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『ストップ・メイキング・センス』 4Kレストア
だいたい自分が聞く音楽のジャンルは決まってきてしまう。R&B、HIPHOPなどのいわゆるアフリカンアメリカンがルーツの音楽からあまり抜け出したことはない。
だからこそ、トーキング・ヘッズとこの映画に対する前知識ゼロで鑑賞してみたかった。
結果、全てが初めての体験となった。
久しぶりにワクワクしたし、分からないことだらけで戸惑ったりした。でもそれさえも楽しかった。
あまり表情が変わらないように見えるデイヴィッド・バーンが狂気的にも見えた。「PSYCHO KILLER」を歌っているのだから演出なんだろうか。
とにかく曲調だけでなく、歌詞でさえ触れたことのないような文章が連なり、全てが異質であり異常に見えたし、聞こえた。
いつもと異なっているように見えたのは、私が知らない世界に飛び込んだからだと思う。未知の、新しい世界を知った。
厳密にいえば1983年のライブ映像なのだから、新しいと表現するのは違うのかもしれない。
でも私にとって新しく感じることには変わりなかった。
大人になると世界の大半を知ったような気分になってしまう。でも、実際は慣れた場所に留まっているだけだったりする。
ぬるま湯に浸かっていた自分を、40年前のトーキング・ヘッズが跳び上がらせてくれた。そんな気がした。