#0 ノイズ ((試作品))

『_____あ、まだここに居たのかお前。』
窓と網戸の隙間、そこに放置されっぱなしの蛾の死体に俺は話しかけた。



ここは23XX年。
太陽は11年おきに極大期と極小期を繰り返す。およそ330年ほど前、太陽は急速な極大期を迎え地球温暖化が注目を浴び、最高気温で摂氏41.1℃が計測された。その数十年後、太陽は極小期により小氷期を迎える。小氷期は250年以上続き、その後100年経って今現在に至る。
この100年で人類は技術的にも生物的にも目まぐるしい進化を遂げた。もっとも大きな変化といえば、人々の中に魔術"スペル"が使えるものが発見されたという事だ。
"スペル"とは、先天性多様型超異能力のことを指しており、自然界では説明できない非科学的な力を持っている者の力そのもののことである。スペルは親から子へと受け継がれるためその保有個体数は近年増加傾向にある。何故そのような進化を遂げた人々がいるのか今日も研究は続いているが、原因は依然分からないままだ。先程説明した太陽の不規則運動による急激な気候変動によって何らかの影響を受けたのではないかという仮説が今最も有力な説とされている。


「XXX年前、世界では魔物別名悪魔とも呼ばれる類の生物が発見され、人類魔物間で戦争が勃発しました。えー、この戦争のことを第3次魔物撲滅世界大戦といい....」
近代社会学。ここ300年で起きた大規模気候変動、スペルの発現、そして本日はそれらより少し遡った世界戦争についてらしい。小中学生と同じような内容を何度も何度も説明されればそろそろ内容に飽きてきてしまう頃だろう。俺は窓の外を見て大きな欠伸をひとつ。昼を終え、6限中頃に差し掛かり眠気が襲ってくる時間帯も相まって授業内容は耳から耳へと抜けてゆく。もう少しで夢の世界へと旅立つ手前、背後から肩を優しく叩かれる。
「___ちゃん、ねえ、じゅんちゃんったら起きてよ。あ、起きた?ふふっ、おっはよー!!」
後ろの席の幼馴染が授業中にも関わらず元気な目覚めの挨拶をしてくる。その声に驚き完全に目が冴えたため条件反射で後ろを振りむく。すると、思いの外至近距離ににこにこ満面の笑みの顔があった。なにか口にしようとしたその時、先生の声が前から飛んできた。
「おい、黒木!また喜久川にちょっかいかけて、ダメだろ。...ったく、推薦もらって少し気が緩んでるんじゃないか?」
どうやら、陽(ハル)の声が大きかったせいで俺が陽にちょっかいをかけられてると思ったらしい。陽は少し眉を下げ、すみませんーと間延びした謝罪をする。
「じゃあ、黒木。この世界大戦が3度に渡り行われた理由を説明しろ。」
先生が指し棒で黒板をかつかつとつつく。
「...んーと、p157の部分ですね。第1次、第2次世界大戦は1914年からと1939年からとり行われ、その年代には人類はスペルを保有しておらず、_______ 」
陽の説明が始まり、先生のスライドが移り変わって行った。ウトウトして遅れた分も含め今映し出されている分だけでも内容はよく理解出来ていないがとにかく自己のパッドに打ち込む。それでもその後10分の間に俺は夢の世界に旅立っていったのだが。

目覚めたのは、授業が終わって既に放課後になってからだった。外ではサッカー部が元気にアップをする姿が見えた。今の技術では室内の気温、湿度、抗菌度等々様々な要素を99%コントロールできると言える。しかしそれによって人間の免疫&環境適応能力が低下していることが医学研究により明らかになった。その為気温や湿度が天気で異なる室外の競技が人気を呼び、近年は教育の場もビンテージな環境を提供できるように工夫を凝らしてある。そのかいあり窓を開け、外の空気を自由に取り込むことができる。季節は秋だ。肺がスッとする様な風が教室に入り込む。中学三年の俺達もつい最近引退したように思えるがもう2ヶ月も経ってしまっていたのかとつくづく感じさせられる。
「やってるねぇ、懐かしいの??」
先程までは教室にいなかったがいつの間にか隣に立っていた陽を見上げた。手にはハンカチを持っておりどうやらトイレにたっていたようである。帰ってしまったのだと思っていた。
「んー、まあ。半袖寒そうだなって思って...」
自分も去年一昨年はこんなふうに半袖でグラウンドを駆け回っていたのだが。陽も同じことを考えたのだろうか、少しくすくす笑って僕もじゅんちゃん寒そうだなってずっと思ってたと言い、僕はサイエンス部だったからなあ〜運動音痴だったしと、ぼやく。するとふと何か思いついたようにはっと天井を見上げ次に俺の机をばんっと両の手で叩いた。
「てゆうか!!!なんで授業寝ちゃったの?!せっかく起こしたのに〜。あそこの範囲受験でよく出るんだよ、ちゃんと理解してないと。」
興奮してだんだん声が大きくなってゆく。最もな意見に悪いとバツが悪そうに謝る。すると、小さく溜息をつき先程まで元気な声で俺の授業態度を非難していた声が少し控えめに質問してきた。
「今日の授業後半で説明されたのここだけど意味わかる??ノートも写してないだろし、教えようか?」
何かと言って親切だ。それに物言いからは想像出来ないだろうが、成績学年トップである。そんな奴に教えて貰えるともなれば悪くない。じゃあ頼むと言いかけたその時被せるようにクラスメイト2人が野次を飛ばしてきた。
「学年トップの八方美人君は、他人の勉強のお世話だってよ」
「こんなシーズンに人に勉強教えようなんて。なに??推薦枠獲得して自分は賢いんです〜だから受験終わりましたよって言いたいんですかぁ?」
完全に陽に対する当てつけだった。既に受験シーズンに入りピリピリする気持ちの中、全国でも屈指の難関私立にサラリと推薦で入られてしまうと野次を飛ばしてしまいたくなるのも分からなくはない。しかしなんともテンプレのような野次に呆れてしまいそうになる。陽も慣れているのか聞こえているはずだが表情一つ変えず説明を始めた。
「.....大丈夫か???」
先程のことをどうか聞かない方がいいのか迷っているとかなり時間が経ってしまった。しかし少々迷いながらも声をかける。するとぱっと教科書から顔を上げにこりと笑ってみせてくれた。
「さっきの野次のこと??全然大丈夫だよ。えへへ〜、まあ僕賢いからさ。」
陽は心底気にしてなさそうに、冗談ぽく言ってのける。その笑顔に安堵する。
「なんというか、さすがだな」
さっきのやつには八方美人だなんて言われていたが、人に分け隔てなく接したりどんなときも笑ってみせることは思いの外に難しい。もちろん本人には言わないがそんな優しく気配りができるところが友人として尊敬し、好きだった。すると俺の言葉に、ん??と再び顔を上げる。
「いや、なんでもない。てか、トイレ行ってきていい??」
えー、今?!と言いつつ行くように促してくれた。下校時刻が迫っているため残った勉強部分は後日に回すことになるだろう。明日も陽の放課時間は空いているだろうか?できれば教えてもらいたいものだ。そんなことを考えながら人を待たせているため足早にトイレへと向かって行った。
戻ると教室には陽が居て、待ってくれていたらしかった。机に広がったままだった教科書類はカバンに閉まってくれたようで、机には何も乗っていない。声をかけようとしたが、一点を見つめる陽の視線の先のものに気づき言葉を詰める。瞳には窓と網戸の間に挟まれ、出られず餓死したと思われる蛾の死体が映っていた。生きていた当時は綺麗な色をしていたのだろう。羽には細やかな模様がなされており、今となってはくすんでしまっているが様々な色が全体に散りばめられていた。俺の勘違いだろうか。それを映す陽の瞳は、光を宿さずあの羽のようにとてもくすんで見えた。いつもはどんな誰よりも光り輝き暖かいはずなのに。教室の入口で声も出さず立ちつくす俺に気づいたのか、陽はこちらを見て帰ろっかといつもの調子で言うのだった。


:::ノイズ舞台裏部:::
『どうもこんにちは!黒木 陽(クロキ ハル)です!』
「どうもこんにちは〜、喜久川 淳平(キクカワ ジュンペイ)です!いや〜、第1話お疲れ様でした〜」
『正確には、#0だから1話目じゃないんだけどね?まさか、本編出演の前に第0話してしまうとは思ってなかったなあw』
「ほんとに、まさか本編より先にスピンオフ的なの作るとは思ってなかったなあ、、、、、、てか!!!俺の出番今回で終わりなんだけど!嘘だよね?!?!」
『これが嘘じゃないんだよねえ、作者曰く登場シーンあったとしても大分先だって〜』
「えぇぇ、ってそうだ!!作者は今頃何してるんだよ!おい、そかせ!!!」
『作者のそかせは表に出たくないってどっか逃げっちゃた〜』
「ええ?!どんだけ表出たくないんだ??」
『初めてで拙い文章ですが、これからも精一杯書いてゆくつもりなので暖かい目で見てやってください。今後ともよろしくお願いします。との伝言でした〜』
「テンプレのような野次ならぬ、テンプレのような挨拶だな...」
『ってことでぇ!!次作予告まで僕達がやっちゃうよ!』
「次作、#1ノイズ、本編突入!陽、聖セシリア学園高校で新生活開始!!」
『新しい友達に、可愛いヒロインも登場する予感?!』
「そして、悪魔狩りをしようとする怪しい連中も動き出すようで.....」
『「次作も見てね〜!!」』

「予告ってこんなのでいいのか?」
『えっ、どうなんだろ??えっ??』



最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。 そかせ

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