櫻坂46と選抜制度について、徒然に④
マジですか。そろそろ愛想も尽きるかと思いましたが、あなたの人の好さを私は見くびっていたようです。
ここまで来てしまったら、引き返すのももったいないですか?そういうの、サンクコスト効果って言うんじゃありませんでしたか。
では、私の推しとミーグリ売上の関係を、私目線でお話しします。
【松田里奈に見る「ミーグリ売上基準」の実態】
繰り返しになりますが、選抜メンバーを選ぶ際のミーグリ売上基準は、ミーグリの売上だけを評価項目にしているわけではないと推察されます。
私の推しの一人、松田里奈さんが選抜メンバーに選ばれ続けていることが一つの証左ではないでしょうか。
もし選抜基準が完全にミーグリ売上だけだったとしたら、彼女は選抜から漏れてもおかしくないでしょう。しかし、彼女には他のメンバーより秀でた点があります。
歌唱力、というものの評価も捉え方次第であることは一旦置いておいて、一般的に言われるところの歌唱力という点において、松田さんはグループ随一と評されており、それは彼女推しのファンのみならず、ファンが揃って評価するポイントであり、またグループ内、関係者から見てもそうであるということが、櫻坂46として活躍する場において都度明らかになっています。
また、ダンスパフォーマンスについても、抜きんでた評価を受けるメンバーの陰に隠れて、彼女の技術の高さが称賛されることもあるようです。
これらの点が評価されて、ミーグリ売上選抜に選ばれている…わけではないのだと思います。
技術的側面として、彼女に歌唱面でわずかに及ばなくともダンスに優れたメンバーと入れ替える、興行面において彼女よりも人気なメンバーと入れ替える、という判断もあり得る話だと思うからです。
彼女は櫻坂46のキャプテンを務めています。だからでしょうか、彼女はグループが外番組に出演する際、先陣を切ってコメントをしたり、出演パートを総括したりする機会が多いです。
松田里奈さんでなくともこの立ち回りができるメンバーが多いことは、ファンならよく知っています。
ただ、キャプテンという役職が、その機会を引き付けているのは確かでしょう。キャプテンとはいわば受付、インフォメーションセンターなのではないでしょうか。
メンバーの誰が纏め役なのか、誰が率先してくれるのか、初めましての方々にアナウンスする。MCが誰に話を振ろうか、番組を作る側がとりあえず誰に話を聞こうか、その目印になる。キャプテンとはそういう役職ではないかと想像しています。
キャプテンと言う役回りの必要性から彼女が選抜メンバーに選ばれている。これではまだ短絡的だと思います。
私が、松田里奈さんが選抜メンバーに選ばれている理由は、それこそ広報力、先述した外番組出演数の多さ、もっと言えば「THE,TIME」に出演しているからではないかと、思います。これはもう妄想の領域ですが。
この番組に出演していることで、彼女はグループにおいて、知名度と言う点においては一番のメンバーになっているのではないか思っています。
「THE,TIME」の出演者の皆さんは優しいもので、松田さん出演時に限らず、番組内で櫻坂46を取り上げることがあれば松田さんの存在に触れてくれます。
それを踏まえて、櫻坂46の選抜メンバーが歌番組に出演した際のことを考えると、毎週木曜朝にテレビで見かける、バラエティのゲストとしてよく見かけるあの子こと松田さんが映っているということが、グループを見てもらえるきっかけになるかもしれないと思うのです。
歌番組においては、そのビジュアル、パフォーマンス、センターと言う立ち位置、様々な形で様々なメンバーが注目を浴び、Buddiesへの入り口を作る中、松田さんは親近感を持ってもらえるという手法で、ファンを増やしているのかもしれません。
キャプテンだから「THE,TIME」に出演できた、とするなら、キャプテンであることが選抜メンバーの理由となったという言い方も間違いではないでしょう。
しかし厳密には、「THE,TIME」に出演し続けることで、その他の外番組においてゲストに呼ばれ続けることで醸成された彼女の存在感が、歌番組出演などにおいて視聴者の目を櫻坂46に引きつけるきっかけになり、延いてはファンを増やすかもしれないという見込みがあり、それはミーグリ売上と言う尺度を無視しても尚、それで一部のファンの反感を買ったとしても尚、効果が高いと思われているからではないか。
仮に松田さん推しにならなくても、松田さんをきっかけにグループを知って、誰かの推しになってくれたら。
そんな損得勘定の結果、松田さんは選抜に選ばれているのではないかと考えています。
以上が私の推論であり、ミーグリ売上基準はミーグリ売上だけを評価項目にしているというわけではないことの論拠です。
同様に、ミーグリ売上と言う現在の結果以上に将来の利益につながる見込みがより高いならば、その子が視聴者をグループへと誘引する存在だと認められるなら、完売順位を飛び越えて選抜になることもあるのだろうということを、3期生が本格的に選抜メンバーに入り始めたころからから感じています。
つまり、他のメンバーと比較して将来の利益に結び付かなそうとなれば彼女も選抜外になり得るということです。
まもなくの新曲発売に伴うミーグリの売上、彼女はだいぶ後塵を拝しています。彼女の存在がもたらす神通力が、この差を覆すと見込まれるのか、さらに次の選抜の機会に、運営の解答が窺えるでしょう。
推しのことだというのに随分とドライな論説、結論だと我ながら思います。
そもそも妄言です。ファンには見えるところ以上に見えないところで、彼女はグループに大きく貢献し、選抜に選ばれるべくして選ばれているのかもしれないのですから。
私が、彼女が選抜メンバーにいる意味を特に感じたのは、TBSの歌番組「CDTV ライブ! ライブ!」や「音楽の日」に櫻坂46が出演した時です。
「CDTV ライブ! ライブ!」の司会は江藤アナウンサー、「音楽の日」の司会は安住アナウンサー。共に「THE,TIME」にて松田さんが長らく共演してきた方々です。
江藤さんは舞台裏で、松田さんと睦まじいやり取りがあったことは明かし、また安住さんは、櫻坂46が登場するという段においていたずらっぽく松田さんに仕掛け、松田さんはしかと受け。
既知の仲として無難ではない掛け合いをするその様子は、少し大げさに言えば、業界内における櫻坂46の存在を少しばかり良い方向へ進めているのではないかな、と思ったのです。
まぁ、あれこれ理由を付けましたが、親心もといファン心理としては、どんな理由であれ推しが選抜にいてくれるなら嬉しいもので、反面、選抜外になった時の精神的な落としどころを事前に用意したというのも偽らざるところです。
【大沼晶保に立ちはだかる「ミーグリ売上基準」の壁】
さて、ミーグリ売上基準を語る上でどうしても挙げたいのが、私の推しの一人、大沼晶保さんです。
バラエティ番組では異彩を放って場を沸かす名場面製造機、ライブにおいては鬼気迫る迫力のパフォーマンスを見せる、そんな彼女のミーグリ売上の順位は下から数えたほうが早いくらいです。
触れるのは少し憚られるポイントですが、この度発売することとなった櫻坂46、10thシングルをもって、ミーグリ売上順位においては最下位に甘んじていたメンバー2名が卒業します。これを受け、大沼さんはミーグリ売上順位…人気争いにおいていよいよ最下位もあり得る立場になりました。
贔屓目であることを強くは否定できないものの、彼女の活躍は、その能力は、ファンの間でも高く評価されているのではないかと思います。
思いますが、ファンとは素直で残酷なものです。身銭を切ってまで会いに行くほどの方ではない、身銭を切るからにはもっと会いたい我が推しに会いに行くのだという判断は、しかし当然だとも思うのです。
前述の例に乗っかるならば、「いい人だとは思うけど、恋愛対象ではない」と言う理由でモテない、ということでしょうか。分からなくはないのです。
グループ所属初期、自身の人物像を「うさぎとパクチー(ふわふわとした見た目と性格、対してパクチーのような癖の強さ)」と比喩した彼女ですが、事ここに至ってはいい得て妙です。
パクチーを用いるようなタイ料理は確かに癖が強く、万人受けするとは言えません。好きだけれど、たまに食べるならいいけれど、いつでも食べたいかと言うとそうでもない、と言う人も多いでしょう。
好きな人はとことん好きです。ニーズは確実にあります、が、飲食業界の主役になれるほどの需要はありません。
自己嫌悪気味な大沼さんが、そもそもパクチー嫌いであるということまで含めて、皮肉の利いたいい例えになってしまった気がします。
何においても手加減抜き、全力で挑む彼女の、選抜メンバー入りへの情熱は並々ならぬものです。選抜メンバーが発表された後に届く、メッセージアプリにおける彼女の悲痛な思いは、読んでいて居たたまれなくなります。
続いて改めて、ブログでも同じように気持ちを明かすのですが、それがアプリに比べると若干マイルドな表現になっているあたり、彼女が気持ちを明かす相手を少し選んでいるのだなと感じさせます。
それが意識的か無意識的か、いずれにせよ、既存ファンを一層惹きつけるテクニックになっているとも思います。大沼と言う沼は、狭くて深いのです。
その鋭く大きな慟哭を、もっと広い範囲に向けて届ければ、振りむいてくれる人も多いのかな、と思ったり、いや、引かれるかもしれないな、とも思ったり。
そんな大沼さんの胸の内を知る身としては、たまに見かける「バックスライブを経験させるべき」という意見には賛同できません。結果としてそれがメンバーにとって良い経験になったとしても、選抜から漏れることによるメンバーと、そのファンの悲嘆はあまりに大きいからです。
「バックスを経験させるべき」それは、そのメンバーを1推しにしていないファンによる、バックスライブというグループ本体のライブとは異なる面白さを持つライブでそのメンバーのパフォーマンスが見たい、そんな本音を隠した欺瞞なのではないかとすら思うのです。
選抜メンバーに入れるように、大沼さんは彼女なりに努力を重ね、創意工夫を凝らしています。
他のメンバー曰く、自主練に行くと必ず練習場に大沼さんがいるそうです。ダンスが上手いという評価を受けるタイプではありませんが、彼女は少しでも上手くなろうと修練を怠りません。結果、彼女独自の方向性のパフォーマンスが出来上がっていると思います。
自分は天然キャラだと自覚し、もっと周りに笑ってもらえるようにと色々考えているようです。演じたキャラが、本来の自分からかけ離れていて苦しい。多少はそんな思いもあるようで、しかし全部が全部そうではなくて、笑ってもらえることが嬉しいのだというのが本音でもあるのだろうとも感じます。
私は「そこ曲がったら、櫻坂?」で笑いを取る彼女が大好きです。
「サクラミーツ」なんて、まさしく彼女らしい番組。考えて笑いを作り、計算外の笑いも生む。願ったり叶ったりです。
南極観測船しらせにまつわる特番に、そうそうたる面々に混じってゲストに呼ばれるなんて、船舶免許を持っていた彼女にしかできない仕事です。
彼女の活躍は枚挙に暇がありません。しかし、彼女のミーグリは売れていません。結果、彼女は選抜メンバーに入れていません。
努力は、メンバー皆がしていることなのです。大沼さんにしかできない仕事があるように、他のメンバーには他のメンバーにしかできない仕事があるのです。
その上で、人気が出るかどうかはそういったこととは無関係に決まるのです。これはもう、才能や巡りあわせの領分でしょう。
大沼さん自身も語りましたが、向き不向きと言うものがあり、アイドルが人気商売だというなら、アクションが生み出す人気が何をしたかではなく誰がしたかに由来するなら、彼女は相対的に不向きと言えるのかもしれません。
これは「アイドル」という言葉を職業に限定した際の評価です。パフォーマーとしての能力、タレントとしての能力は、職業アイドルの才能とはまた別に存在すると思っています。
たらればですが、もし彼女が櫻坂46ではない違うアイドルグループに所属し、そこで活動を続けていたら、今とは少し違った評価を受けていたかもな、と夢想します。
大沼さんは人気が無いわけではありません。櫻坂46の、ミーグリを購入するタイプのコアなファン(から類推される全体的なファン)からの人気が、あくまで相対的に低いのです。
タイ料理も、東南アジアなど場所を変えれば、そこではそれがスタンダートです。違うグループに所属していたら、ファン層も変わり、そこでは相対的に人気者になれたかもしれません。
私が彼女を見つけることも、なかったかもしれませんが。
もう1点、彼女の人気が振るわない理由は、彼女が紡ぐストーリーへの関心が薄いから、ではないかとも思います。
先述した通り、ファンはアイドルに物語を見ます。センターに立ち続けるような子の物語は、ビジュアルか、キャラクターか、ともかくとっかかりが多く、王道で受けもいいでしょう。
この物語は売れると見れば、出版社も本屋も猛プッシュするでしょう。対して大沼さんの物語は、今のところあまり見向きがされていないのではないでしょうか。私は名作だと思っているのですが。
バックスライブでのパフォーマンス、「そこ曲がったら、櫻坂?」での大暴れ、それを機にたまに手に取る方はいるかもしれませんが、少し立ち読みして、そのまま本棚に返してしまわれているのでしょうか。
そうですね、物語はまだ完結していないとはいえ、とにかく苦節が長すぎて、カタルシスがなかなかやってこない作品かもしれませんから。
手に取られないでいる間に、期待の新作が入荷されました。売り手とお客さんの目は、今やそちらに移ってしまっています。
長々例えてみましたが、要は、大沼さんが広くに受けるタイプではなさそうだということです。
彼女のことをよく知れば魅力は伝わるはずだ、推してもらえるはずだ。口をつきそうになりますが、それはどのメンバーにも言えること。それにみんな、限られた時間とお金の中で、今の推しを応援するのに手一杯なのです。
推しに対して随分辛辣なことを書きました。しかし、なるべく贔屓目を減らして客観的に立とうと思って、言葉が尖ってしまったところもあったかと思います。
大沼さんのファンは、大沼さんがどこにいたって応援しています。選抜だろうがバックスだろうが、人気の序列が最下位だろうが、です。
だから、選抜結果を真正面から受け止めないで、と。落選したことを謝らないで、と。落選時に彼女が吐露する絶望的な心中を前に、ファンはいつも彼女を心配しています。
ただ、ファンはやはり、どちらかと言えば選抜に入ってほしいと思ってしまっています。どんなポジションに選ばれたって差なんてないと嘯いていても、喜びの大きさはどうしても違うのではないでしょうか。
我が子がどんな成果を残したかに関わらず応援しているけれど、ひとかどの成果を上げてくれたとあれば、やはり嬉しい、誇らしい。そんな心持みたいなものでしょうか。
推してるアイドルが喜んでくれるからファンが選抜入りを望むのか、ファンが選抜入りを望むからアイドルもそれを目指すのか。もうどちらが最初なのかも分からない状態ですが、大沼さんとそのファンの目標は概ね一致しています。
概ねと言ったのは、直前に書いた通り、ファンにとっては選抜入りしかなったとしても気にしないでほしいという、大沼さんを思う気持ちがあるからです。
ただ、ファンが選抜入りを期待しないこと、選抜入りなんてどうせできないと諦めることはできません。それもまた大沼さんを思ってのことです。
大沼さんではない別のメンバーの話になりますが、選抜メンバーになれなかったことが続いたそのメンバーが、ファンに向けて送ったとあるメッセージが印象に残っています。
落選した悲しさ悔しさ、応援してくれたファンへの申し訳なさを語った上での言葉、要約すると「ファンに悲しんでほしいわけではない、けれど、私が選抜になれなかったことを悲しんでくれるファンがいなかったら、それも辛い。」
期待すらされないというのが、一番辛いのかもしれません。選抜になれた時に一緒に喜ぶ、その反対は落選した時に一緒に悲しむ、ということです。
Buddiesとは仲間の意、仲間とは喜びも悲しみも分かち合うもの。少年漫画のような価値観を再認識しました。
バックスメンバー特有のステージ、バックスライブは、本当に素敵なライブです。でも、そこで輝く彼女を見るよりもきっと、選抜メンバーに選ばれた瞬間は嬉しいと思うのです。
私は選抜制度を認めています。全員選抜においても序列がつくなら、それも肯定しています。諸手を挙げてというわけでもありませんが。
彼女が立った勝負の場で彼女が勝利を手にすること欲し、その裏で彼女が負けて傷つくリスクを負う可能性があることを認めています。いささか不承不承ではありますが。
では、その勝敗基準もとい選抜基準がミーグリ売上で良いのかは、話が別です。別の話なのですが、私はミーグリ売上基準をベターだと申し上げます。勝負のルールはなるべく公平であるべきだと思うからです。
ミーグリ売上基準は、彼女にとって不利な偏ったルールだとは思えません。評価の最初のスタートラインは、皆一緒だったはずだからです。まぁ、彼女の不得意分野ではあるようですが。
アイドルに興味が無い私の友人が、櫻坂46の選抜制度に関する話を聞いてくれたとき、大きく代わり映えしない選抜、1・2列目メンバーの状態を指して言いました。
「競争してなくない?一部のメンバーが優遇されてるんじゃない?」
私はこれに強く反論しました。現在選抜に選ばれ、より前の列に長いこと立ち続けているメンバーは、人気勝負と言う試合に勝ち続けているのだと。
その結果として長いこと顔触れが代わり映えしないのは、BIG4時代の男子テニス界のようなものなのだと。
メンバーそれぞれ努力しています。才能が物を言っている点も大いにあると思いますが、ともかくも一つのルールの中で、より高い評価を得続けている人間を認めないわけにはいきません。
大沼さんも少しずつファンを増やしているはずですが、それ以上のスピードで他のメンバー、特に3期生はファンを増やしています。彼女たちにも正当な評価がされるべきです。
ミーグリ売上というもので評価を得て、選抜されてきたメンバーにとって、その立ち位置は努力と才能で掴み取った栄誉です。ミーグリ売上は他に比して高いのにバックスメンバーになるというなら、それは不当な評価だと言わざるを得ません。
対して、ミーグリ売上基準の置かれた現状において、全完売にも至っていない大沼さんが、他の多くの完売メンバーを差し置いて選抜されることは、これまた不当だと思うのです。
いや、何度も申し上げますが、ミーグリ売上基準はミーグリ売上に重きを置いているというだけで、ミーグリ売上以外を考慮に入れていないわけではないのですから、大沼さんが選抜されたとしたら売上以外の点が大きく評価されてということなのだろうとは思います。
個人的にはそれでもいいのです。ただ、客観性は低いな、とも思うでしょう。だからこそ、多くのファン、特に大沼さんに代わって落選したと思われるメンバーのファンからの反発は必至でしょう。
ミーグリ売上という評価軸が正しいのか、という疑問は何度でも湧きます。その上で、やはり合理的だと思いますし、消極的だとしても納得できるファンはより多いだろうなとも思うのです。
選抜基準ががらりと変わって、大沼さんがより評価されやすい、選抜にされやすい状態になったとしましょう。それはつまり、あるメンバーにおいては不利、不得意な基準なはずです。その基準で割を食うメンバーが必ず生まれます。
身長が高いことが有利なバスケットボール、体重が軽いことが有利なスケートボード。競い合う場には有利不利はつきもので、それを飲み込んで不利な選手はその人なりに上を目指します。選抜争いも似たようなものではないでしょうか。
もし選抜基準が変わったとしても、それを運営が明言しない限りは、ファンの間に不満が渦巻きます。先に述べた通り、ミーグリの売上が選抜に影響すると思っているからCDを買っている、そんなファンも多いのですから。
基準を変える、でも基準はファンには明かさないなら、ファンがその基準を推察できるようになるまで、変えた基準のまま続けるのが筋ではないでしょうか。
そうすれば、ファンも選抜に入れるための応援の方法が分かってくるでしょうし、一度物議をかもした基準変更時最初の選抜もあとから理解してもらえるかもしれません。
あるいは基準を変えるなら明言する、明言はせずとも、そうと分かる方法でファンに提示する。いわゆる思い出選抜のような選ばれ方なら分かりやすくて、多少の反発はあっても、理解してくれる人だってそれなりにいるでしょう。
いや、これはそんな選抜制度に巻き込まれたことのない、櫻坂46ファンの戯言でしょうか。
公平性以外の観点で私がミーグリ売上基準を支持する理由は、「大沼晶保自身が拘っているから」です。これは少々意訳が入っています。
大沼さんは6thシングルにおいて、表題曲「Start Over!」を歌唱する選抜メンバーに選ばれました。ただ、ファンならご存じの通り、これは休業中のメンバーを除く、当時の1期生2期生による全員選抜です。
どんな形であれ、推しの活躍する場が増えるのは嬉しい。そんなファン心理とは裏腹に、大沼さんの胸中は複雑だったようです。
当時の選抜発表後、彼女はファンに向けたメッセージで語りました。
「選抜されたことは嬉しい、しかし同じくらい悔しい。これは掴み取った成果ではない。ファンが応援してくれたから選抜に入れた、そう胸を張って言えるように、次のシングルでは選抜を掴み取ってみせる。」
結果、以来彼女は選抜メンバーに選ばれていません。
もし選抜基準が変わって、それで大沼さんが選ばれたとしても、ミーグリ売上が振るわなかったという事実は変わりません。今まで挑んできた競技では勝てなかったから、別の競技に移っただけです。
それでもいいじゃないかと言いたくなります。ファンとしては、どんな理由で選抜に選ばれたって構いません。ミーグリ売上でなくても、何かが評価されて選ばれたのですから。
ただ、ミーグリ売上基準において選抜に選ばれることには、大きくて分かりやすい特典があります。ファンの応援があったから選ばれたと言う実績、あるいは実績がもたらす自信です。
応援してくれるファンがいるからこそ、その応援の形が明朗に反映された結果が欲しい、そしてファンと一緒に喜びたい。
彼女がもし、ファンの思っている通りの素敵な人なら、こんなことを考えても不思議ではありません。
だから、今まで負け続けているミーグリ売上基準による勝負から逃げたくない。彼女がそう思っているかは分かりませんが、私自身は、このルールに則って戦って、いつか勝ってほしいという願いがあります。
えぇ、もうそれは奇跡の領域だと分かっています。現在、ミーグリ売上については、3期生を中心に2次完売メンバーが続出しています。それだけ幅広い層から人気を集めるメンバーがごった返しているのです。
選抜メンバーが、グループ総勢の約半分の人数なら、1次、2次完売メンバーだけで既にその枠は埋まりつつあります。
世間が騒ぐほどのよっぽどの出来事、なぜか分からない突然の大沼晶保ブームでも来ない限り、彼女の選抜入りが叶いそうな気がしません。冷静に見るほど無理ゲーです。
もう勝負の場から離れてしまえば、選抜メンバーなんて諦めてしまえば、大沼さんも楽だろうにとも思います。
自分と言う存在が受ける場所での評価があればよいではないかと、大沼さんを気遣うが故に思うのです。
ただ、先に書いた通り、期待しないこともまた彼女を傷つけるのかもしれないなら、やはり期待を寄せてしまいます。
それに大沼さんは優しいですから、もしファンが選抜入りを喜んでくれると気付いているなら、それを目指してしまうでしょう。
そういう人だからファンを続けているというのに、ファン心理がファン想いの彼女を苦境に晒す。難しすぎる構造の渦中に、大沼さんとそのファンは立たされています。
プロ野球選手の誰しもが、入団時にはオールスターに選ばれるような選手を目指すものでしょう。しかし皆が皆そうはなれません。努力と才能と運が交わって、オールスター選手なんてひと握り、1軍先発メンバーだって限られ、2軍のまま現役を終える選手もいます。
とある代打の神様は言いました。レギュラーになれない、代打の神様と言うポジションもまた勝ち取ったものなのだと。
今、手元にある成果で十分じゃないか。プロ野球選手になる、それだけでもすごいことであるように、もう櫻坂46の一員である時点で価値はあるじゃないかと。
でもきっと、選抜メンバー入りを目指さなくなったなら、言い方を変えて向上心を失ったら、きっとメンバーの一員ではいられないのではないでしょうか。代打の神様が神様でいられるのは、いつでも先発メンバーになるための準備をしているからです。
仮に選抜入りを目標にしなくても、今以上の人気を欲さないとしても、何か別の理由をもって表現力を磨き続ける。そんな新たな目標が無ければ、研鑽が無ければ、グループ最大の見せ場であるライブで足を引っ張ります。
彼女が勝負から降りられるのは、新たな目標を見つけた時ではないかと思うのです。
そしてもう一つ、私がミーグリ売上基準を否定しきれない理由があります。この基準があったから私は大沼さん推しになった、という事実があるからです。
私が大沼さん推しになったきっかけは、「そこ曲がったら、櫻坂?」での活躍を見たことで、推しになった決定打は、グループ初のバックスライブにおける彼女のパフォーマンスを見たからでした。
あの時の大沼さんセンターの「BAN」は衝撃でした。スタイリッシュではない、野性味あふれるパフォーマンスは、今まで様々なメンバーがセンターを務めたどの「BAN」と比べても異質です。
これを見ることができたのは、ミーグリ売上基準によって選抜メンバーが選ばれたため、大沼さんがバックスメンバーに選ばれたためです。
ファンになる、というのは、これも巡り合わせの代物だろうと思っています。メンバー皆素敵な人なのです。櫻坂46に出会うタイミングがほんの少し違っていたら、大沼さん推しにはなっていなかっただろうと自分自身に対して思います。
欅坂46を初期から見ていれば1期生メンバーに推しがいたかもしれませんし、最近になって櫻坂46を知ったならば3期生に1推しがいたかもしれません。そして一度推しが定まったら、心のリソースはその子に割かれ、大沼さんは素敵な方だと知っていても、推すまでには至っていなかったでしょう。
しかしこの度、この巡り合わせが、私にとってはバックスライブの大沼さんになってくれました。こうなると、少なくとも過去の選抜を否定しづらくなります。
いや、それならそれで私は別のメンバーを推しに選んでいただけなのでしょうが、最低でも、最初のバックスメンバーを選んだこの時の選抜は、今となっては私にとっての僥倖だったのです。
以後、選抜から漏れ続ける彼女と共に悔しさを覚えながら、しかしバックスライブでの彼女に毎回感動させられます。
8thシングルバックスライブにおける、大沼さんセンターの「無念」は圧巻でした。演技を超えた自然体の表現、嘘も外連味も感じさせないそのパフォーマンスは、歌声は、表情は、彼女自身のことを歌っているかのようで、実際彼女も共感したというこの歌の世界観を、きっと彼女は、他のメンバーがセンターに立った時以上に舞台上に顕現させていたことでしょう。
そう感じたのは、彼女の境遇があまりに「無念」の歌詞に描かれる境遇に重なっているから、重なっていると思って見ていたから、でもあります。
つまり彼女の境遇を知っていなければ、これほどの感動は得られなかったのかもしれません。他のメンバーのパフォーマンスの方が歌の世界をより表現できているのかもしれません。
この「無念」に関する表現と感動の関係性については、いずれまた別の形で書き起こそうと思います。
閑話休題。
「無念」での大沼さんのパフォーマンスは、ポジティブに表せば、自身の今までの道のりに意味をもたらしたと言えます。
全力で挑み続けながらも悔しい思いが続き、それでも諦めずに戦い続けた彼女の経緯が、そこから生まれた思いがパフォーマンスに重厚な意味を付与し、故に、その経緯を知っているというファンは感動したのではないでしょうか。
これまでの辛い道のりにも意味はあった、悔しさを昇華させたのだと、ファン目線では思うのです。
この瞬間をネガティブに表すなら、大沼さんは今までの道のりに、選抜メンバーに選ばれなかった事実に、意味をもたらしてしまったとは言えないでしょうか。
これまでの辛い道のりがあったからこそ感動させられたのだと、ファンは思ってしまったのではないでしょうか。シェイクスピアの悲劇を見るような、悲劇の中での人の想いに胸打たれるような感覚があったかもしれないのでは。
彼女がバックスメンバーとして、これほど素晴らしいライブを見せてしまった。彼女はいつでもそうなのです。バックスライブで輝いて見せる、そうなるとバックスでもいいじゃないかと思ってしまいそうになる。アイドルとして日の目を見る機会が減っても、表現者としてより成長するなら、彼女の境遇は悪くない。そんな邪な考えが、ほんの一瞬脳裏を掠めたこともあります。
選抜されなくても腐ることなく、悔しさをバネに成長を続ける。独特の味を持つ、最高のパフォーマンスを続ける彼女の魅力は、結果論ですが、ミーグリ売上基準の敷かれた今の櫻坂46が生み出した。
そう考えると、今まで彼女をバックスに追いやった、ミーグリ売上基準をこれまた否定しづらくなってしまいます。
もう一度表現を反転させましょう。
彼女は、そんなミーグリ売上基準と言う逆境にあっても輝き続ける人なのです。自分の置かれた立場を受け止めて、そこで活躍する意義を見出し、あるいは生み出す方なのです。自分の今までの歩みを、それまでの成果を今に反映させて、過去を肯定させられる人なのです。
ここまで達観すると、ミーグリ売上基準についての恨み言はだいぶ小さくなりそうです。
さて、そろそろ、終わりが見えてきました。
次の投稿では、ミーグリ売上基準の問題点から、お話しさせてください。