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詩『麦』

菫青石に向けて黄金がうねる
黎明か夕闇かの薄暗い空の下
炎のように揺らめく穂先を
鴉たちはどう見るのだろう

カンバスに縫い留められた景色は
1メートルほどの世界で今も
音をなくしたままうごめいている
千切れた雲を引き連れて

ゆったり息を吸い込みはきだす
乾いた麦草の香りをまとう
何度も踏まれて育った芽は
強く根を張りよく育つのだという

静かに波頭を立てる心は
ぼくの筆致では表現できない
けれども実る麦のように
いつでも上を向いていたい

広大な畑のなかのただ一本でも
一粒でも
暗い道の続く世界でも
鴉に啄ばまれたとしても
後悔しないよう生きたい

麦のように健やかにいられたら
力強く清しくいられたら
太陽の許に抜け出せるような
愛されるような気がするんだ


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