花
私は今日、絶対に歌手になってやると改めて決意した。
決意の証にバラの種を植えた。
それから毎日のようにスタジオに通い、時間を忘れるくらい没頭していた。
昼休憩のついでに家に戻り、花に水をあげることが日課になっていた。
私は、この時間が好きだ。
なぜなら、水をあげている時だけが何もかもを忘れられる時間だったからだ。
月日が経ち、私は一つの目標にしていたオーディションを迎えた。思うように歌えず、自分の力不足を感じさせる結果となった。
私はひどく落ち込み、夢を諦めかけていた。
部屋の窓際に寄りかかり、頭を抱えていると
なぜか、ベランダの植木鉢に気を引かれた。
徐に窓を開け近づいていくと、植えていたバラが芽を出していた。暗い土の中から飛び出している姿はとても力強く見えた。
それをみて、こんな所では終われない。簡単に諦めるような気持ちじゃ無かったはずだと鼓舞されている気がした。
私は立ち上がり、再び音楽に向き合った。
悲しいこと、辛いことがあるといつも、ベランダに出て植木鉢を見つめ乗り越えてきた。
そんな日々を過ごし、2回目のオーディションを迎えた。
私は今までの自分を信じ、全てをぶつける思いで望んだ。
手応えはある。
私に悔いはなかった。練習の成果は充分に発揮できていた。
あとは結果がついてくるかどうかだ。
そして合格発表の日の朝、いつも通りベランダに向かうと、立派に咲き誇ったバラの姿があった。綺麗な青色だ。美しい、、。
ただ呆然としながら眺めていると、電話がなった。
「合格です」
私は夢を掴んだ。花は美しく咲いた。
まるで私のこれからの人生を表しているかのように。
「決意」という種をまいて
「努力」という水をやり
「結果」という素晴らしい花を咲かせることができたのかもしれない。
私はこれからも沢山の花を咲かせ、人生を彩っていきたい。
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