暑い夏、うまトマの夏
摂氏35℃
焼きつけるような日差しが降り注ぐなか、自転車を走らせる。
こんなにも心が踊るのはいつぶりだろうか。
ペダルを必要以上に漕ぐ。
空気を入れたタイヤは反応が良く、地面の感触をそのまま体に伝える。
時より吹く心地良い風が汗をかいていることを教えてくれた。
「まだか...早く...」
焦る気持ちを落ち着かせ、目的である「松屋」に到着する。
天気のせいか、お店があるそこだけまるでオアシスのよう見えた。
涼しい店内、券売機が立ちはだかる。
そしてそこにあったのは、、
【うまトマ】
「あった...! これが噂の」
すかさず「うまトマ定食 大盛り」を注文。
風の噂で耳にしたことはあるが、その実態は未だ知らない【うまトマ】
実に食べてみたかった。皆が美味い美味いと唸るその味はいかほどなのかと。
番号が呼ばれる。
「うまトマ定食で〜す」
そう女性の店員が言うと目の前には"それ"らしきものがあるではないか。
「これが、うまトマ...」
席に戻るなり、後は食べるのみ。
いざ、、実食!!!
「...!!!!!」
なんだこれは。
ハンバーグの肉肉しさとトマトの酸味が口いっぱいに広がる。そして、にんにくのような何とも言えないコク(旨味?)が追うようにして襲ってくる。
「美味すぎる...これがうまトマ...」
半分まで食べたところであることに気付く。
おや?半熟玉子があるではないか。
まさか、、それは流石に違法だろ...
箸で割り、ハンバーグに絡める。
そしてまた口へと運ぶ。
少し味が濃くパンチのあるトマトハンバーグがたまごが絡まることでマイルドになる。
優しい口当たりの向こう側から【うまトマ】が押し寄せてくる。
口の中は「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の如く幸せで大荒れである。
気付いたら残りひと口、あっという間だった。
海外では本当に美味しいと「皿まで舐めるほど」なんて表現をしたりするが、それで言うならうまトマの皿に穴を開けるほどドリルのように舐めまわしたい。天元突破。
「ふぅ...美味かった...」
大満足である。
何故、私は今までこんなに美味いもの食べてこなかったのか。知らずにのうのうと生きてこれたのか。自分の情けなさに呆れがくる。
そして店を出ればまた灼熱地獄。
自転車に跨り、颯爽と走らせる。
また新たに人生の楽しみを見つけてしまった。
24歳、夏男。私の夏はまだまだこれからだ。