第14回「そいつ」2024年1月❶
週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。
ルール
毎週1回「遊星からの物体X」をみる
毎週1回みて、気づいたことを書く
木曜または金曜の通勤時間で見る
ネタバレとかは気にせず書く
基本は通勤中のiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
ということだったが、最近はもう気にせず休みの日に家で見ることも増えてきた。気にせず楽しみながら観る。
第14回目 2024/1/7
前回からの道のり
(前回の記録からわたし自身の変化)
1/1(月)
今年もよろしくお願いします。
年を越す0時0分の瞬間は、Der Planのgummitwistを夫婦で踊ってました。
元旦は私の実家にて家族集合。美味いものを食いながら談笑し、盛り上がる。
と、全員の携帯から、ものすごい警報。そして、揺れ。窓を開ける。わりと強いし長いし何があるかわからんよ机の下に入ろう、とみんなで潜る。机の下、妻や父の顔を見て、正月だよな、、と考える。少し経って納まったが、ニュースでだんだん事態を知る。北陸出身の友達も実家に帰ってたりしないか…とどんどん心配になる。
帰り道、兄弟と妻と4人で車で帰る。兄2人がソウルやファンク、時々アシッドジャズ的なものをかけている。今年は何をすべきかなと考える。
兄2人に、ブログいつまで続けるの?と聞かれる。わからないし、1つのものを見続ける練習も兼ねてるんだよね、と話すと、まあ映画を変えてみても良いんじゃない?とも言われる。
映画を変えるのもいいかね…と考える。
帰宅してTVをつけるとあらゆる番組が中止になり、ニュースになっている。ひやっとした気持ちが募り、北陸出身の友達にLINEしてしまう。無事が確認できたが、きっと彼こそボクとLINEしてる場合じゃないくらい、ヒヤヒヤしてるはず。
風呂に入って、少し考える。今年は何やろうか考えつかないけど、もう少し物体Xは続けよう。やれることやるしかないな。
妻はバンドのCDを作るとか目標を掲げていた。つまり私も。頑張ろう。
1/2(火)
妻の実家へ。姪甥が4人いるので元気な食事会。13時ごろ約束していたので、小4の姪と僕と妻と3人で映画に行く。
まだ難しいかなと思ったけど「ウォンカとチャコレート工場のはじまり」を観に行く。
映画自体は結構面白かった。
姪は映画館人生2回目で緊張していた。
ストーリー分からなくていいから、画面や音の面白さに包まれてほしいと期待。楽しんでいたっぽいが、ストーリーはわからないし、実写映画を大画面でみるのが初めてで疲れていた。だよねまた来よね、と、手を繋ぎながら、映画の曲を鼻歌しながら歩いた。絶対映画館にまた連れ出す。
1/3(水)
家で勉強。三が日から働く妻の気晴らしに、近所の公園を散歩。大きくて林が茂っていて良い。2人でキノコや粘菌、苔などを探すべく探索。キノコの同定は出来ないが、この辺はサルノコシカケっぽいものが多い。妻が1人で見つけた穴場を教えてくれる。菌とか虫の世界に正月はないよな。
去年、この本を読んでから倒木をみるとワクワクするようになってる。
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1653-2.html
菌や植物、虫はすごい。
1/5(金)
勉強、家事
1/6(土)
妻と一緒に高田裕大展。2回観てもおもしろー。今回はアーティストトークも聴けて充実。和やかな博物館を出ると、外ではサグいヒップホップで踊ってる子供達に驚く。
友人と食事。
1/7(日)
オーブントースターで餅を温めて、YouTubeを観ていたら、ボッ!と音がする。
オーブントースターの餅に火がついてる。ヤバっと思うが消火スプレーのプラフィルムが剥がれない。剥がしつつ、フーッと息を吹きかける。だめだ燃えまくる。トースター機体に火がついたらやばい。
地震の火災映像、小倉の火事の映像、そして物体Xでの火など頭にちらつき、でも焦ってる割に手つきは落ち着いており、かといって良い対策も思いつかない。ぶフーッ、ぶっフーッと強めに吹くと、ついに消えた。
昼からは大学の部活同期と毎年恒例の食事。10年くらい?同じ公園、同じフォーメーションで写真を撮り続けてる。
いまもなお劣等感感じるような才能ある同級生ばかりなので、会うと元気出る。ダラダラと家族や持ち家など近況を伝え合ってる。たいしてトピックがない僕はみんなの学生時代の持ちネタを思い出しながら聞いて過ごした。変な人たちだな。ニコニコして帰宅。
休憩してから、遊星からの物体Xを観る。
物語の差し出し人
今回は画面の中で移動する人たちをメモ。映画とか演劇の勉強したことない自分には、どういう観点でメモすれば良いかもわからないためとにかく思いつくことをメモ。他の映画に比べて動きが少ないし、舞台も狭いのはマシと考えるべきか。今回は失敗に終わっても、いつかの役に立つだろうという程度の姿勢で開始。
UFOが地球に落ちるシーン→タイトル→暗転。山間越しの向こうから、小さくヘリがこちらに向かってくる。物語の始まりを遠くの小さな小さなヘリに託している。観ている我々がヘリに気づくには、あまりにも小さい変化だが、そこはヘリコプターのプロペラ音によって近づくものを予期させている。
その後、ヘリコプターのボディを映すショット、ノルウェー人の顔のショットを繰り返す。
我々観客にはまだ何も知らされていないが、どうやら物語が確実に始まっていて、そしてその物語は「向こう側」からやってきていることを悟る。
見落としそうなほど小さかったヘリも今では近距離で見上げるほどになった。奥から手前の動きが物語を運んできた。それは同時に、我々の中にも「こちら側」という意識が生まれた瞬間とも言えるかも知れない。
右から左へ受け流す
奥/手前移動によって幸先よく、犬ノルウェーの追跡ゲームが運ばれてきた。
ヘリは犬の上を飛び回り、奥から手前に追い越したり、方向転換、はたまた方向転換をして追
ここで気づいたのは、いくつかの方向転換の連なりで「奥→手前」という動きから「右→左」という動きに変わりつつある。
つまり、物語を連れ込んできた「向こう側」は「画面右」に転換されていってる。
その1つの見せ場が、ヘリを止めノルウェー人が銃を撃ちながら基地に乗り込むところ。
アメリカ隊は、画面左側に右向きに並ぶ。
そこへ犬とノルウェー人は、画面右からどんどんと迫ってくる。こうして「左:右=こちら:あちら」という構図が発生。ここまで横スクロールな構図にするのは妙な感じもする。画面左の終着点であるアメリカ基地に向かって犬まっしぐら&銃を乱射。左の終着点からはギャリーの銃一発。右側からの遣い、ノルウェー人は倒れ、左のこちら側は死守できた、はずだった。
右との遭遇
この左右の関係は、このあとノルウェー基地に向かう時も発生する。
ヘリコプターは出発すると右向きに飛び始める。ノルウェー基地に到着したマクレディとドックは、ノルウェー基地の奥の奥へと進んでいく。じつはこの時も、2人の向かう先は「右向き」。この右側のノルウェー基地の終着点には、物体Xが眠っていた氷。
マクレディとドックはあちら側を進んだ先で、何やら得体の知れない物語に気づき始めてる。(「右」とは「未知」)
この後、UFO現場にいくシーンがあるが、この時もヘリコプターは左から右に向かう。
右、つまりあちら側の本当の終着点が、このUFO現場である。物語の差し出し人の住所は突き止めた、しかしその本人はいない。それ以上は右に行くことと、追跡することは出来ず、諦めることに。
画面の中での動きで、右と左という単純な動きしか取り上げられないのは大変恥ずかしが、でも前半はこれは重要だと思う。
カメラで撮っている以上、画面の左右なんてものは、カメラの位置を変えれば簡単にひっくり返すことができる。
それでもこうやって「左:右=こちら:あちら」という構図に押さえておいた方が、本作の導入は分かりやすくなり、万人にとって面白い。
1951年「遊星よりの物体X」における飛行機の移動でも、この「左:右=こちら:あちら」という構図がしっかり統一されていた。
古典的なセオリーに則って、ジョンカペがカラブツを撮っていることがよくわかる。
犬THINGが右向きゃ尾は左向き
あえて上記の左右の観点で、犬THINGの戦いを見ると、ちょっと面白い。
左:右=犬THING:アメリカ隊となっている。火炎放射器を放ち終わると、アメリカ隊員たちは画面右側から、左側の燃え滓にライトを当てる。
つまり、ここではアメリカ隊が右側。さっきと逆になる。偶然撮りやすいから…でも済む話だが、ちょっと意味ありげに考えてみる。
つまり、左(自分たちの陣地)に入り込まれてしまったこと。自分たちの左側は決して平和ではない…という事態を隊員に突きつけているのかも。こことUFO後は、疑心暗鬼のサスペンスとなるためか、分かりやすい左右の構図が減る。
カメラを逃すな
狭い空間での物語で部屋数が限られてる割に、建物の構造の把握が難しいのは、廊下を移動するシーンが少ないからかも知れない。
廊下を移動するシーンというと下記の通り。
【①ノウルズがローラースケートで走る】
足元スケート→ノウルズ頭後方から追うカメラ
【②犬THINGが部屋を回る】
低い位置でゆっくりと歩く犬
【③ブレアの暴走をマクレディが止めに行く】
足元からマクレディの顔を見上げ→マクレディ視点の主観カメラ
【④ウインドウスが銃をとりに走る】
ウインドウスの背中から追っかけるカメラ
【⑤基地を爆破しながら回る】
爆破シーンと挟みながらの移動。
①では、南極とローラースケートというギャップが挟まれることによって、ノウルズの能天気なキャラが伝わる点、そして後半はローラースケートなど乗ってられない状況とのギャップが際立つ点が面白いと思う。
②は他と異なり、走らずにゆっくりと摺り足だ。犬THINGが何か企んでいるという予感をさせる。
実は③が特に面白いと思い、今回は書いている。
この映画は狭い空間が舞台というだけあって、物語が進展する場所には誰もが駆けつけてくる。でも大体の人間は、物語が進展する場面に、必死に駆けつけるその姿は映してもらえず、現場で、やっと画面に顔を出せる。
しょせん物語は駆けつける人間が間に合わなかろうが、すでに追いついてるカメラが責任もって撮ってくれてる。
このマクレディのシーンだけは違う。マクレディだけが、正面から並走するカメラが撮影し、さらには主観カメラの特権を得ている。駆けつけてる姿、顔をしっかりと撮る。マクレディが来なければ、物語は停滞してしまう…という宣言だ。このマクレディへの絶対的な信託は、マクレディの痛烈なパンチにより落ち着く。
逆に、④というのは、血液を捨てた犯人探しの小競り合いという一つのイベントを、ウインドウスという男が、進展のきっかけを持ち逃げしたとも言える。ただし、背中からしか撮ってもらえない人間には行き止まりが似合う。手に入れたばかりの銃はすぐ床に落ち着く。
⑤については、それまで物語の進展のあらゆる可能性と一緒に基地を破壊していく。物語の主導権、そしてカメラを自分たちから奪われないようにしてる…と言うのはすこし調子に乗りすぎだろうか、でもちょっと面白い。
補欠と退場
ここまで考えると、UFO後の物語の進展は基地の中で行われる。逆に基地の外に出る、というのはどういう時だろうか。
大まかに言えば下記4点。
①物体Xが闇へと逃げる
② 物体Xなど何かを探しにいく
③ 物体Xと怪しいものを燃やす、破壊する
④ブレアを倉庫へ運ぶ
①について言えば、当たり前だが人間なら外には逃げない。人間にとっては、闇に出てしまえば帰ってこれない可能性が高い。つまり、物語には再起不能となる。
②に該当する「マクレディとノウルズがマクレディの小屋に向かうシーン」と比較したい。
マクレディを置いてけぼりにしたノウルズ。彼が雪嵐の中でも闇から帰れたのは、基地とロープで繋がれていたからだ。
しかしマクレディはロープを切られてしまった。なのに、マクレディは基地へと帰ってきた。そのため彼が物体Xという疑念が仲間たちの中でたかまる。
つまり、この世界の人間たちにとっての基本ルールは「闇に出る=再起不能、退場」ということを示しており、このルールが利かないのが物体Xとなっている。
物体Xを再起不能にするには、③焼き払うしかない。ブレアモンスターの時は屋内で燃やしているが、被害も大きいため屋外が無難だろう。
そして特殊なのが④ブレアを運ぶ。物語の進展に駆けつけられなくなるように、基地の中でもない、そして闇でもない、その中間地点である倉庫に運ぶ。いわば補欠組となる。もちろんこれが人間ならば。
ところが人間でない場合には、基地も倉庫も闇も関係ない。倉庫の中で静かに、次なる物語のキッカケを組み立てている。人間にとっての退場も補欠も利かない、ルール無用な生き物。
来週に向けて
今回は、自信がないものの「移動する場面】を思いつくままに取り上げた。
面白かったのは物語の進展には、だれかが物語を運び込んでくること、そこから物語を持ち逃げしようとすること、そして物語の進展に駆けつけようとしていること(裏返せば周りを待たせること)が起きている、という発見だった。
もうすこし突き詰めるともう少しおもしろい考えにもなりそうだが…1週間ずつの進歩ではなかなからそこまでは。すこしずつ少しずつ。
毎週恒例のアイデア書き足し。
音無し鑑賞
光のことをもっと考える
顔、そ視線
マップ使いながら視聴
カメラの位置
BGMの特定
別の言語の字幕/吹替
そろそろ原作読む
物語に駆けつけるキャラ
そろそろオーディオコメンタリ分析
運ぶ、壊す、直す人
小道具などの記号
立場の逆転
無理だったら普通に楽しむ。
好きな映画のいいところは、普通に楽しめることだと思う。