詩『打』
真実はそのまま言うべきではない
写実的に切り出すのは得策ではない
技巧的に表現するのが詩歌
読者のために書くのが小説
きれいにきれいに包む本音
馬鹿正直は社会性を疑問視される
集団心理のなかでは思考停止も正義
自分をごり押しするのはよくない
他人を思いやるべきである
きれいにきれいに包む建前
心の輪郭にあるささくれは
砕けたばかりのオブシディアンだ
鋭利で己も傷を負うから
決して晒してまわらぬように
あるいは飛び出た杭であり
抜くか打つかの両極なので
均すにはやはり無傷ではおれない
清浄であればあるほどに
棲めなくなってゆく水のなか
深く沈んで溺れる世界の孤独よ
血を滲ませようが知ったこっちゃなく
肝心な言葉も聞く耳を持たぬ
きれいにきれいに撲殺された
20210206
第106回 詩コン『打』