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お箏を弾く人のための「初めての楽典」

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お箏を弾く人が初めて「楽典」という音楽の基礎を学ぶ時の入門書です.西洋音楽の「楽典」に拠らずに、「平調子」や「雲井調子」といった五音音階の仕組みから始まります.
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2022年4月の記事一覧

§6 陰旋法の5音を歌う         お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第6回 陰旋法の5音を歌う 今回はいよいよ陰旋法のすべての音、陰旋法の5つの音を歌います。 その前に少し寄り道をします。 お箏を長く弾いてきた方は「宮商角徴羽」という言葉に出会ったことがあるかもしれません。「宮=きゅう」「商=しょう」「角=かく」「徴=ち」「羽=う」、続けて読むと「きゅうしょうかくちう」となります。この言葉は日本音楽の5音を説明するときの「階名」として働きます。「階名」ですから「宮」の音はピアノの鍵盤に割り当てられた「音名」のように固定された音の高さでは

§5 陰旋法の練習            お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第5回 陰旋法の練習 前回の「ミ・ファ・ラ・ファ・ミ」は平調子の「五 六 七 六 五」の音でした。普段のお稽古では「五」の音の高さは「壱越=D」に調絃することが多いかもしれません。しかし、唯是震一先生の「神仙調舞曲」は曲名の通り「五」を「神仙=C」に合わせて平調子を作りますから「五」の音の高さに関わらず平調子が調絃できることはお分かりですね。尺八と合奏する際には「六段」の調絃をさらに低い音にすることもご存じでしょう。一般的には低調子と言いますが「五」を「双調=G」に合わせた

§4 ふたつの日本音階          お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第1回では「ド・ミ・ソ・ミ・ド」の音を半音ずつ高く(移調)しながら歌う練習をしました。 「ド・ミ・ソ・ミ・ド」のことを少しだけ詳しく説明します。これは西洋音階のひとつである「長音階」で「主和音」を作る三つの音です。 「長音階」のことはもしかすると学校の音楽の授業で「長調の音階」と教わったかもしれません。 紀元前5世紀頃にギリシャの数学者ピタゴラスが計算によって導き出した「ピタゴラス音律」からおよそ1000年の時間を経て、西洋の音楽は「長音階」と「短音階」というふたつの「

§3 音名と階名の罠           お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

今回はまず3種類のメロディを聞いてください。 おなじみの「さくらさくら」です。 1番目の「さくら」の楽譜を見てみましょう。 この五線譜の音を読んでみましょう。 「ラ・ラ・シ__ ラ・ラ・シ__ ラ・シ・ド・シ・ラ・シラファ__ 」 これならひとつめの動画に合わせて音の名前で歌えますね。 2番目はどうでしょう。 「ソ・ソ・ラ__ ソ・ソ・ラ__ ソ・ラ・シのフラット・ラ・ソ・ラソミのフラット__ 」 これは動画に合わせて歌うのは難しい。しかし、ここでちょっと考え