生まれたのは、命だけじゃない。前編
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11月26日、いい風呂の日、子どもが生まれた。
妻が産気づいたのが平日の夕方4時くらいだったので、
多くのサラリーマンと同じように、僕も会社にいた。
LINEで「破水した!」という連絡があったけど、
破水から一体どれくらいの時間で生まれるのかまるでわからなかった。
出産の知識を予め蓄えてる旦那さんがいたら、心から敬服する。
アワアワしながら仕事を切り上げて、急いで電車に駆け込んだ。
「早く早く」と焦るものの、祈ったところで電車のスピードが増すわけでも、駅の数が減るわけでもなく、
田園都市線は、いつも通り正確だった。
ワクワクとドキドキの間にある、便利な言葉があれば教えてほしい。
駅のエレベーターを上がるとき、
まさか周りの人は、この男が間もなく父になろうとしていることなんて
知る由もないだろうな、と思った。まあ誰も知ったところで…な話だけど。
みんな平然と歩いているけど、身内が死にそうで病院に向かってる人もいれば、階段を上がる女子高生のパンツが見えないかなーって考えてる人もいるわけだ。
そんなことを考えながら、病院に着いたものの、
妻は検査をしていたのですぐには会えなかった。
10分くらい廊下で待たされて、ようやく出てきた妻の顔にビックリした。
鬼の様な形相、とはこのことか。今まで見たことないほど険しい顔をしていた。激痛と不安で、僕のことなんてまるで見えていないようだった。
そうか、ここからはママゴトじゃない。戦争だ。命を迎えるための戦いだ。
こうして、15時間を超える地獄のような戦争が始まった。
どうやら、今夜は風呂なんて入れそうにないようだ。
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