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血液内科最前線:最新医学により血液がん、白血病が治癒可能に!参加レポート
JABIサロン第51回の講演者に高松先生をお呼びし、血液内科の最前線についてお話しいただきました!
私は癌というものに対して"不治の病"というイメージを漠然と抱いておりましたが、今回のお話でそれが違うという事がはっきりと分かりました。
本レポートでは、素人である私が講演で得た学びを簡潔にまとめました。
イベント概要
開催日:8月11日
開催場所:Nittera Group Ventures Lab(ハイブリッド)
講演者:高松 博幸 先生
講演者プロフィール
高松 博幸 先生
金沢大学融合研究域融合科学系教授
・1988年、京都大学工学部化学工学科卒業。1990年、京都大学工学研究科化学工学専攻修士課程修了。
・1990年-1994年、総合化学メーカーで新規モノクローナル抗体薬、遺伝子組換え薬の開発研究に従事。
・2000年、金沢大学医学部医学科卒業。その後市中病院で内科臨床医として勤務。
・2007年 金沢大学大学院医学系研究科内科学専攻修了(医学博士)。
・2017年 金沢大学大学院医学系血液・呼吸器内科講師。
・2022年 金沢大学融合研究域融合科学系教授。
・2023年 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校臨床検査医学部門客員教授併任。
内容
1.血液癌の概説
概説:
血液がんは発見時点で全身に広がっていることが多い。
外科的治療は少なく、主に血液内科での治療が行われる。
全身に広がっているが、抗がん剤治療で治る可能性が高い。
進行した固形ガン(例: 肺がんや肝臓がん)では延命が目標であるのに対し、血液がんでは治癒が目標。
若い人にも発症するが、治癒の可能性は他の多くの悪性腫瘍よりも高い。
疫学:
社会の高齢化に伴い、血液がんの発症が増加。
特にリンパ系の腫瘍、例えばリンパ腫や多発性骨髄腫の発症が増えている。
治療の現状と展望:
新しい効果的な薬が次々と登場しており、劇的な効果を持つものもある。
抗がん剤に関連する副作用(脱毛や吐き気)は新しい薬では少ない。
ワクチンで作られる抗体と同様の成分である抗体薬は体内にもともと存在する物質であるため、副作用が非常に少なく、治療効果も高い。
がんと闘うという心構えが大事!
2.ライフサイエンスの貢献
1. モノクローナル抗体療法の登場 :
1975年に初めて作られたモノクローナル抗体は、血液癌治療における画期的な進歩となった。モノクローナル抗体は、特定のがん細胞に対して効果的に作用するため、がん細胞を攻撃し、正常な細胞には影響を及ぼさないという特徴がある。これにより、副作用の軽減と治療効果の向上が期待されている。
2. 造血幹細胞移植の進化 :
骨髄移植は、血液癌の一部の患者に対する有効な治療法ですが、適切なドナーが限られるという課題があった。しかし、最近ではHLA(ヒト白血球抗原)を完全に合わせなくても移植が可能となり、親子間での移植も選択肢として広がっています。
3.究極の抗体療法 CAR-T
モノクローナル抗体にシグナル伝達物質を繋げたもの。シグナル伝達によりCAR -T 細胞からがんをやっつけるような物質が出る。固形がんや血液腫瘍に対する高い有効性が確認されている。患者の方のT細胞を取り出してCAR遺伝子を導入し、CAR -T細胞となり、それが培養・増殖されて治療に活用される。
4.MRD(微小残存病変)の検出手法
血液がん治療にはMRDを正確に測定することが非常に重要である。(MRD量が十分少ないと自己免疫で治癒することが可能。)現在はフローサイトメトリーと次世代シーケンサーという検出手法が主流であるが、どちらも骨髄採取が必要となる。現在タンパク質の質量分析により末梢血中のMRDを測定する手法が研究されており、この手法では骨髄採取の必要がなくなる。
3.日本の現状とスタートアップ企業への期待
日本の遅れと危機感
日本は遺伝子治療の分野で遅れており、他国に比べて臨床試験数が少ない。
抗体薬の開発遅れ
日本は抗体薬の分野でも遅れており、特にADC(抗体薬物複合体)、2重特異性抗体、低分子抗体のいずれにおいても開発が進んでいない。
ヨーロッパと米国が主要な開発地域であり、中国も進行中。
インド系ビジネスの台頭
インド系経営者や研究者がハイテク企業を率いており、競争が激しい。
インド人の学生は優秀で、アグレッシブな姿勢で成功を目指す。その傾向はライフサイエンス業界でも顕著に見られる。
イノベーションとビジネスの課題
イノベーションの推進者を育成することが重要。
日本の専門性重視の教育システムや縦割りのアカデミアが課題とされる。
留学と多様な分野の連携
若い学生に国外留学を奨励し、多様な分野の交流を促進することが必要。
異なる分野の交流がイノベーションを促進する。
企業メンターの役割
ビジネス界でのメンターの存在が重要。
シリコンバレー等での成功例が示され、日本の若い学生がイノベーションを起こすことが期待される。
感想
今回の講義の中で私の記憶に強く残っている一つのエピソードとして、日本で全く見向きもされなかった技術が海外で巨額投資を受けたというようなものがありました。"新技術の可能性を見抜ける人"を育てる事が、日本が医療技術において他国に追いつき、追い越すためには必要不可欠と感じました。
最後に
私もインターンとして参加しているJABI-SVはシリコンバレーに拠点を持つNPOで日本とアメリカのビジネス振興、国際人材の育成を目的に活動しています。各界の著名人の講演や最先端技術の紹介など積極的に行っています。
詳しくはウェブサイト( https://sites.google.com/view/jabi-sv/home )をご確認ください。