イツカ

ことばのための暇くらいある。

イツカ

ことばのための暇くらいある。

マガジン

  • 今日、眠るために

  • 未遂行の日々

    推敲したら世に出せないであろう有象無象

  • ショートストーリー

  • ある日の考えごと

最近の記事

  • 固定された記事

終末と愛の旅行記~THE ALFEE アルバム『ARCADIA』 感想~

はじめに2023年9月9日、20代半ばの秋。 意を決して、THE ALFEEのアルバム、『ARCADIA』を聴いた。 1990年10月17日リリースであるというこのアルバムの存在は、実はもう少し以前から知っていた。 それでもこの日までアルバムを通しで聴くことができていなかったのは、あまりにも「絶対に好き」という予感が強かったからだ。 まずアルバムジャケットがバベルの塔。さらには、「ARCADIA」というタイトル。それに加えてWikipediaのこんな記述。 でもってコンセプ

    • 私がラブソングを書くなら

      昼ひなかの切なさに 道端の茶色いマリーゴールド 知らんぷりして通り過ぎて 後戻り後戻り ごめんね、かわいいねって笑う 夜の優しさに 月がうつす影法師と踊れば あっちへこっちへ手を取って ひとまわりひとまわり ありがとう、お上手ねってすまし顔 朝の気まぐれに あんたなんか嫌いってそっぽ向く ビルの合間におひさまのぼっても 知らんぷり知らんぷり さよなら、もう寝るよって手を振った

      • いま、びんは

        からっぽのおおきなびんに 何詰めて蓋をしようか いま、びんはからっぽ ハッカ味の飴玉たくさんに ひとしずくの海 波打ち際で踊った足跡ひとつ 夜のベランダ、ハンガー揺らす風に ひとしずくの心 揉み消したタバコの吸殻ふたつ きらきら割れ落ちたガラスくずに ひとしずくの夢 目を閉じて願いを数えてみっつ からっぽのおおきなびんに 何詰めて蓋をしたのか いま、びんはからっぽ

        • ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ

          というような声を上げております。 あれやそれがもろもろで、昨年の振り返りと今年の抱負!みたいなことを発表せねばならないのです。明日。もう今日。 (これは深夜に書いた文章です、今の私より) やだなぁーー あれ聞いて!これ聞いて!と人に話すのは大好きなくせして、自分の将来のこと、とか、未来への展望!とか、なりたい姿!とか、そういうのがとっても苦手 で。 良くないなあとは思いながらも、つい「正解」を探してしまうくせがあるからなのだと思います。 素直に頑張ったことややりたいこと

        • 固定された記事

        終末と愛の旅行記~THE ALFEE アルバム『ARCADIA』 感想~

        マガジン

        • 今日、眠るために
          2本
        • 未遂行の日々
          2本
        • ショートストーリー
          2本
        • ある日の考えごと
          2本

        記事

          人生か、否か

          (追記) 読み返したら酷かったけど再度ネットの海に流しておく (さらに追記) 酷すぎて一度下げたけど、だいぶこの頃の自分とも距離ができてきて、若さだねと思えるようになったので(偉そう?)再掲 死神は多弁。心は聞き上手。 お前はひどい奴だ。 お前の行動が人様に迷惑をかけた。 お前の発言で知能の低さが露呈した。 誤解を与えた。不快にさせた。 お前は取るに足らない。 消えてしまえ。 泣くな。ふさわしい行動をとれ。 いいのか、それはふさわしくない。お前はふさわしくない。 お前には

          人生か、否か

          8月26日に寄せて。

          366日、毎日が誰かの誕生日だ。それでも、そのうちの幾日かが自分にとって特別なのは、自分自身がその幾日かに紐づけられた幾人かに強い思い入れを抱いているからに他ならない。 たとえば。幼いころから、「その日」に誰かからの祝福の声をかけてもらってきた自分に。 たとえば。私からの祝福を、ときにはどこか照れたような、ときにははじけるような笑顔で受け取ってくれる身近なあなたに。 たとえば。顔も声も知らないけれど、お互いの「大切なもの」でつながった、喜びを共にできるあなたに。 そし

          8月26日に寄せて。

          夜の町にて とある女性の場合

             長い夜を歩いている。    履きなれたスニーカーでアスファルトを踏みしめ、一歩ずつ進んでいく。どれだけ時間が経ったかもわからない。ただ、歩いていく。かすかな月明かりを受けた周囲の家々はどこまでも他人行儀で、のっぺりとした壁はこちらに背を向けている。空気はじとりと生臭く、一息ごとに私の肺を濡らしていた。きぃんと響く静寂が無防備な身体に侵入して胃の中でうごめいて吐き気を誘う。最低な気分だ。    私は誰かを探していた。彼女の影は記憶の中で遠く、光の薄いこの世界ではぼやけ

          夜の町にて とある女性の場合

          コスモス・ユニットバス

              こんにちは。もしかするとはじめまして。いかがお過ごしでしょうか。     私が外出をしなくなってからもうふた月ほどが経ちました。いえ、正確なところはどうもわかりません。実際、私の持っているこのスマートフォンが示している日時が正しいという証拠はどこにもないのですから。ここでの暮らしもなかなか悪くはありません。だけれどもやっぱり外の人間と話すことも重要なのだそうです。それで、届くかどうかもわからないこの文章をしたためているのです。  これは断固として言い添えておきたい

          コスモス・ユニットバス

          ある日の考えごと 蛞蝓 namekuji

            なぜそんな話になったのかはとんと記憶にない。   父親の59の誕生日と、それから両親の結婚25周年の祝いを兼ねて少し豪華な昼食に出かけた日。ディスタンスな配置で、趣向を凝らした季節の料理を口に運びながらする話でもなかった。   とにかくなぜだか蛞蝓の話になって、そうしてふと思ったのだ。 「蛞蝓って、自分と外との境界が曖昧そうだよね」 「蛞蝓に自我はないよ」   私によるファンタジックな問題提起VSリアリスト父。一刀両断である。   そうなんだけど、いやわかってますけど

          ある日の考えごと 蛞蝓 namekuji

          ある日の考えごと 木 ki

            なぜ子どもは木に登るのだろう、と考えた。   お彼岸シーズンである。三連休ということもあって、家族で連れ立って墓参りに出かけた。空は青く澄み、シジュウカラの声が聞こえる。かなり大きな霊園(東京の、とつければ、ある程度は想像がついてしまうだろうか)であるため、霊園の中には道が幾本も通っており、その脇には大きな木がどっしりと立っている。   墓石をこすったタワシを備え付けの水場で洗いながらふと顔を上げると、すぐ上に枝がしゃなりと垂れ下がっていた。 若い黄緑の新芽にと紅しょう

          ある日の考えごと 木 ki