詩『帰り道』
行きはよいよい帰りは怖い
意味も判らずに聴いていたころから何年も経ち
あとの祭りという言葉に潰されそうになる今日
陽の傾いてきた空になんとなく虹を探している
どうすればよかったのかなんて
気づいたところでなにも変わりやしないのだから
後悔しても仕方ないのにふと蘇ってくる思い出に
打ちのめされて哀しむ日々はもう終わりにしたい
天色は琥珀から天壇青に変わる
時間の流れていくごとに毎日着実に入れ替わる
そんなふうにルーティンをこなすことの大事さは
歳を重ねるごとに身をもって理解してゆきます
七夕の飾りが揺れていた日
風がさらさらと通りすぎては心地よい涼をくれた
これまで自分の願ってきたことはなんだったろう
ただのひとつも思い出せずにひどく寂しくなった
遠まわりをして花を買おう
縊られてなお健やかに咲いていてくれる花たちの
生き様を見届けて自分の糧にするとかではなくて
嘘のないうつくしさに毎日触れていたいからです
人生の折り返しに立っても
人というものを未だに理解できずに生きていて
折り合いをつけられないままでいる不器用さは
たぶん治らないのだと思いながらすこし笑った
20210812
深夜の二時間作詩 第121回「帰り道」