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ポイズンドーターホーリーマザー



ポイズンドーターホーリーマザー 湊かなえ


ほとんどが母と娘を題材とした短編小説6作が入ったこの小説。

自分は娘になったことがないので深く共感できたわけではないが、親と子の考え方の違いという点ではよくわかるなと思う部分も多々あり、また湊かなえ作品の醍醐味といえるイヤミスも妙な後味が心地よくなる。

母から見た娘、娘からみた母、第三者から見た母、娘。それぞれ同じ人物でも見え方はまるきり違って見えるのは会社の上司と部下、教師と生徒、彼氏と彼女といった別の人間関係に置き換えても言えることだなという当たり前のことをよく考えるきっかけになった。人の人生、考え方、とらえ方はそれぞれ違うし、理解したつもりになったり分かった気になることもあるが、その気持ちを抱いてしまう事が自分自身をミスリードしてしまい、全部気が付くころには修復できなくなったり、取り返しがつか無くなることもあるんだと。

「うまくいかなくなったら全部母のせいにしてだめな原因はすべて外にあると言い聞かせている」みたいな印象的なセリフがあったが、まるで昔の自分に言われているような気になってハッとした。自分の母もこの作品に出た「毒親」に分類されるような人だったような記憶が濃いが自分のうまくいかない原因全てがそのせいなはずがない。それは自分で気が付いたことだが、もしこの作品に出合ってなくて、今そう思ってた人がいたらぜひ読んでみてほしいなと思った。

親だから必ずしも大切にしなくてはいけないとは思わない。しかし自分に見えている親ははたして親から見た親と同じなのか、そういった目線を持ってみることでなにか変わるかもしれないと、そう思った。


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