerのRELEASE TIMEの調整。
VOLUME:オーディオアウトの増幅。THRESHOLDを下げると、全体の音量が下がってしまうため、VOLUME POTで下がった音量分を補完している。
LED:conpressonが掛かるほど、強く点灯する。
キャリブレーションにも使用する。
IN:オーディオ入力。Vpp=10V(-5V~+5V)での使用を想定している。
OUT:オーディオアウト

製作費

総額約$9
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LCR-0203 $1
フロントパネル $1
Envelope follower module $2
可変抵抗 $0.3*4pcs
他(汎用部品は下記リンク先参照)

今回、回路の一部をモジュール化してPCB moduleとしているので、費用の見積もりがやや難しいが、単純な電子部品の費用だけなら$7程度で作る事ができるだろう。

バクトロールはLCR-0203を使用した。
バクトロールは環境負荷物質であるカドミウムを使用しているため、流通が限られている。しかし、LCR-0203は比較的安価に、グローバルで入手が可能だ。
また、LCR-0203は他のバクトロールと比較して、応答性が良いため、RELEASE POTの設定に対して素直な反応をしてくれる。

LCR-0203と他のバクトロールとの応答カーブの簡単な比較はPatreonで公開しているので、興味がある人は以下のリンクを参照してほしい。

PCB ASSY:Envelope Follower module

今回、私のDIYでは初の試みとして、PCB assemblyサービスに挑戦している。設計した回路基板に、電子部品をはんだ付けしてくれるサービスだ。

今回は、Envelope follower回路のモジュールを、このPCB assemblyサービスで作成した。以下、EF moduleと呼ぶ。
Evnelope follower回路は様々なモジュールに転用ができる汎用的な回路である一方で、部品点数が多くDIP部品で作成すると多くのスペースを必要とするため、EF moduleを作成したほうが今後のDIYが楽だと思ったのだ。

回路図

回路は過去に作成したEnvelope followerを流用している。
いくつかの抵抗を外付けしたり、×で示した未実装箇所に実装することで動作を調整できる。
主な回路ブロックとしては
U1A:バッファ、及び増幅回路
U1B:全波整流回路
U2A:Slew limitter回路
U2B:バッファ、及び加算回路

PCB ASSYはJLCPCBを使用した。理由は安いからだ。
PCBの製造が$2、部品費用とPCB ASSYが$24.57。
5sheet * 6pcs = 30pcs作成した。送料を含めても、1pcsあたり$1程度で作成ができるだろう。非常に安い。

PCBの面付け、及び発注方法は以下のwebページを参考にした。

KiCADの「Kikit」「JLCPCB Fabrication ToolKit」というプラグインを使えば非常に簡単な作業で面付設定と発注データの作成ができる。
注意点として、JLCPCB Fabrication ToolKitではPCB ASSYで実装しない部品(今回の場合ピンヘッダー)もBOMに登録されるため、手動で削除してやる必要がある。

基板製造データ(ガーバーデータ)のダウンロード

需要は少ないと思うが。今回作成したEF moduleのガーバーデータはpatreonにて公開している。今後のDIY活動のために支援してもらえると助かる。

ハードウェア

EF moduleを含めたopto compressor回路全体は以下の通り。
回路の7割がEF moduleで、compressorとしての回路そのものは少ない部品で構成されている。

compressor回路

U3A周辺の回路。非反転増幅回路の抵抗をバクトロールに置き換えることで、増幅率を電圧制御している。
バクトロールの個体差によってバクトロールの抵抗値も変わるため、RATIOの効き具合も変わってくる。R16の抵抗値をチューニングすれば、RATIOの効き具合を調整できるだろう、だいたい33k~100kの範囲の抵抗を選ぶと良いと思う。R16の抵抗値が小さいほど、RATIOの感度は上がる。
RATIOの感度を上げることで、増幅率のレートを1以下にすることができる。(入力音声が大きいときに、圧縮だけではなく、減衰する)

LEDインジケータ回路

U5B周辺の回路。入力電圧がTHRESHOLDを超えた時に点灯し、conpressorが強く掛かるほど明るく点灯する。
D5のLEDは必ずREDを使用すること。バクトロールのLCR-0203もRED LEDを使用しているため、順方向電圧Vfを合わせるためにも、REDの使用が必須だ。

キャリブレーション回路

RV4のトリマー抵抗でキャリブレーションをする必要がある。
バクトロールの電圧制御抵抗機能は内蔵するLEDの順方向抵抗Vfの電圧を超えるまで機能しない。これが原因で、compressorの応答性が悪化してしまう。
この応答性の悪化の対策として、バクトロールの電圧制御抵抗機能が常にONしている状態で使うようにしている。RV4を調整することで、バクトロールの電圧のオフセットをしている。

RV4の調整方法:INPUTが未接続の状態で、トリマーを回して、LEDインジケータがわずかに点灯する状態に調整する。
LEDインジケータがわずかに点灯するということは、バクトロールの電圧制御抵抗機能が働き始めていることを示すためだ。

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