詩『へっぽこ』
稼働し続けているいのちが
なにかをぼろぼろ振り撒いたのを
道端で落としてきたのを感じていたけど
結局なんだったのかが判らないまま
増える隙間に戦戦恐恐
いのちを搭載しているぼくらの
個個の性能には限りがあって
それらはたいがい個性と呼ばれ
稀にチートスキルやオプションがつく
仕様を変更してみたい
若葉の季節を迎えた緑は
降り注ぐ愛できらきらしている
あまりに模範的なケース
光合成の叶わぬヒト科のぼくは
今日も空虚のゆくえに暮れる
もはや破片でしかないために
集団心理に当てられる
魚の目にはなれないだろう
それでもたゆまず働くいのちの
非破壊検査をしてみたい
パンくずで判る足跡もある
ぼくも一助になれるだろうか
生きるとはそういうものかもしれない
だれもがプロトタイプなんだよと
少しだけ自分をほめてみた
20210331
ココア共和国5月号 佳作III