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「相手をよく知る」の落とし穴

京大卒元メガバンカーの総一郎です。


人間関係を良好にするうえで「相手をよく知ること」が重要とよく言われる。

これはもはや説明不要だろう。

相手がどんな話題を好きか知っていれば話も盛り上がるし、

相手がどんなことに怒りどんなことに喜ぶか知っていれば、相手を怒らせたりするのを避けることが出来るし、喜ばせることも出来る。

相手がどんな考え方をするか知っていれば、言葉に出さない行動や表情から何を考えているかを推測することも出来る。

ただ、一方で、落とし穴も有る。

今日はそんな話をしたいと思う。

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▼「相手をよく知る」の落とし穴
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友達にしろ、家族にしろ、恋人にしろ、関係が長ければ長くなるほど、当然お互いのことをよく知るようになる。

良く知っているからこそ阿吽(あうん)の呼吸のように、

「このタイミングで言う『あれ行きたいよね』の『あれ』はカラオケだな」とか

「何も言ってないけど怒ってるんだろうな」とか
「気丈に振る舞ってるけど結構つらいだろうなぁ」とか
「表情には出さないけどきっと楽しんでるんだろうな」とか

分かるようになったりする。

良く知っているがために、自分の中で「彼・彼女はこういう人間だ」というイメージが確立する。

冒頭で言ったように、ここまでは良い。

ただ、「彼・彼女はこういう人間だ」というイメージ、「彼・彼女はこういう人間だ」という記憶を信じすぎると問題が起きる。

「え、でも昔こう言ってたじゃん」とか
「そんなこと言ってるけど、本当はこう思ってるんでしょ?」とか

自分の記憶の中の「彼・彼女像」と一致しないと、目の前の彼・彼女の方を疑い出す。

今目の前に彼・彼女がいるというのに。

「たしかに昔はそう言ったけど考えが変わったんだよ」とか
「いやいや、そんなこと思ってないよ。本心で言ってるんだよ」とか

言ったところで、「彼・彼女像」が鮮明であればあるほど、

「そんなはずない」
「嘘つき」

となってしまう。

自分が一年前や二年前と価値観が変化しているように、当然、相手も価値観が変化し、良い方か悪い方かは分からないが成長をしている。

ただ、そのことをついつい忘れてしまうのだ。

自分の記憶の中の「彼・彼女像」がもはや古いものになっているのに、それに気づくこと無く、あろうことか目の前の彼・彼女が嘘をついているように感じてしまう。


言うは易く行うは難しなのだが、この問題の解決策はシンプルだ。

というか解決策と呼べるほどのものでもない。

「今目の前にいるその人が、”記憶の中のその人”とは全くの別人だと思い接する」
「今日の彼・彼女は、昨日とは別人だと思い接する」

というだけのことだ。

ただ、特に親子や恋人、夫婦など極めて長い時間を共有をしているとこれがまた難しい。

自分と一緒に暮らしているのだから、同じように新しい経験をして価値観をアップデートしているはずだ…とついつい思い込んでしまう。

「これくらい分かるだろう」
「この前一緒に聞いてたじゃないか」

なんて思ったりする。

ただ、目の前の彼・彼女こそが事実だ。

"記憶の中の彼・彼女"は、ヒントにこそすれど、事実ではないと肝に銘じておかなければならない。

僕は結婚生活と離婚を経験したおかげでこのことに気づくことが出来た。

別に後悔をしているわけではないが、もし結婚生活を送っている中で夫婦二人がこのことに気づいていれば離婚することは無かったかもしれない。

どんな相手に対しても常にこのことを忘れないようにしたいものだ。

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