これからの未来、わかることとわからないこと①
月日の経過は早いもので、時の流れについていくのがずいぶんとしんどくなってきつつある。ちょっと前までは日本のあちこちで淡いピンク色をした桜が新学期の始まりを知らせていた。
気がつけば5月も終わる。山にそびえ立つ木々が新芽を出してみんなの目と精神を癒してくれる。俺はこの時期が一番好きだ。湿度による鬱陶しさはないし、暑さによるイライラもない。まさに最高の二文字に限る。
いつもなら、快晴が続く毎日を外に出て、ぼうっと海や山を眺めてのんびりとしているのに、今年はそうはいかない。あの例のパンデミックは、俺から海を見るという癒しと至福を封印しているのだ。
そんな窮屈な生活を強いられてはや2ヶ月。はじめの頃はどれほどのストレスに体が蝕まれるかと恐れ戦いていたが、時が経過するにつれて、この生活に多くの楽しみと喜びを見出しつつある。その原動力が読書と筋トレである。(筋トレについてはまた日を改めてみっちり書くつもり。)
この二つは今の俺の日々の生活の大黒柱になっている。
前にも言ったかもしれないけど、俺はつい数年前までは読書とは無縁の生活を送っていた。それが大学院に進んだことで本を読むきっかけを与えてくれただけでなく、書物が自分の人生を大きく変えようとしている。
こういった恩恵を感じるたびに、「あーあもっと早くから本とも友達になるべきだったなぁ」と思っている。
まあ前置きはこれくらいにして、今日はある1冊の本を数回に分けて吟味していく。その本とは、リンダ・グラットン著の『ワーク・シフト』である。
サブタイトルにもあるように、この本では今から5年後の2025年に訪れるであろう未来の社会をあらゆる研究を通して描いたものである。
最近すごく俺に刺激を与えてくれている良き友人が、この本を勧めてくれたおかげで、読んでみたいと思ったのがきっかけだ。それまでこういう経済的な本はまったく買ったことも読んだこともなかったけど、今は違う視点から物事を考えることが存分に出来るから思い切ってページを最後までめくることにした。
全体は4部構成。
第1部は未来の働き方を変えようとしている要因を5つ挙げながら論じている。
第2部は未来に訪れるであろう「マイナスの、暗い日々の予想」を、
第3部では反対に、「プラスの、明るい日々の予想」を、
第4部で「どのように働き方を変えていく必要があるのか」を述べている。
今回は第1部の未来を変える5つの要因について見ていくことにする。そうはいっても、ただ要約をしたり解説をするのではなくて、自分の考えや実体験などを「適当に」綴っていく。
実際に中身に入っていく。第1章に入る前に序章で、この本がこれから論じようとしていることを5つ紹介している。
・いま、起こりつつある変化
・なぜ、未来を予測する必要があるのか
・「群衆の知恵」で描き出す未来
・未来にいたる複数の道
・好ましい進路を選び取るために
ここは軽く紹介する程度にとどめておいて早速第1部を覗き込むことにする。ここでは、「働き方や仕事の未来を変えるものは一体何か」を問題にしており、その要因を5つに分類するとともに、どのような変化を遂げると予測できるかを32の現象を想定しながら論じている。細かく書くとキリがないから32個すべての現象の全ては紹介しない。
1 テクノロジーの進化
これは今に限ったことではなく、常に少しずつみんなの働き方を変えていることは言うまでもない。特にインターネットの普及によって社会的なつながりが地区から県へ、県から全国へ、全国から世界へと広がっている。
将来的には50億人がネットで結ばれるのではないかと著者は述べている。
他にもネットなどによるテクノロジーの躍進で「知識がデジタル化」することによって、教育をより受けられやすくなったり、バーチャル空間が生まれることにより、自分の分身となる「アバター」も出現し、広く用いられるのではないかと言っている。
2 グローバル化の進展
今までは地域密着型で働くことが多く、海外に出てまで仕事をする方が稀有だったけど、今後はこれが逆転するとともにこの傾向がより顕著になる。つながりが国内から全世界に広まったことで各国との貿易も盛んになり、調査によると、1950-2010年の間に世界の製造業の貿易高が60倍にも拡大したらしい。
また、グローバル化によって先進国だけではなく、新興国が頭角を現してきており、なかでも中国とインドの経済発展は目覚しいものになった。
反対に、ネガティブな側面として「世界中で都市化が進行」したり、あらゆる地域に「貧困層」が出現する。要するに富んでいるものと貧しいものとの差が誰の目に見てもわかるようになると著者は言う。
3 社会の変化
テクノロジーの目覚ましい進化、激しいグローバル化、そして後に述べるけど人口の構成と長寿化によって、未来の社会が変貌を遂げるのは必至だが、著者は7つの現象を挙げて社会変化の要因を述べている。
特に印象的やなと思ったものをいくつか紹介しておくと、まず「家族のあり方が変わる」こと。グローバル化によって、家族揃って一つの家に住むという習慣はだんだん衰退していくだけではなく、養子縁組や離婚・再婚、義理の親やきょうだいと暮らすケースも多くなるのではないか。
他にも、女性の社会での活躍が見られ、力や立場が強くなると同時に、仕事オンリーの生活から脱却して仕事と家庭の両立を考える男性も増えることで、家庭における男女関係の変化を著者は予想している。
もう一つは、工業化によって作業が効率よく行われたことで「自由な時間」が大幅に増えた。今後は1日8時間も働くことが非常識になっていくと思うから、人によってまちまちだが寝る時間よりも自分の好きに使える時間の方が多くなるんじゃないかと俺は予想している。
4 人口構成の変化と長寿化
著者はこの要因を「世代」「出生率」「平均寿命」3つの観点から説明している。
まず世代だが、これを5つに分類し、伝統主義者世代(1945年頃生まれ)・ベビーブーム世代(1945-64年生)・X世代(1965-79年生)・Y世代(1980-95年生)・Z世代(1995年以降生)としている。
こうしてみると、ここ数十年経済を動かしていたベビーブーム世代の引退が相次いでいることから、後継者不足や単純に労働者不足も現在多くの先進国で生じているし、今後はさらに顕著になる。
また、世代によって育った環境が大いに異なることも見逃せない。ベビーブーム世代の常識とY世代の常識とでは180度違うので、価値観の相違から起きる問題も少なくないので、今後の経済を支え、発展させていくにはこの問題の早期解決が不可欠になるのは間違いないと思う。
出生率について先進国では、ベビーブーム以降下がり続けており、そのせいで少子高齢化の進行が激しく、人口を維持することさえ大きな壁となっている国もいくつかある。それと反対に、新興国では出生率が急速に上がっている国があって、アフリカやインドに特に顕著である。
このように、国や地域で出生率が違えば労働力と技能の供給に格差が生じて国際移住が活発になるだろうと著者は言う。
最後に平均寿命。人類の歴史を見れば確かに医療の発達などで一人一人の寿命は伸びてはいるけど、だからといってこのままどんどん生きていられる時間が長くなるかと言うと、一概にそうは言えないんじゃないか。実際、この項目については明白な根拠や予測が書かれていないから、主張としては弱いものになってしまうように感じた。
5 エネルギー・環境問題の深刻化
個人的にはこれが一番肌で実感できる項目じゃないかなと思う。久々に足を運んだら街が大きな変貌を遂げていてさらに多くのエネルギーが使われていたり、前までは辺り一面が自然で溢れていたのに、知らぬ間に木々が伐採されて新しい建物ができていたりとエネルギーの使用量が年々日に日に増しているのがよくわかる。
この問題はなにもここ数年前のことではなく、第一次産業革命から悪化してきて、今では歯止めがかからない状態である。
ちょっと前に、パンデミックによる世界各地の自粛ムードによって環境汚染が一時的に回復したというニュース記事を見かけた。有名なところだと、アメリカのロスやインド、ローマやベネチアなど。
他の記事では、環境汚染がパンデミック前と比べて17%落ち着いたとあった。「おー結構よくなったな」と思ったのも束の間、次の一言に俺は唖然とした。
「でもこれは2006年の時の環境汚染レベルと同等である」と。実はそこまで回復していなかった。と同時に相当なまでに地球は汚染の一途をたどっていることを痛感した。
「パンデミックの出現は環境汚染に対する自然からのメッセージである」という言葉をどこかで聞いて、まさにその通りやなぁとうなずいた。確かにこの問題は早急に対処しなければいけないけど、現実には相当に厳しいと、もっと言えば汚染の進行は止められないと思っている。
話は脱線したけど、著者はこれらの問題で今後引き起こされる現象を3つ挙げている。
・エネルギー価格の上昇
・環境の惨事によって住居を追われる人たちの出現
・持続可能性を重んじる文化の形成
こういう風に言ってしまうと、すごくマイナスの面ばかりが気になってしまうけど、新たなエネルギー革命を起こせる可能性もあると著者は最後に言葉を添えている。
すごく簡潔に書いたけど、これが第1章のだいたいの内容である。
まだ読み始めの段階にすぎないけど、この時点で俺は未来を結構悲観視していた。この後第2章で暗い未来の描写を読んで、さらなる悲観に陥るのである。
続く