あの人ねえ、女ぐせが悪いので有名なんだよ/ 八胞 / HANAE M 作
「あの人ねえ、女ぐせが悪いので有名なんだよ」
とサークルの同期に聞かされたのは、20時を回った頃の副都心線でのことだった。「あの人」とは我々が所属している演劇サークルの部長のことである。背は高いし声も低めだったけど、女の人だったはずだ。「男ぐせじゃなくて?」と私は聞く。「女ぐせであってるよ」「あってるんだ」
私はふうん、と思う。
朝早くの練習でも誰も待たせずに部室の鍵を開ける人で(待たされたという話を聞いたことがない)、後輩の遅刻や無断欠席をやんわりと、しかし己の非をはっき