夜行観覧車
夜行観覧車 湊かなえ
ある家族に起きた家庭内殺人事件を家族の視点、向かいの家の視点、近所のおばさんの視点という3点からみていくストーリーになっている。
それぞれ登場人物の個性はかなり強く、引き込まれていく。イヤミス作品!!といったエンディングではないが、それもこの作品には合っていると言える。
家族それぞれの人物から見た視点が共感できるものが非常に多く、知り合いもこんな風に思っていたんじゃないかとか、自分もこんな風に見られていたのかもしれないと、まるで主演になったかのような錯覚をするくらいよくわかる。殺人という事件は衝動的なものもあるかもしれないが、だんだん意思が固まっていくというのはとてもわかる気がした。最近はうつ病が問題になっているが、ある日突然というより少しずつ精神が蝕まれていくものだと思う。それが積み重なって解決法として浮かぶのが「命」を扱う事で自らの命を絶つ、原因となっている者の命を奪う。そういったことについて自分は考えさせられた。ほかにも登場人物のセリフで刺さるものが沢山あったが、読み手によって感じ方は変わってくると思うので、是非、読んで試してみて欲しい。