詩『昧』
まったくの蛇足である
しかしなくてはならないのである
ショートケーキの小ぶりのイチゴ
フルーツサンドのキウイフルーツ
正直すっぱくないですか
見栄と嘘は星のあかりだ
過去を塗り込めた遺影の投射で
今の姿が判らない
入れ知恵をしたのは誰なのか
無邪気な子供でいたかったのにと
勘違いをする大人でいたかった
独立している生命体で
溶けあうこともできないままに
侵食しようと躍起になっている
無意識にマウンティングをしながら
得意顔で自分を罵り傷つけて
強くなれると思い込んでいる
形のよいイチゴだけが選ばれて
クリームに乗っかれるという仕組み
造形というのはそれほどだいじ
蛇足でもなくてはならないものもある
アイデンティティはかわたれどきに
居場所はどこと口を尖らせる
20210131
第105回 詩コン『昧』