『ドリームキラー』なんかに負けるもんか。
私のすぐそばに、『ドリームキラー』なる生きものがいる。
「近い将来、私は作家になるから」と言ったら、
「ふざけるな! お前みたいなやつが作家になんかなれるか!」と殴られたことがある。
「発達障害の検査をしたい」と言ったときには、
「お前は障害とかそんなんちゃうねん! ただの横着者やねん!」と胸ぐらをつかまれて反対された。
体調を崩し『適応障害』と診断されて休職したばかりのころ、
「しんどくて買いものが無理……」と言ったら、
「そんな病気みたいなこと言うのやめてくれや! 俺のまわりは病人ばっかりや!」と、思いっきりティッシュの箱を投げつけられた。
「あれ」「これ」「それ」とか、
指差しやジェスチャーが本当に理解しづらいから
「できたら言葉で、もうちょっと具体的に指示してほしいんだけど……」とお願いすると、
「これ以上どうやってわかりやすく説明したらええねん。幼稚園児でもわかるようなことしか俺は言うてへん!」とブチギレられた。
こんなことの繰り返し。
何度お願いしても、この切実な願いは聞き入れてはもらえない。
「俺は、発達障害なんて認めへんからな」
「そんなもん、そもそも存在せえへんねん」
とかなんとか言われながら、いま現在に至るまでとことん「人格否定」される毎日。
これ、私じゃなかったら、たぶんとうに自○してると思う。
私自身、過去には何もかも嫌になったことがあって
その気になったら○ねるように
ハサミを枕元に置いて眠ったこともあった。
それでも私は前向きに生きてる。
不思議と、自己肯定感も下げることなく。
よく生きてるよなぁ、って我ながら感心する。
自分で自分を褒めてあげたいよ。
っていうか、自分しか褒めてくれる人もいないしね。
この話は、ずっと誰にもしたことがなかった。
話したって何の解決にもならないって、わかってるし。
話してしまうとなぜか余計に嫌なムードになってしまうから、口にしないようにしてた。
先日の睡眠外来の診察のとき、初めて第三者にこの話をした。
これまでひた隠しにしてきたことをなぜ話す気になったのか、わからないけれど。
「それは……本当なら聞き捨てならないですね」
深刻そうな表情をして、先生は私にそう声をかける。そして、
「話してくれてよかったです。おそらくですけど、カナタさんの睡眠障害の原因はそこにあるような気がしますね」
と言ってくれた。
話してみてよかった。とんでもなく気がラクになった。
「睡眠中の歯ぎしりや夜驚症が収まらないんです」と相談したら
「一度、漢方を試してみますか?」って勧められたんだけど。
よくよく考えてみると、なんで私が、ここまでして対処をしなければならないのだろう。
アホらしすぎひんか?
ショートケアのピアサポートでも、みんなの前で初めてこの話をしてみた。
スタッフさんや仲間たちは私の話を真剣に聞いてくれて、私のために時間を割いて、たくさんのアドバイスやエールをくれた。
めちゃくちゃありがたかったけど、ちょっと複雑だった。
共感してもらえるのは、とってもうれしい。
だけど、同情してほしいわけじゃない。
憐れみの目で見られたくなんかない。
同情されるくらい、私はひどい目に遭ってるのか。
そう思うと、ちょっぴり悲しくなるから。
悲劇のヒロインになんてなりたくないし。
不幸ぶるつもりも、さらさらない。
「大変だね」って言われるよりも
「がんばってるね」って言われるほうが、ずっとずっとうれしい。
いつからか、「本当に大切に思っていること」は誰にも明かすまいと、そう心に決めた。
自分の夢を守るために。
それにしても厄介な『ドリームキラー』。
こいつがいつもいつも、私の行く手を阻むのだ。
発達障害といい、こいつといい。
どうして私の人生は障害だらけなのだろう。
おかげで、執筆が思うように進まない。
9月の出版を目指しているのに、こんなペースで間に合うのか……!?
頭のなかは、そのことでいっぱいいっぱい。
焦りはつのるばかりだ。
「もう我慢できない……!」
感情が爆発しそうになった。
だけど、ここで爆発しちゃダメだ。
もうちょっとだけ、我慢するんだ。
いまは抑えるんだ。全力で。
必死に、自分に言い聞かせて、なんとか抑えた。
だけどついに、私のメンタルはメルトダウンしてしまった。
やらなくてはならないことが山積みなのに
どうにも頭が働かない。
好きなことをして気を紛らわせて
なんとか自分を落ち着けようとするけれど
なかなかうまくいかない。
書いてるうちに回復してくれれば……と思いながらいま、これを書いています。
「前向きポジティブ」を信条とする私だけど
今日だけは、少しだけ弱音を吐かせてください。
息苦しいよ。
誰か、助けて。